シューベルト 交響曲第8番『ザ・グレート』

フランツ・シューベルト (Franz Schubert,1797-1828)作曲の交響曲第8番『ザ・グレイト』ハ長調 D944 (Symphony No.8 “The Great” C-Dur D944)について、解説おすすめの名盤レビューをしていきます。最後に楽譜・スコアも挙げてあります。

冒頭が一番有名なメロディですね。レビューを読んでほしくてこのページを作っている訳ですが、最初に「天国的な長さ」の名演を貼ってしまいます。

朝比奈隆=大阪フィル

解説

シューベルト交響曲第8番『ザ・グレイト』ハ長調 D944について解説します。

シューベルトの死後に発見

シューベルトは1828年11月19日にウィーンで亡くなりました。楽譜などは兄のフェルディナントが保管していました。1838年にシューマンがウィーンに滞在していました。ベートーヴェンとシューベルトの墓参りの後、フェルディナントを訪れて、この交響曲を発見したのでした。

作曲時期は交響曲第7番『未完成』よりも後で、1825年~1826年に作曲され、完成直後に1826年と1828年にウィーン楽友協会にスコアを送っていますが、いずれも演奏困難という理由で初演されませんでした。そしてそのまま忘れ去られてしまったようです。

結局、何番なの?

未完成交響曲もそうですが、シューベルトの交響曲は番号がこれまで何度か変わってきました。その影響を一番受けたのが、最後の交響曲である『ザ・グレイト』です。一時は交響曲第9番『ザ・グレイト』でした。店頭に並んでいるCDも番号が異なります。

20世紀初頭までは、完成した交響曲に番号を振る、ということで、第7番『ザ・グレイト』でした。しかし、未完の交響曲でも2曲は良く演奏されたため、それを含めて第9番『ザ・グレイト』と呼ばれるようになりました。その後、シューベルトの作品に振られている「ドイチュ番号」が1978年に改訂され、自筆譜のままで演奏できる作品に番号をつけることとし、第8番『ザ・グレイト』になりました。「国際シューベルト協会」がこれに従ったため、第8番『ザ・グレイト』が正式なようです。

最後に改訂されたのが1978年なので、録音がそれよりも前のCDはそのまま第9番『ザ・グレイト』としているようです。手元のベームのCDも第9番になっています。

初演

シューマンはライプツィヒのメンデルスゾーンに楽譜を送り、演奏を依頼しました。そしてシューベルト死後11年を経て、1839年3月21日にメンデルスゾーン指揮のゲヴァントハウス管弦楽団の演奏で初演されました。次にウィーンで初演しようとしましたが、当時アマチュア音楽家の集まりであったウィーン楽友協会は演奏不可能と判断し、演奏を見送ります。パリとロンドンでも「あまりにも長く難しい」と演奏を拒否されています。

この曲の長さは、ベートーヴェンの交響曲第9番『合唱付き』よりは短いですが、当時の交響曲としては相当長いものです。ロマン派後期になれば、ブルックナーも出てきますが、シューベルトと同じオーストリアの作曲家ブルックナーはこの『ザ・グレート』のような長い交響曲を作曲し、ウィーン楽友協会から毎回のように演奏を拒否されています。

曲の構成

シューベルト交響曲第8番『ザ・グレイト』は4楽章構成です。演奏時間を見てみると4つの楽章は大体15分ずつという感じです。ただスケルツォは少し冗長さを感じなくも無いです。

交響曲第8番『ザ・グレイト』

■第1楽章:アンダンテ
序奏付きのソナタ形式です。
序奏に有名なメロディが出てきます。そのモチーフが重要な役割を果たします。

■第2楽章:アンダンテ・コン・モート
緩徐楽章で展開部なしのソナタ形式です。シューマンのいう「天国的な長さ」というに最も相応しい楽章です。とはいえ、実際は15分程度です。実際は、そこまで長いとは言えないのですけれど。

■第3楽章:スケルツォ
スケルツォです。繰り返しが多いようで、結構長いと感じます。

■第4楽章:アレグロ・ヴィヴァーチェ
躍動感のあるフィナーレです。この楽章はソナタ形式で15分ですが、シューベルトらしい才気あふれたモチーフによって高揚感のあるフィナーレとなっています。

おすすめの名盤レビュー

それでは、シューベルト作曲交響曲第8番『ザ・グレイト』ハ長調 D944名盤をレビューしていきましょう。

カール・ベーム=ウィーン・フィル (1975年来日ライヴ)

ベームらしいスケールの大きさとライヴの熱気

ベーム=ウィーンフィルの組み合わせは、本当にシューベルトの交響曲に相応しいです。ベームの土台のしっかりした厳しさのある音作りといい、ウィーン・フィルの素朴な管楽器の響きといい、オーストリア風でシューベルトに最適です。しかし、ベームは正規盤をベルリン・フィルと録音していて、これも名演ですが、ウィーン・フィルとは来日ライヴの演奏を残しています。でも、1975年とベームの音楽的な円熟が最高の時期によく来日して、凄い演奏を残してくれたものだと思います。

第1楽章序奏のホルンやオーボエからスケールが大きく素朴であり、まるでオーストリアの自然のようです。第1楽章からテンポがとても遅く「天国的な長さ」を感じます。まるでブルックナーを聴いているかのようで、時間が経つのを忘れてしまいます。第2楽章は意外に速めのテンポです。しかし、ソロの美しさ、素朴さに「天国的」なものが感じられます。ベームの厳しい音楽づくりも良い方向に作用していて、清浄な音楽になっています。円熟による深みもあり、味わいながら聴いているうちに時間が経つのを忘れるような演奏です。後半は迫力が出て壮麗さも加わります。

第3楽章は素朴さとオーストリア的な味わいのある良い演奏なのですが、曲が冗長な所が元々あるせいか、長く感じる部分があります。スケルツォも天国的な長さに感じます。第4楽章熱気のある演奏で、ライヴであることも手伝って、非常にダイナミックに盛り上がります。

ちなみにカップリングの『ニュルンベルクのマイスタージンガー』前奏曲は凄い熱気の名演です。マイスタージンガー狙いで買っても良い位です。

バレンボイム=ベルリン・フィル

ワーグナーのような長大さとドラマティックさ
  • 名盤
  • 定番
  • ロマンティック
  • 壮麗

おすすめ度:

指揮ダニエル・バレンボイム
演奏ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

1984年 (ステレオ/デジタル/セッション)

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バレンボイムとベルリンフィルの演奏です。バレンボイムはワーグナーが得意で、今ではオペラ指揮者として活躍しています。交響曲などの録音はスケールが大きく、他とは違う演奏が聴けるので、面白い指揮者だと思います。この『グレート』も遅めのテンポでスケールがとても大きい演奏です。まるでワーグナーのようなドラマティックさが感じられます。ブルックナーというより、やはりワーグナー的です。

第1楽章は遅いテンポのホルンの主題から始まり、最初から相当スケールが大きな演奏なのだろうと直感できます。しかし、バレンボイムの凄い所は、この曲のドラマティックな部分を引き出し、オペラのようにストーリーをもって聴かせてしまうことです。遅いテンポには数分で慣れ、適切なテンポに感じられてきます。テンポの変化も比較的大きく、天国的な長さ、と形容される演奏とは一線を画しています。終盤の金管の咆哮もダイナミックでさすがベルリン・フィルです。第2楽章はそれほど遅くはないですね。一般的なテンポ取りです。テンポの変化を上手くつけ、リズムが必要な部分はリズミカルです。弦セクションも厚みがあっていい味を出しています。後半の清涼感も良いです。うまく変奏にマッチしたアゴーギクをつけ、味わい深く聴かせてくれます

第3楽章は少し遅めでリズミカルです。遅いテンポでスケールが大きいですが、結構、躍動感もあり、上手い表現だと思います。弦のトゥッティは雄大です。第4楽章凄く速いテンポでスリリングに始まります。ベルリン・フィルの弦の厚みと上手さには舌を巻きます。金管は壮大で、ブルックナーやワーグナーのようなダイナミックさがあります。最後の盛り上がりも凄い迫力で盛り上がり、ドラマティックに締めくくります。

シューベルトがこんな演奏を想定していたとは思えないですが、それ程、不自然な演奏ではなく、こういう劇的で壮大な演奏も可能な曲なのだ、と気づかせてくれます。

カラヤン=ベルリン・フィル (1978年)

ベルリンフィルの機能性を活かしたスケールの大きな名演
  • 名盤
  • 定番
  • 壮麗
  • ダイナミック

超おすすめ:

指揮ヘルベルト・フォン・カラヤン
演奏ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

1978年

カラヤン=ベルリン・フィルの最盛期の演奏です。さすがにスケールが大きく、ベルリンフィルの機能性を最大限に活かして全体的にクオリティの非常に高い演奏です。また、カラヤンらしい力強さが前面に出ていて、それも聴き所です。

第1楽章の冒頭からスケールが大きく、盛り上がりの頂点では金管が思い切り咆哮して非常にダイナミックです。シャープさが必要な個所では弦セクションがキレの良い響きを出していて凄いです。『未完成』と違い美しく磨き抜く、という路線では無いので、大分雰囲気が違います。第2楽章テンポも速めでメリハリもかなりあり、天国的な緩徐楽章という感じでは無いですが、スコアに忠実な範囲で表現していると思います。後半は木管の絡みなど、美しさを前面に出した表現が増えてきます。第3楽章は速めのテンポでスリリングです。レントラー風な所はカラヤンも得意ですね。対位法的な絡みも面白いです。そして第4楽章冒頭からカラヤンの独壇場です。弦の複雑で大胆な動きを活かした華麗で爽快な演奏です。長い楽章ですが、ロマン派後期の作品を聴いているかのようで、何の不自然さも無く楽しめます。

カラヤンはベルリンフィルの機能性を活かして、シューベルトの大作を完璧に演奏しきっていますが、それだけではなく、やはり同じオーストリア人としての感性の近さを感じます。かなり大胆さのある演奏ですが、シューベルトの『ザ・グレイト』を超えてしまうことはありません。もっとも、ベートーヴェンの直後に作曲した交響曲なので古楽器オケとモダンオケの中間に位置することになります。正直言ってシューベルトの頭の中でどんな音が響いていたのか全く想像つかないですが、古楽器オケで演奏するような交響曲よりもブルックナーに近いような交響曲なんじゃないか、と思います。そうでなければ、こんなダイナミックな演奏には耐えられません。

セル=クリーヴランド管弦楽団 (1970年)

先入観を持たず曲そのものを活かした演奏
  • 名盤
  • 定番
  • 端正
  • しなやか
  • ダイナミック

おすすめ度:

指揮ジョージ・セル
演奏クリーヴランド管弦楽団

1970年7月

ジョージ=セルはハンガリー出身で、クリーヴランド管弦楽団はアメリカのオケです。シューベルトに関して、特に先入観や特別な思い入れを持っている訳ではないと思います。

第1楽章は遅いテンポでじっくり演奏しています。カラヤンとはまた違ったスコアを深く読みこんだ演奏で、各パートが意味をもって響いてきます。それと同時にロマン派的な感情も入っていて、冒頭は遅いテンポですが、テンポは頻繁に変わっていきます。必ずしもスケールの大きさや「天国的な長さ」などの先入観を持っていない演奏です。

第2楽章も特別天国的なものを感じることはなく、オーストリアの自然美を感じるような演奏です。対旋律を大きめに演奏したりと、良くスコアを読みこんでいることが聴き取れます。メリハリがとても良くついていて、シャープさがあります。中間付近では感情的な盛り上がりもあります。第3楽章は溌剌としていて、テンポも速いです。レントラーというよりもっと激しい舞曲に聴こえます。ただスケルツォで良く感じる冗長さはそれほど感じません。第4楽章は凄い速さです。クリーヴランド管弦楽団の機能性の凄さを思い知らされるスリリングな演奏です。

結果として、演奏時間のバランスが良いのもセルの特徴ですね。

ヴァイル=ザ・クラシカル・バンド

凄く速いテンポで躍動的に盛り上がる
  • 名盤
  • 定番
  • ロマンティック
  • 壮麗

おすすめ度:

指揮ブルーノ・ヴァイル
演奏ザ・クラシカル・バンド

(ステレオ/デジタル/セッション)

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ヴァイルとザ・クラシカル・バンドの演奏です。ヴァイルはよくターフェルムジーク・バロック・オーケストラとよく共演していて、かなりテンポの速いベートーヴェンなどを録音しています。『グレート』は19世紀後半になって初演された訳で、作曲した時に考えていたテンポとは大分違うだろうことは容易に想像つきます。では、シューベルトの時代のように速めのテンポで演奏するとどうなるのか、というのがこの演奏を聴けばよく分かります。意外と自然でスッキリしています。細かい刻みでかなり盛り上がるので、十分グレートで、これも『グレート』の本質を突いた演奏だと思います。

第1楽章は最初のテーマから速いテンポで軽妙に演奏されていきます。シューベルトの交響曲第6番までなら今でもこんな演奏になると思います。そして細かい刻みの個所では、熱してきて白熱して盛り上がります。ベートーヴェンの交響曲を思い出します。まあ、若干速すぎですけど、とても上手く行っていると思います。第2楽章も速めで軽快です。このテンポだとオーストリア風の舞曲が良く聴こえてきて、なるほど、と思います。壮大さはありませんが、ナチュラルなテンポとリズム感です。

第3楽章は今の演奏とあまり変わらないですね。速いテンポなのでとてもスリリングです。これもオーストリア風の舞曲ですね。ティンパニがリズミカルに叩くあたりは気分爽快です。躍動感も素晴らしいです。第4楽章は爆速ですね。ダイナミックで密度が濃く、リズムの躍動感が凄いです。他の演奏と違い過ぎるかも知れませんが、これはこれでとても楽しく聴くことが出来ます。

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楽譜・スコア

シューベルト作曲の交響曲第8番『ザ・グレイト』ハ長調 D944の楽譜・スコアを挙げていきます。

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