フランツ・リスト (Franz Liszt,1811-1886)作曲のハンガリー狂詩曲 第2番 ニ短調 S.359/4 (Hungarian Rhapsodies No.2 D-Moll, ミュラー=ベルクハウス編曲)について、解説とおすすめの名盤レビューをしていきます。第2番以外の番号もあればレビューしてみたいと考えています。ワンストップでスコア、楽譜なども紹介します。
解説
リストのハンガリー狂詩曲について解説します。
民族舞曲集の元祖
リストのハンガリー狂詩曲は、ハンガリー出身のリストによる作品です。ハンガリーはマジャール人が8割を占めますが、リストはドイツ系です。このハンガリー狂詩曲のモチーフは、マジャール人の音楽ではなく、ハンガリーにいるジプシーの音楽が多いです。このハンガリー狂詩曲は、ブラームスのハンガリー舞曲集やドヴォルザークのスラヴ舞曲に大きな影響を与えました。ブラームスもオーストリア人なので、ハンガリー舞曲といいつつ、ジプシー音楽を取り入れています。そんなわけで、民族的な舞曲集のパイオニア的存在で、内容も味わい深い曲集ですが、ハンガリーの間違ったイメージを植え付けてしまった所はありそうです。
作曲と管弦楽版
最初の15曲は1853年に出版され、最後の4曲は1882年~1885年までに追加で作曲されました。最初の15曲が特に名曲でピアノ曲として難易度が高いことで有名です。
ピアノ版は第19番まであり結構な大作です。管弦楽への編曲は、6曲を抜粋してフランツ・ドップラーが行いました。ピアノ版と番号が変わっており、調性も異なります。また、第2番はカール・ミュラー=ベルクハウス編曲版があり、こちらもメジャーで良く演奏されます。
また第14番を元に、ピアノとオーケストラのための『ハンガリー幻想曲』が編曲されています。
第1番 ヘ短調 S.359/1 (⇒ピアノ版第14番)
第2番 ニ短調 S.359/2 (⇒ピアノ版第2番嬰ハ短調)
第3番 ニ長調 S.359/3 (⇒ピアノ版第6番変ニ長調)
第4番 ニ短調 S.359/4 (⇒ピアノ版第12番嬰ハ短調)
第5番 ホ短調 S.359/5 (⇒ピアノ版第5番)
第6番 ニ長調 S.359/6 (⇒ピアノ版第9番変ホ長調)
第2番 ハ短調(⇒ピアノ版第2番嬰ハ短調)
おすすめの名盤レビュー
それでは、リスト作曲ハンガリー狂詩曲の名盤をレビューしていきましょう。
カラヤン=ベルリン・フィル (第2番,第4番,第5番)
カラヤンとベルリン・フィルの定番の演奏です。有名な第2番と第5番、第4番という選曲です。1960年代のカラヤン=ベルリン・フィルの重厚な名演奏です。第2番はカール・ミュラー=ベルクハウス編曲版を使用しています。知名度の高い第2番、内容の充実した第4番など、選曲も良いです。
第2番は弦の分厚い響きに始まり、とてもハンガリー風な味があり、かつ力強いです。テンポは遅めで良く粘っています。クラリネットのソロがとても上手く印象的です。カラヤンはオーストリア人で、ハンガリーの隣の国なので、ジプシー音楽もとても上手いです。後半は哀愁に溢れたホルンが魅力的です。最後の有名なテーマはさすがカラヤンでスリリングに聴かせてくれます。
第4番はトランペットに始まり、弦の濃厚な演奏が印象的です。このモチーフも有名かも知れませんね。遅めのテンポでじっくり歌われます。軽快なモチーフはリズミカルです。ハープも良いですね。色彩感のある編曲です。しっかりとした演奏でフルートやハープなど色彩感があって聴きごたえがあります。終盤は明るさも出てきて最後は切れ味良く終わります。
ボスコフスキー=ロンドン・フィル (第1番~第5番)
ウィンナ・ワルツで有名なボスコフスキーとロンドンフィルの演奏です。第1番~第6番まで録音されており、アマゾンミュージックで聴けます。ハンガリーの隣のオーストリアの指揮者ボスコフスキーとダイナミックなロンドンフィルの演奏で、この中では中庸な演奏だと思います。録音は1977年でこのページの中では新しめで音質は悪くないです。
第2番はほどよい哀愁のある弦で始まり、スタンダードで自然な演奏スタイルです。テンポ取りもスコアに忠実でこういう演奏も貴重ですね。ルバートのやり方が上手く、とても自然な表現とテンポ取りです。後半は金管がダイナミックで木管群も色彩的で、結構スリリングで楽しめます。舞曲としてしっかりまとまっており、この曲の基準といえるディスクだと思います。
オーマンディとフィラデルフィア管弦楽団の演奏ですが、録音が1958年と古めで、まだ音質も良くありません。しかし、オーマンディはハンガリーの指揮者です。演奏はジプシー的な濃厚さと、自由で速いテンポ取りや熱気がありオーマンディの若さが感じられます。
第2番はスタンダードと言ってよい演奏スタイルです。冒頭の弦は濃厚さと共にパッションがあり、聴きごたえがあります。急にテンポを速くしてスリリングな表現となったりします。その後の落ち着いた名盤を沢山残した時代とは大きく異なり、若い頃のオーマンディは溌剌とした自由さのある演奏で驚かされます。後半の有名なテーマはギャロップのようなテンポの速さで盛り上がり、とてもスリリングです。
第1番は力強く推進力のある低弦から始まります。高弦が入ると熱気をはらんで盛り上がります。哀愁のあるメロディは暗くなりすぎず、程よい表現です。後半はテンポが速くなり、とてもスリリングです。終盤は色彩的な響きで盛り上がり、最後はとてもスリリングです。
バーンスタイン=ニューヨーク・フィル (第1番,第4番)
マズアとライプツィヒ・ゲヴァントハウス管の演奏です。ブラームスのハンガリー舞曲で見せた奥ゆかしさがあり、わざとらしさが無い演奏スタイルです。またリズム感の優れた演奏で、響きに独特の味があります。マズアは個性的なのですが、センスの良い演奏であり、聴くほどに味わいが深まる名盤です。
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楽譜・スコア
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