美しき青きドナウ(ヨハン・シュトラウスⅡ)

ヨハン・シュトラウス (Johann Strauss,1825-1899)作曲の『美しき青きドナウ』 Op.314 (An der schonen blauen Donau Op.314)について、解説おすすめの名盤レビューをしていきます。最後に楽譜・スコアも挙げてあります。

解説

ヨハン・シュトラウス『美しき青きドナウ』 Op.314について解説します。

『美しき碧きドナウ』は今ではオーストリアの第二の国歌とまで言われるほど親しまれています。

『美しき碧きドナウ』の最初のバージョンは、男声合唱のために作曲されました。そのバージョンには長い歌詞がついていたのですが、あまり品の良いものとは言えませんでした。

次にオーケストラ版が作曲されます。オーケストラ版の素晴らしい出来に、合唱曲としても歌詞を変えることになります。そして、今ではオーストリア第二の国歌と言われるほどの地位を得るようになりました。

ウィーン・フィルが設立され、ニュー・イヤー・コンサートが行われるようになりました。そこでアンコール曲として定着し、毎年必ず演奏されています。もちろん、ニュー・イヤー・コンサート以外でも、ワルツ『美しき青きドナウ』はウィンナ・ワルツの王者と呼べる名曲であり、多くの機会に演奏され、またCDも多く出ています。

演奏にはウィンナ・ワルツ独特の3拍子のリズムが必須です。簡単に言えば、2拍目が少し速く、3拍目が少し遅い3拍子なのです。これは、ウィンナ・ワルツが社交界で実際踊られ、円を描くように踊っていたことが原因だと思います。1拍目に加速して、段々遅くなるように踊られるのです。当然、リズムは一定ではなく、状況やスピードによってタイミングが変わってきます。

このリズムを演奏するのはとても難しく、隣国のドイツのオケでもできません。やはりウィーン・フィルやオーストリアのオケでないと難しいですね。ウィーンフィルは毎年頻繁に演奏していますから、代々ウィンナ・ワルツのリズムの取り方を継承していっているんです。どんな大指揮者もそういう所は、ウィーンフィルの自主性に任せています。ウィンナワルツをきちんとした3拍子で指揮しようとしたのは小澤征爾くらいです。

ウィンナ・ワルツを得意とする指揮者も限られます。ほとんどはオーストリア出身の指揮者です。一番はやはりカルロス・クライバーで、どんなテンポでもオーストリア風のリズムが乱れることはありません。カラヤン、ウェルザー・メストなど、オーストリアの指揮者はやはり得意です。リッカルド・ムーティは、ウィーン・フィルに任せている部分も多いですが、カルロス・クライバー以降ではかなり良い演奏をしていると思います。

おすすめの名盤レビュー

それでは、ヨハン・シュトラウス作曲美しき青きドナウ Op.314名盤をレビューしていきましょう。

多くはウィーン・フィルのニュー・イヤー・コンサートのアンコールです。これがやはり一番名演が多いですし、毎年演奏されているので数も多いですね。

カラヤン=ウィーン・フィル(1987年)

カラヤン最晩年のニューイヤーコンサートより

カラヤン最晩年のニュー・イヤー・コンサートです。カラヤンの指揮したニュー・イヤー・コンサートはこの1回でした。

カラヤンはオーストリア出身です。なので、ウィンナ・ワルツはお国モノであり得意です。それを始めてウィーン・フィルと演奏したのです。

映像を見ると、ほとんどウィーン・フィルに任せているような感じもするのですが、演奏を聴いてみるとカラヤンらしい所は沢山あります。ウィーン・フィルの響きのイメージがカラヤンらしく、ふくよかというよりは薄手で、特に弦セクションに艶やかに磨きをかけた光沢のある響きです。ウィーンのムジークフェラインで演奏すると、まさに黄金のサウンドという風情です。

録音も非常によく、今聴いても1987年のライヴとは思えないものがあります。管楽器はホルンを中心にナチュラルな響きですが、所々にテヌートがかかり、カラヤンらしい表現をしています。

巨匠になったカラヤンは、この長いとは言えないアンコール曲でも、軽く扱うことなく、ニュー・イヤー・コンサートに相応しく、しっかり仕上げています。

そして手の動きもおぼつかない位ですが、椅子に座ることは無く、バーにもたれかかって立って指揮しています。おそらくカラヤンにとって、このニュー・イヤー・コンサートは、それだけ重要なコンサートだったということです。

ちなみに、このニュー・イヤー・コンサートの聴きどころは喜歌劇『こうもり』序曲キャスリーン・バトルを迎えた『春の声』でしょうか。多分、中高生の時にNHKで観たのですが、『春の声』が一番印象的でした。アンコールはラデッキー行進曲もしっかりした響きでカラヤンらしいです。

カラヤン=ウィーン・フィル(1987年)

カラヤン最晩年のニューイヤーコンサート(映像)
  • 名盤
  • 円熟
  • 格調
  • ライヴ

超おすすめ:

指揮ヘルベルト・フォン・カラヤン
演奏ウィーン・フィルハーモニー

1987年1月1日,ウィーン,ムジークフェラインザール(ライヴ)

カルロス・クライバー=ウィーン・フィル

カルロス・クライバーの流麗な指揮とウィーン・フィルの奇跡のような演奏
  • 名盤
  • お国物
  • スリリング

超おすすめ:

指揮カルロス・クライバー
演奏ウィーン・フィルハーモニー

1989年1月1日,1992年1月1日,ウィーン,ムジークフェライン(ライヴ)

カルロス・クライバーはニュー・イヤー・コンサートに2度登場しました。都合2つの『美しき青きドナウ』が残されていることになります。

カルロス・クライバーはオーストリア系(正確には疎開先のアルゼンチン出身)の指揮者で、父親はエーリヒ・クライバーという戦前に活躍した指揮者です。父親譲りの演奏スタイル(おそらくスコアも継いでいる)で、現代のハイレヴェルなオーケストラのおかげで、父親が果たせなかった正確でスリリングな演奏で、いくつも伝説的なディスクがあります。

この『美しき青きドナウ』は、テンポ設定が巧妙で、ウィンナ・ワルツのリズムが意味を持って聴こえます。リズムはウィーン・フィルにお任せの指揮者が多い中、伝統あるウィーン・フィルのリズムに手を加えてさらに良くなったという、凄い演奏です。

ドナウ川のように流れて行ってしまう演奏が多い中、色々な表現を詰め込んでいて、それがとても嵌っています。1989年の演奏が良く、1992年の演奏も素晴らしいですが、この曲はさておき、ポルカなどで白熱し過ぎて、少しテンポが走っています。常にギリギリを狙うのがカルロス・クライバーなので、たまに走るんですよね。そういう演奏はCD化されませんけれど。

さて『美しき青きドナウ』以外に2年分の曲が入っています。その中で特筆すべきは喜歌劇『こうもり』序曲です。1989年の演奏は本当にギリギリを狙っていて、しかも走っていません。もの凄くスリリングな演奏で、バイエルン放送交響楽団との演奏もありますが、やはりウィーン・フィルのほうが響きが良いです。ポルカ・マズルカ「とんぼ」の表現は面白いです。後半はプログラムが良く、全体の流れが素晴らしいです。最後に、ラデッキー行進曲。クライバーのラデッキー行進曲は、これがただの行進曲ではなく、踊りのための音楽なんだということを気づかせてくれます。

カルロス・クライバー=ウィーン・フィル(DVD)

カルロス・クライバーの流麗な指揮とウィーン・フィルの奇跡のような演奏
  • 名盤
  • お国物
  • スリリング

超おすすめ:

指揮カルロス・クライバー
演奏ウィーン・フィルハーモニー

1989年1月1日,1992年1月1日,ウィーン,ムジークフェライン(ライヴ)

小澤征爾=ウィーン・フィル

小澤征爾らしく、端正でしなやかにまとめた名演
  • 名盤
  • 端正
  • しなやか

おすすめ度:

指揮小澤征爾
演奏ウィーン・フィルハーモニー

2002年1月1日,ウィーン,ムジークフェライン(ライヴ)

icon アマゾンミュージックUnlimitedとは?

小澤征爾は、メータやアバドがニュー・イヤー・コンサートに何度も登場するのを尻目にずっと待たされました。やはり、リズム感が欧米の指揮者と違う所があると思います。小澤征爾はリズム感が特別に優れた指揮者であることは疑う余地はありませんが、それはヨーロッパの上流階級向けの音楽とはあまり相性が良くなかったかも知れません。ウィーン国立歌劇場の指揮者になっても、モーツァルトはあまり得意ではなく、近代的な演目で評価を勝ち取ってきました。

しかし、ウィーンフィルを指揮した時でも、リズムは持ち前のしっかりしたバトンテクニックでウィーンフィルに任せたほうが良い所まで振り切ってしまいます。これは斉藤式の指揮法で、オーケストラをコントロールしきる能力が骨の髄までしみついているんです。でも、これを止めたら小澤征爾ではなくなってしまいます。

結局、そんな状況の中、とうとう2002年に東洋人として初めてニューイヤーコンサートの指揮台に上りました。

映像で見ると、結構細かい所まで、しっかり指揮している様子が見えるのですが、CDで聴くと小澤征爾らしく、しなやかでスタイリッシュにまとまっています。最初の『こうもり』序曲は、ウィーン・フィルを巧みにコントロールして、テンポを巧妙に操って、フレッシュさのある演奏にまとめています。『こうもり』序曲というと、カルロス・クライバーの演奏が印象に強いですが、この演奏もスリリングさでは負けてはいません。でも、ほとんどをウィーンフィルに任せて、必要な所だけ指揮しているクライバーと律儀にオケをコントロールしている小澤では、近いようでいて大分違う気がします。

さて『美しき青きドナウ』も、すっきりした小澤らしい名演ですね。私も日本人として、日本人指揮者の小澤征爾がここまでニュー・イヤー・コンサートの格式を全く落とすことなく、質の高い演奏をしてきたことは嬉しいです。そして、ウィーンフィルの十八番の『美しき青きドナウ』も小澤征爾は自分の指揮法を曲げず、しかも質の高い演奏をやりきったことに敬意を感じます。

小澤征爾=ウィーン・フィル(映像)

小澤征爾らしく、端正でしなやかにまとめた名演
  • 名盤
  • 端正
  • しなやか

おすすめ度:

指揮小澤征爾
演奏ウィーン・フィルハーモニー

2002年1月1日,ウィーン,ムジークフェライン(ライヴ)

icon

ボスコフスキー=ウィーン・フィル

1955~1979年までニュー・イヤー・コンサートを指揮したボスコフスキーの名盤
  • 名盤
  • 円熟
  • お国物

おすすめ度:

指揮ヴィリー・ボスコフスキー
演奏ウィーン・フィルハーモニー

ウィーン,ムジークフェラインザール(ライヴ)

ボスコフスキーはウィーン生まれウィーン育ちの名ヴァイオリニストです。

1955年~1979年までの20年以上の間、ウィーン・フィルのニュー・イヤー・コンサートの指揮者を担当していました。ボスコフスキーはウィーン・フィルのコンサートマスターでもあり、ヴァイオリンを弾きながら指揮をする、というウィンナ・ワルツが実際踊られていたころの演奏スタイルで指揮をすることもありました。

ボスコフスキーの演奏は、オーストリア=ハンガリー帝国の宮廷の華麗さや品格を残しつつも、ふくよかさと余裕のある演奏です。

もちろん新年のコンサートを楽しみに来る現代の市民向けに親しみやすい演奏をしている所もありますが、それ以前にニュー・イヤー・コンサートを指揮していたクレメンス・クラウスを引き継いで、ウィンナ・ワルツの質を落とさず後世に伝えていくという役割も担っていました。

カルロス・クライバーほど、巧みなタクト捌きではなく、あくまでコンサートマスターが指揮者になったような感じで、ウィーンフィルが持っている伝統を楽団と一緒になって20年間維持してきたのだと思います。

とても力を抜いて楽しめる、親しみやすい演奏です。

アーノンクール=ウィーン・フィル

意外に格調高くスタンダードな名演
  • 名盤
  • お国物
  • 格調

おすすめ度:

指揮ニコラウス・アーノンクール
演奏ウィーン・フィルハーモニー

2001年1月1日,ウィーン,ムジークフェライン(ライヴ)

icon アマゾンミュージックUnlimitedとは?

アーノンクールとウィーンフィルの2001年のニューイヤーコンサートでの演奏です。「ニュー・イヤー・コンサートにアーノンクールが出演するなんて意外過ぎる」と、当時は随分話題になったものですが、2003年も再登場しました。

でもアーノンクールはオーストリア人なんです。ですから、ウィンナ・ワルツはお国モノです。指揮台に立てばよい演奏をするだろうことは想像つきました。

それにしても、最初の曲目が「ラデッキー行進曲」(オリジナル版)というのは凄い選曲ですね。その後も割と知名度が低い曲が続いたのですが、実際聴いてみると知っているメロディが多かったり、演奏に機転が利いていて面白かったりと、ニュー・イヤー・コンサートの中でも質の高いコンサートでした。

さて『美しき青きドナウ』も、今までの演奏とは少し違うテンポ取りの演奏で、いつものふくよかさも少なめでしたが、とても格調高くまとめていて、考えてみるとアーノンクールはもう円熟した巨匠なのだ、ということをよく認識させられました。

こうやって、ムーティと一緒になっていますが、ディスクで演奏が聴けるのは幸運なことだと思います。

ボスコフスキー=ウィーン・ヨハン・シュトラウス管弦楽団

ボスコフスキーと手兵によるウィンナ・ワルツ集
  • 名盤
  • 円熟
  • お国物

おすすめ度:

指揮ヴィリー・ボスコフスキー
演奏ウィーン・ヨハン・シュトラウス管弦楽団

1982年3月,4月,ステレオ(デジタル/セッション)

曲目
  1. ワルツ『美しく青きドナウ』 op.314
  2. ワルツ『南国のバラ』 op.388
  3. ワルツ『ウィーン気質』 op.354
  4. ワルツ『春の声』 op.410
  5. ワルツ『芸術家の生涯』 op.316
  6. ワルツ『ウィーンの森の物語』 op.325
  7. ワルツ『皇帝円舞曲』 op.437

こちらはボスコフスキーウィーン・ヨハン・シュトラウス管弦楽団のディスクです。ニュー・イヤー・コンサートから同じようなウィンナ・ワルツ集が作れそうですが、何故か大全集はありますが、手ごろなものはありません。その代わり、といってはこの演奏もレヴェルが高いものですが、手ごろな選曲だと思います。

ボスコフスキーはウィーン・ヨハン・シュトラウス管弦楽団の首席指揮者でもあり、来日公演もしましたし、ウィンナ・ワルツのディスクを残しています。

ウィーン・ヨハン・シュトラウス管弦楽団

ウィーン・ヨハン・シュトラウス管弦楽団は、かつてヨハン・シュトラウス2世の弟であるエドヴァルド・シュトラウス1世が指揮者をしていたシュトラウス楽団を再建する、という名目で結成されました。そして初代指揮者はエドヴァルド・シュトラウス1世の子供であるエドヴァルド・シュトラウス2世でした。しかし1969年に彼が早世してしまったため、ボスコフスキーが首席指揮者になりました。

つまり、ウィーン・ヨハン・シュトラウス管弦楽団は、シュトラウス一家のウィンナ・ワルツと関係していますが、演奏スタイルを継承している訳ではありません。シュトラウス楽団の再建を目的に結成した楽団なので、ウィンナ・ワルツを専門としていてレヴェルは高いです。

さて、ボスコフスキーと楽団の紹介が長くなりましたが、ウィーン・ヨハン・シュトラウス管弦楽団は正統派のウィンナ・ワルツ専門オーケストラといえます。

ウィーン・ヨハン・シュトラウス管弦楽団は、ウィーン・フィルに比べると格調やふくよかさは、さほどありませんが、ウィンナ・ワルツの特徴を良く再現していて、親しみやすく、おそらく社交界で演奏しても通用しそうな演奏です。ポルタメントなど昔ながらの装飾も少し見られます。

ボスコフスキーは1982年にもなるとウィンナ・ワルツの巨匠と言えると思います。テンポを巧みにコントロールして、華やかな演奏を繰り広げています。

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楽譜・スコア

ヨハン・シュトラウス作曲の美しき青きドナウ Op.314の楽譜・スコアを挙げていきます。

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