フランシス・プーランク (Francis Poulenc,1899-1963)作曲のシンフォニエッタ(Sinfonietta) FP.141について、解説とおすすめの名盤レビューをしていきます。
プーランクの『シンフォニエッタ』は、明るく楽しい曲で、オーケストラから吹奏楽まで、意外に人気のある曲です。あまり有名な曲ではないし、時代的には現代音楽なので、まさに「隠れた名曲」です。
お薦めコンサート
🎵パーヴォ・ヤルヴィ=NHK交響楽団
ルーセル/弦楽のためのシンフォニエッタ 作品52
プーランク/シンフォニエッタ
イベール/室内管弦楽のためのディヴェルティスマン
解説
プーランクのシンフォニエッタについて解説します。
作曲と初演
1945年~1947年にかけて弦楽四重奏の作曲をしていたのですが、インスピレーションが沢山わいてきたため交響曲を目指すこと方針変更しました。
Wikipediaでは、この曲とビゼーの交響曲を比べていますが、参考にしておいてなんですが、ビゼーの交響曲は才気を感じるとはいえ若書きの作品なので土俵が違いますね。
初演は1948年10月24日にロンドンでロジェ・デゾルミエールの指揮により行われました。
1948年ということは戦後の話で、時代的には現代音楽の範疇(はんちゅう)に入ります。プーランクは宗教的な要素のない作品の場合は、新古典主義に近く、モーツァルトやハイドン辺りの時代の要素が多く入っています。
パロディ
もともと親しみやすい作品ですが、色々な作品のパロディがあって、さらに楽しめます。全体にチャイコフスキーのパロディが多く、交響曲第6番『悲愴』、バレエ『白鳥の湖』などなど、色々な作品のパロディが入っています。もちろん、素材として使っているだけで、曲の本質とは関係ありません。いわゆるフランスのエスプリというやつですね。
ハープを除き、2管編成でモーツァルト、ハイドン時代のオーケストラの編成に近く、トロンボーンが入っていません。
フルート×2、オーボエ×2、クラリネット×2、ファゴット×2
ホルン×2、トランペット×2
ティンパニ、ハープ
弦五部
シンフォニエッタ(小交響曲)ですが、もともと交響曲の予定だったため、通常の4楽章構成をとっています。ヤナーチェクの『シンフォニエッタ』と異なり、古典派後期からロマン派初期の交響曲を思い起こさせます。しかし、何故ロマン派後期のチャイコフスキーのパロディが多いのか、については謎ですね。
第1楽章:アレグロ・コン・フォーコ
ソナタ形式ではなく、自由に書かれた楽章です。
第2楽章:モルト・ヴィヴァーチェ
スケルツォに当たる楽章です。
第3楽章:アンダンテ・カンタービレ
緩徐楽章です。
第4楽章:フィナーレ
テンポの速いフィナーレです。多くのモチーフが交錯するように出てきて、機転が利いていて才気を感じる楽章です。
おすすめの名盤レビュー
それでは、プーランク作曲シンフォニエッタの名盤をレビューしていきましょう。定番はプレートル=パリ音楽院管弦楽団です。フランスのエスプリを持った一流オーケストラがほぼ無い現状からすると、これ以上面白い演奏をするのは難しいですね。
プレートル=パリ管弦楽団
プレートルとパリ管弦楽団の『シンフォニエッタ』です。これはプーランクを得意とするプレートルと、まだ古き良きフランスのエスプリを持っているパリ管弦楽団の組み合わせで、決定盤ともいえる名盤です。1968年録音ですが、今でも十分聴ける音質です。
若いプレートルはプーランクからの信頼も厚く、いくつかの作品を初演した位です。『シンフォニエッタ』を演奏するうえで、基本となるフランス的な明るさを前面に出して、リズミカルで溌剌とした演奏を繰り広げています。次々と現れるインスピレーション豊富なモチーフ、変化の激しい調整を上手く整理していて、味わいのある聴かせ所はしっかり聴かせてくれます。当時のフランスの金管のヴィブラートもいいですね。
タンゴー=RTE国立交響楽団
ジャン=リュック・タンゴーはフランスの指揮者です。RTE交響楽団はアイルランドのオーケストラですが、非常にトレーニングされていてハイレヴェルです。響きの透明感やシャープさはフランス音楽に合いますね。録音は非常によく、個々の楽器まで手に取るように聴こえてきます。タンゴーのプーランクへの理解の深さがあり、新しい定番といえそうです。
第1楽章は速めのテンポで機微に富んだ演奏が繰り広げられ、フランスのエスプリが出ています。残響はそこそこありますが、響きの良さだけを追求した演奏ではなく、プーランクらしい才気に溢れた演奏です。第2楽章はかなり速いテンポで、プーランクらしい演奏です。ジャン=リュック・タンゴーという指揮者は良く知りませんでしたが、プーランクに理解が深いようですね。デュカスなども録音していていますが、この演奏を聴くともっと良く聴いてみたくなりました。第3楽章も遅いテンポにはせず、機微を失わない演奏になっています。録音の良さとオケの音色の良さで、フランス的な香りのする演奏になっています。第4楽章も速いテンポで才気とインスピレーションに富んだ名演です。
カップリングは『牝鹿』組曲、『模範的な動物たち』組曲ですが、プーランク20~30代の時にバレエリュスなどの委嘱で作曲したバレエ曲で、プーランクを代表する曲です。このCDを聴けば、プーランクの一面が良く理解できると思います。もう一つの面とは宗教的な音楽で『グロリア』『スタバトマーテル』などが有名です。
デュトワとフランス国立管弦楽団の演奏です。1994-1996年と比較的新しく高音質です。デュトワは色彩的に演奏しています。プレートルほどフランスのエスプリは効いていませんが、透明感のある程の高音質で演奏技術的にも優れているため、近年のCDでは名盤といえます。
第1楽章は響きの透明感が印象的です。テンポも速めで溌剌としています。デュトワはまじめな演奏をしていて、時に味わい深いのですが、このパロディに満ちたシンフォニエッタを演奏するにはシニカルさがもう少しあった方がいい気がします。第3楽章は味わいがあり、響きが芳醇です。第4楽章は溌剌とした演奏です。
プレートル盤と比べなければ、何の不満も感じないかも知れません。スコアをしっかり読み込んだ上での演奏で、近年の演奏では代表的な名盤と言えたのですが、RTE管弦楽団の演奏が予想以上に良かったです。
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楽譜・スコア
プーランク作曲のシンフォニエッタの楽譜・スコアを挙げていきます。