オットリーノ・レスピーギ (Ottorino Respighi,1879-1936)作曲の交響的印象『教会のステンドグラス』(Church Windows)について、解説とおすすめの名盤レビューをしていきます。最後に楽譜・スコアも挙げてあります。
このレスピーギの曲は、1990年頃に吹奏楽で流行り始めました。同時期にオーケストレーションに優れた『シバの女王ベルキス』も急に流行り始め、今や完全に定着した感があります。
『教会のステンドグラス』は、レスピーギの曲の中でも質の高い曲です。単にオーケストレーションが優れているだけではなく、聴きごたえがあります。最後のパイプオルガンも印象的です。
解説
レスピーギの交響的印象『教会のステンドグラス』について解説します。
作曲の経緯
1925年にレスピーギが作曲した管弦楽曲です。1927年にボストンにて初演されました。
ピアノ曲である「グレゴリオ聖歌による3つの前奏曲」をオーケストレーションし、終曲を新たに作曲して、4楽章構成としました。
表題を後付け
曲が完成した後、まだ曲名が付けられていませんでした。文学者クラウディオ・グアスタッラの提案で各楽章に表題が付けられました。ということは、表題は曲の内容を説明している訳ではなく、聴いた印象で決められた、という珍しいケースです。
第1楽章:エジプトへの逃避
第2楽章:大天使ミカエル
第3楽章:聖クララの朝の祈り
第4楽章:偉大なる聖グレゴリウス
おすすめの名盤レビュー
それでは、レスピーギ作曲交響的印象『教会のステンドグラス』の名盤をレビューしていきましょう。
サイモン=フィルハーモニア管弦楽団
このCDが『教会のステンドグラス』と『シバの女王ベルキス』を有名にし、しばらくの間は他に選択肢が無かった、というものです。しかし、サイモン=フィルハーモニア管弦楽団の演奏は、録音も良く、演奏のクオリティも高かったため、これだけでも十分で、吹奏楽界では大きく広まりました。
『教会のステンドグラス』は透明感のある響きの中で、実にダイナミックな演奏を繰り広げています。演奏のクオリティも高く、弦も管もバランスが取れています。ただ、少し鳴らし過ぎのような気はしますね。静かな個所で味わい深い所もあるので、そこもしっかり聴けると良いと思いました。特に終曲の最後のほうは、ダイナミックですが、弦が弱い気もします。
ヘスス・ロペス=コボスはレスピーギを得意としています。『リュートのための古代舞曲とアリア』もとても良い演奏でした。ただダイナミックなオーケストレーションだけに終わらない味わい深い所を上手く演奏しています。
シンシナティ交響楽団の演奏と録音の音質では、サイモン=フィルハーモニア管に軍配が上がると思いますが、レヴェルが高い争いです。オーケストレーションではサイモン盤、曲の味わい深さやツボを見つけたいならロペス=コボス盤が良いですね。
カップリングの『ブラジルの印象』も曲の良い所を上手く引き出した名演で、充実した演奏です。こんなに面白い曲だったことを初めて知りました。
アシュケナージ=オランダ放送フィル
アシュケナージの指揮はしっかりしたものです。録音も高音質です。ただ、オランダ放送フィルはそこまでヴィルトゥーゾ系のオケでは無いので、頑張っていますがオーケストラが着いてきていない所が見受けられます。まあ、フィルハーモニア管もそこまでヴィルトゥーゾ系のオケとはいえないかも知れませんけど。
アシュケナージの指揮は、サイモンとは随分違っていて、曲を上手く整理して聴かせてくれます。参考演奏にはとても良いと思います。
ファレッタはアメリカ人の女流指揮者です。バッファロー・フィルは最近急成長してきたオーケストラです。悪い演奏では無いし、まとめ方も良いと思いますが、サイモン盤ほどのダイナミックさはなく、ロペス=コボス盤ほどの味わいもなく、平均的な演奏かなと思います。録音が良いので各パートの音がしっかり聴こえます。サイモン盤で教会の残響が響き過ぎなので、その点ファレッタ盤はいいですね。
オーマンディ=フィラデルフィア管弦楽団
オーマンディ=フィラデルフィア管弦楽団はレスピーギを得意としていました。特にローマの三部作は何度も録音しています。『教会のステンドグラス』は、この録音のみですが、さすがはオーマンディで、曲のまとめ方が極めてしっかりしています。参考になるのはもちろんですし、『教会のステンドグラス』の面白さを十二分に味合わせてくれる名盤です。
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楽譜・スコア
レスピーギ作曲の交響的印象『教会のステンドグラス』の楽譜・スコアを挙げていきます。
スコア
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