運命の力 (ヴェルディ)

ジュゼッペ・ヴェルディ (Giuseppe Verdi, 1813~1901)歌劇『運命の力』(La forza del destino) について解説と、主に「運命の力序曲」の名盤のレビューを行っていきます。

解説

ヴェルディ作曲の歌劇『運命の力』および序曲の解説をします。

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歌劇『運命の力』は4幕物のオペラです。ロシア皇帝歌劇場の依頼で書かれ、1862年サンクトペテルブルグで初演されました。

人間の持つ愛情と憎悪、降伏と悲哀を描いていて、最後には主な登場人物が全員死んでしまうという、波乱に富んだ物語です。スペインの侯爵の娘レオノーラは、父の許さぬ青年アルヴァーロとの駆け落ちを決意するが、ふとしたはずみでアルヴァーロはピストルを暴発させて侯爵を殺してしまいます。侯爵の息子ドン・カルロはアルファーロと決闘し、瀕死の重傷を負いながらもかけつけたレオノーラを父の仇と考えて殺してしまいます。

序曲は『運命の力』の物語を暗示したもので、劇中の主題が使用されています。

名盤レビュー(序曲)

ヴェルディ作曲『運命の力』序曲の名盤をレビューします。

ムーティ=ミラノ・スカラ座フィル

イタリア最高峰のオーケストラと力強いムーティの名演!
  • 名盤
  • 定番
  • ダイナミック

超おすすめ:

指揮リッカルド・ムーティ
演奏ミラノ・スカラ座フィルハーモニー

1993年 (ステレオ/デジタル/セッション)

ムーティはいまやオペラ指揮者の巨匠です。ムーティとミラノスカラ座であればどうしたって一流のイタリア風な演奏になります。ムーティはアバドと違って、追い込みはそこまで激しくありませんが、力強さでは勝っています。

この『運命の力』はかなりの悲劇なのですが、その辺りの力強さも考えると、ミラノスカラ座管弦楽団のスケールの大きな響きも合わせて、かなり得点が高い演奏です。

シノポリ=ウィーン・フィル

予想以上の名演!やっぱりシノポリは凄かった
  • 名盤
  • 定番
  • シャープ
  • 情熱的

超おすすめ:

指揮ジュゼッペ・シノポリ
演奏ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

1983年,1984年 (ステレオ/デジタル/セッション)

シノポリとウィーン・フィルの演奏です。シノポリはイタリア人です。そしてドレスデン・シュターツカペレでオペラ指揮者として多くの名演を残しています。

オケがウィーン・フィルだからか、重厚さのある演奏から始まります。そのうえで、シノポリはカンタービレを上手くウィーンフィルに演奏させていて、イタリア的な演奏をしています。そして、シノポリらしい感情の入れ込みもしっかりあって、凄くシャープな演奏になっています。イタリアン・カンタービレは明るいものですが、ドラマティックな所もきちんと表現できていて、悲劇的ななかに明るさがあるので、余計に美しく響きます。

予想以上の名演奏でした。

アバド=ベルリン・フィル

技術的に敵なしのベルリン・フィルのカンタービレとアバドのスリリングな名演!
  • 名盤
  • 定番
  • スリリング

おすすめ度:

指揮クラウディオ・アバド
演奏ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

:1996年5月,ベルリン (ステレオ/デジタル/セッション)

アバドはベルリン・フィルにイタリアン・カンタービレの演奏方法を植え付けたようですね。

テクニック的には敵なしのベルリン・フィルですから、イタリア風な演奏ができるとなれば、もうこれを超えるのは並大抵のことではないですね。アバドは軽快なのでスリリングですが、力強い演奏があればもしかすると、と思います。

響きのスピードの速いベルリンのフィルハーモニーザールの音響もあって気分爽快な名演です。

カラヤン=ベルリン・フィル

  • 名盤
  • 定番

おすすめ度:

指揮ヘルベルト・フォン・カラヤン
演奏ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

(ステレオ/デジタル/セッション)

カラヤン=ベルリン・フィルはイタリアとは関係のない組み合わせですが、カラヤンはたまにオペラも振りますし、ロマン派的な表現力は凄いものがあります。

冒頭の3つの音は、ダイナミックに長めに響かせています。カンタービレもイタリア的とまでは行きませんが、上手く響かせてヴェルディのオペラの序曲の雰囲気を出しています。『運命の力』という悲劇の序曲の演奏として、単にダイナミックで艶のある歌い口というだけではなく、きちんとオペラの内容を理解してドラマティックに演奏していると思います。ちょっとチャイコフスキーみたいなところもありますけど。

それにしてもベルリン・フィルの技術には舌を巻きます。弦も艶やかでダイナミックですし、金管楽器も凄いパワーです。『運命の力』序曲には必要な要素だと思います。

シャイー=ミラノ・スカラ座管弦楽団

本場ミラノ・スカラ座のスリリングな名盤!
  • 名盤
  • 定番
  • 情熱的
  • スリリング

おすすめ度:

指揮リッカルド・シャイー
演奏ミラノ・スカラ座管弦楽団

(ステレオ/デジタル/セッション)

シャイーは基本的にオペラ指揮者として活躍しています。『運命の力』は悲劇で、序曲もその要素を取り入れているので、悲劇であることがわかるような演奏になるかと思うのですが、シャイーはスリリングな演奏はしていますが、悲劇的というより明るい演奏になっています。序曲集としてはそれでよいのかも知れませんけれど、今一つ物足りないような感じもします。

でも、このアルバムの最後を飾る演奏としては、最後の追い込みなど素晴らしいです。

ルイージ=フィルハーモニア・チューリッヒ

ルイージらしいシャープでメリハリのついた演奏
  • 名盤
  • 定番
  • シャープ

おすすめ度:

指揮ファビオ・ルイージ
演奏フィルハーモニア・チューリッヒ

2017年1月,スイス,ドルナッハ,ゲーテアヌム (ステレオ/デジタル/セッション)

イタリア人ファビオ・ルイージが指揮する演奏です。スイスのオケですが、非常にシャープでメリハリのついた演奏です。スイスのオケにイタリア風な演奏をさせるのは、簡単では無いですが、パワーもあり、カンタービレも上手く演奏しています。

選曲も良く、2枚組のCDで、有名なものから、あまり取り上げられない名曲まで揃っていて、力の入れ具合が分かりますね。

オペラDVD

オペラのディスクを紹介します。日本語字幕はパッケージによって有無が変わるため、よくご確認ください。筆者が観たDVDは古くなって廃盤になってしまいました。『運命の力』はシリアスで長いオペラなので、頑張って見ましょう。

メータ=フィレンツェ5月音楽祭

  • 名盤
  • 定番

指揮ズービン・メータ
演奏フィレンツェ5月音楽祭管弦楽団&合唱団

2007年,フィレンツェ歌劇場(テアトロ・コムナーレ)におけるライヴ収録[イタリア語上演](ステレオ/デジタル/セッション)

★日本語字幕付き(英語, ドイツ語, フランス語, スペイン語, 中国語, 韓国語, 日本語)

ジェルメッティ&パルマ・レッジョ劇場

  • 名盤
  • 定番

演出ステーファノ・ポーダ
指揮ジャンルイージ・ジェルメッティ
演奏パルマ・レッジョ劇場管弦楽団&合唱団

2011年2月2,5日,パルマ,レッジョ劇場 (ステレオ/デジタル/ライヴ)

日本語字幕

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楽譜

ヴェルディ作曲の『運命の力』のスコア、楽譜を紹介します。

ミニチュアスコアとIMSLPどっちが得?

ミニチュア・スコア

スコア(全曲版)

ヴォーカル・スコア

La Forza Del Destino
4.1/5.0レビュー数:7個

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