レスピーギ シバの女王ベルキス

オットリーノ・レスピーギ (Ottorino Respighi,1879-1936)作曲のバレエ音楽『シバの女王ベルキス (Belkis, Regina di Saba)』について、解説おすすめの名盤レビューをしていきます。

解説

レスピーギシバの女王ベルキスについて解説します。

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オットリーノ・レスピーギ1930年~1931年バレエ音楽『シバの女王ベルキス』を作曲しました。バレエ音楽は約80分と当時のバレエ音楽として規模の大きなものです。また楽器編成も非常に大きなものでした。

バレエの初演は1932年1月23日にミラノ・スカラ座にて行われました。この曲はレスピーギ最後のバレエ音楽となりました。

エドワード・ジョン・ポインター作「シバ女王のソロモン王訪問」

組曲版の作成

1934年に4部から構成される組曲を作成しました。演奏時間は約23分と管弦楽曲としてローマの三部作などと近い演奏時間となりました。しかし、編成はかなり大きく、その後、コンサートでも取り上げる機会は少なく、録音もありませんでした。

バティストーニと読売日本交響楽団,第4曲「狂宴の踊り」

吹奏楽でのブーム

1984年-1985年頃シャンドス・レーベルからサイモン=フィルハーモニア管弦楽団の録音がリリースされます。当時、シャンドス・レーベルは選曲と音質の良さで注目されていました。『教会のステンドグラス』と共に『シバの女王ベルキス』の存在が世に知れ渡ります。

これらの曲は多くの打楽器等を使用する曲で、オーケストラでは演奏するのが大変です。アマチュア・オーケストラでこの曲を演奏する場合、多くの特殊楽器を準備したり、エキストラを呼んだりする必要があります。

一方、当時日本の中学・高校の吹奏楽界では定期演奏会なども行われるようになり、ローマの三部作など、多彩な曲が吹奏楽に編曲され取り上げられました。組曲『シバの女王ベルキス』ダイナミックで色彩的なまさに吹奏楽に相応しい音楽で、吹奏楽に編曲されて、コンクールや演奏会などで取り上げられ、人気を博しました。現在、吹奏楽では良く取り上げられるレパートリーとして定着しました。

一方、オーケストラ版は吹奏楽でのブームと関係なく、あまり上演されていません。しかし、吹奏楽での人気から原曲としてのオーストラ版がいくつか録音されています。

また、ベルリン・フィルの野外コンサートであるヴァルトビューネ2011ではバレエ組曲『シバの女王ベルキス』~戦いの踊りがトリとして演奏され、DVDもリリースされています。

編成

ピッコロ、フルート×2、オーボエ×2、コーラングレ、ピッコロ・クラリネット(D調およびE♭調)×2、クラリネット(B♭調)、バスクラリネット(A調およびB♭調)、ファゴット×2、コントラファゴット
ホルン×4、トランペット×4、トロンボーン×4

ティンパニ、ダラブッカ、タンバリン、スネア、トライアングル、シンバル、銅鑼、バスドラム、シロフォン、グロッケンシュピール、チェレスタ
ハープ×2、ピアノ

弦五部

■オフステージ
テノール、またはトランペット
■バンダ
トランペット×2、Tamburi di guerra(戦太鼓、小型および大型)

おすすめの名盤レビュー

それでは、レスピーギ作曲シバの女王ベルキス名盤をレビューしていきましょう。

クルデーレ=ロンドン・フィル

ロンドン・フィルの実力の高さが良く分かるクオリティの高い名演!
  • 名盤
  • 定番
  • エキゾチック
  • クオリティ
  • ダイナミック
  • 高音質

超おすすめ:

指揮アレッサンドロ・クルデーレ
演奏ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団

2021年10月3-5日,ロンドン,ヘンリー・ウッド・ホール (ステレオ/デジタル/セッション)

若きイタリア人指揮者アレッサンドロ・クルデーレとロンドン・フィルの録音です。というか、クルデーレという指揮者は初めて聞いたのですが、ロンドン・フィルとレスピーギを録音したのですから、かなりのホープなんだと思います。

第1曲「ソロモンの夢」は落ち着いた語り口で、ロンドン・フィルのハイレヴェルな木管の絡み合いが素晴らしいです。テンポも少し遅めでじっくり味わって聴けます。弦も重厚で味わい深くエキゾチックです。チェロのソロは彫りが深く、急にトゥッティになる個所もいい響きです。第2曲「夜明けのベルキスの踊り」はとてもエキゾチックに始まります。木管の深みのある音色が印象的です。クラやチェロは官能的な美しさまで表現しています。終盤のチェレスタ等も色彩的です。

第3曲「戦いの踊り」は、レスピーギが様々な打楽器を使って雰囲気を作り上げていることが分かります。クラも非常に上手いですね。若いクルデーレはかなり速めのテンポで、オケを捲し立てていきます。ロンドン・フィルは上手く演奏していて迫力があります。第4曲「狂宴の踊り」はダイナミックでロンドン・フィルの厚みのある響きが印象的です。中間の舞台裏からはトランペットのソロです。高音質なこともあり、細かいアンサンブルのクオリティが良く分かります。クレッシェンドしていくとスケールの大きなサウンドでロンドン・フィルのレヴェルの高さが良く分かります。

指揮者のクルデーレはイタリア的な感性を持った軽快な指揮でスリリングです。ただ細部のアンサンブルなど、まだ若さがあって大指揮者になるかどうかは、これから次第ですね。とはいえ、ロンドン・フィルとの相性も良く、このページの中ではトップを争う名演です。

大植英次=ミネソタ管弦楽団

アメリカのミネソタ管の実力を上手く引き出した名演!
  • 名盤
  • 定番
  • クオリティ
  • 色彩感
  • 高音質

超おすすめ:

指揮大植英二
演奏ミネソタ管弦楽団

2001年5月28、29日,ミネアポリス,オーケストラ・ホール (ステレオ/デジタル/セッション)

大植英次とミネソタ管弦楽団の録音です。ミネソタ管弦楽団は急速にレヴェルアップしたオーケストラで、アメリカのメジャーオケに匹敵するバワーとクオリティを持っています。また録音も2001年と新しく音質は向上し、透明感があります。第2曲、第3曲の入れ替えもなく、管弦楽曲としてとてもレヴェルの高い演奏です。

第1曲木管のソロがとても美しく、エキゾチックに収録されています。やはり静かな個所ではこのノイズの少なさは大きなアドヴァンテージです。ミネソタ管のソロもレヴェルが高く、味わい深くじっくりと聴かせてくれます。弦は分厚い響きで出てきます。残響も長すぎず、クオリティの高いアンサンブルを楽しめます。色彩感も良いです。第2曲は木管のソロがとても上手くエキゾチックです。気負いすぎず、味わい深く演奏されています。テンポ設定も上手く、レスピーギのオーケストレーションのエキゾチズムをじっくり味わえます。

第3曲はスケール大きく始まります。クラのソロも上手く、大植英次は上手くオケをグリップして、適切な迫力ある音楽にしています。アタッカ気味に第4曲に突入します。オケの底力を感じるようなスケール感があります。舞台裏はトランペットではなくテノールを使っています。テノールの方がエキゾチズムが感じられて良いですね。その後、段々と盛り上がっていきます。ラストは熱狂的な盛り上がりです。

思い切り鳴らす、ということではサイモン盤の方が凄いですが、大植英次の方がきちんと曲を設計していると思います。

サイモン=フィルハーモニア管弦楽団

記念すべき最初のメジャーな録音、透明感がありスケールが大きい名盤
  • 名盤
  • 定番
  • スリリング
  • ダイナミック

おすすめ度:

指揮ジェフリー・サイモン
演奏フィルハーモニア管弦楽団

1985年 (ステレオ/デジタル/セッション)

サイモンとフィルハーモニア管弦楽団の録音は1985年に行われ、リリースされると吹奏楽で人気を博しました。響きが少し大味な所もありますが、最初の録音がこれだけ高いレヴェルであったことで、この曲の魅力を十二分に伝えてくれました。しばらく、このCD以外は無かったため、選択の余地はありませんでしたが、後続のディスクを聴き比べるとサイモン盤のレヴェルの高さが良く分かります。なお、第2曲と第3曲の順番が入れ替えられています。そうすると緩ー急ー緩ー急となって、バランスが取れますね。

第1曲「ソロモンの夢」は弦のエキゾチックな響きからはじまり、徐々に盛り上がります。フォルテになるときのメリハリが大きいです。第2曲「戦いの踊り」はフィルハーモニア管を思い切り鳴らして野性的な迫力を出しています。テンポも速めでパーカッションも密度高く鳴らしてスリリングです。やや鳴らしすぎな感じもありますが、3分程度の曲を楽しんで聴くことが出来ます。

第3曲「夜明けのベルキスの踊り」は残響豊富な会場にエキゾチックなムード漂うコールアングレのメロディ、背景のチェレスタなどが神秘的な雰囲気を良く出しています。第4曲「狂宴の踊り」はとてもダイナミックで粗野な演奏です。途中のトランペットのバンダも雰囲気が良く出ています。ラストにリズミカルに盛り上がり、パーカッションも金管も全開でパワフルに曲を締めます。

この曲の魅力を知らしめるのに必要な要素は全て入っているのですが、盛り上がる所で少し鳴らしすぎて、大雑把になっている所も多少あるかな、と思います。とはいえ、この曲のバイブルと言える名演奏です。

アシュケナージ=オランダ放送フィル

  • 名盤
  • 高音質

おすすめ度:

指揮ウラディーミル・アシュケナージ
演奏オランダ放送フィルハーモニー管弦楽団

2004年3月30-31日,2005年4月26日,ヒルヴェルサム,MCOスタジオ (ステレオ/デジタル/セッション)

日本でNHK交響楽団の指揮者としても活躍したアシュケナージとオランダの中堅オランダ放送フィルの録音です。録音は、日本のEXTONが行っていて高音質ですが、残響が少ないです。この演奏も第2曲、第3曲は通常の曲順となっています。

演奏は弱音の個所はエキゾチックさが足りない感じで、これは録音の残響の少なさも影響しているかも知れません。個々の楽器の音はしっかりしているのですが、アンサンブルになると色彩感があまり出てきません。ダイナミックな個所も小気味良く盛り上がる感じで、レスピーギの壮大なオーケストレーションがいまいち再現しきれていない気がします。もともとオランダ放送フィルはパワーのあるオケではないような気もします。フランス物でエキゾチックな表現は上手いオケだったと思いますけれど。

という訳で、今一つオケの調子が出ていないようです。『教会のステンドグラス』はもっと良い演奏で、普通に演奏するとこうなる、というのが分かります。

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演奏の映像(DVD,Blu-Ray,他)

オーケストラ版での映像は、ワルトビューネ2011でのシャイーとベルリン・フィルの演奏で、戦いの踊りが演奏されています。

シャイー=ベルリン・フィル

  • 名盤
  • 定番

指揮リッカルド・シャイー
演奏ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

(ステレオ/デジタル/セッション)

ローマの三部作などは全曲演奏しているので、『シバの女王ベルキス』も組曲全て演奏して欲しかったですね。しかし、ここで演奏しているのはベルリン・フィルです。フィルハーモニア管やミネソタ管も素晴らしい技術を持っていますが、ベルリン・フィルには敵いません。ベルリン・フィルの演奏が、しかも映像付きで観られる、という夢のようなDVDです。

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楽譜・スコア

レスピーギ作曲のシバの女王ベルキスの楽譜・スコアを挙げていきます。

ミニチュアスコアとIMSLPどっちが得?

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