ゲオルク・フリードリヒ・ヘンデル (Georg Friedrich Handel,1685-1759)作曲の王宮の花火の音楽 HWV.351 (Music for the Royal Fireworks)について、解説とおすすめの名盤レビューをしていきます。
解説
ヘンデルの王宮の花火の音楽について解説します。
オーストリア継承戦争終結のために開かれたアーヘンの和議を祝う祝典のために作曲されました。祝典は1749年4月にロンドンのグリーン・パークにて行われました。
編成は管楽器中心です。とにかく当時としても大編成で、どこから奏者を連れてきたのだろう、と思います。ヘンデルは弦楽器の使用を主張しました。そこでオーボエはヴァイオリンと同じパートを吹くようになっています。ファゴットはチェロと同じパートを吹きます。
1886年発行のDeutsche Händelgesellschaftのスコアでは、大編成の管楽器が指定されています。もっとも、1749年からは140年近く経っている訳で、正確かどうかは不明です。
第1オーボエ:12本、第2オーボエ:8本、第3オーボエ:4本
第1ファゴット:8本、第2ファゴット:4本、コントラファゴット:1本
第1ホルン:3本、第2ホルン:3本、第3ホルン:3本
第1トランペット:3本、第2トランペット:3本、第3トランペット:3本
ティンパニ:3セット
第1曲:序曲:Ouverture
フランス風序曲です。
第2曲:ブレー:Bouree
フランスの舞曲
第3曲:平和:La paix
第4曲:歓喜:La rejouissance
ルジュイサンスは特定の舞曲ではなく「余興」に近い意味があります。ただ、中間の曲に位置していることと、この曲の意義(和議の成立)を考えると、「歓喜」というのが適切だと思います。
第5曲:メヌエットI :Minuet
フランス風組曲はメヌエットで落ち着いて終わる形態の組曲も多いです。
第6曲:メヌエットII:Minuet
管楽器によるメヌエットですが、メヌエットらしからぬダイナミックさがある音楽で、フィナーレに近いかも知れません。でも普通は最後がメヌエットなら、しめやかに終わるものですけどね。
おすすめの名盤レビュー
それでは、ヘンデル作曲王宮の花火の音楽の名盤をレビューしていきましょう。
ニケ=コンセール・スピリチュエル
ニケ=コンセール・スピリチュエルによる本物の『王宮の花火の音楽』です。終戦の祭典、花火がバンバン上がっている中で演奏されるのが、この『王宮の花火の音楽』です。古楽器と言えども、音が花火に消されてはいけないのです。この録音はYouTubeに映像もあり、上に貼っておきますが、CDは入手困難ですけど、タワーレコードやHMVでは取り寄せ可能かも知れません。
編成は、楽器を特注で製造し、木管は、オーボエ24、バスーン12、コントラバスーン2、金管はナチュラル・ホルン9人、ナチュラル・トランペット9人です。それに相応の弦楽器も入っていて、100人での演奏とのことです。
響きの無い屋外での演奏なので、この位の編成でないと音が聞こえなくなるでしょうね。当時のイギリスの花火がどんなものか分かりませんが、少なくとも、花火の最中であっても和平を実現する王族や貴族にはちゃんと聴こえないといけないのです。
ピノック=イングリッシュ・コンサート
ピノックとザ・イングリッシュ・コンサートの演奏です。パーカッションはティンパニに加え、スネヤも入れて華やかさを出しています。編成も大きめだと思います。パーカッションがダイナミックに演奏してもバランス的に問題はないですね。
「序曲」は華やかに始まり、主部はシャープな響きで盛り上がります。この位盛り上がれば十分『王宮の花火の音楽』に相応しいですね。弦セクションはオーボエで補強されて、金管などに負けずにレガートで演奏しています。「平和」も管楽器の編成が大きいことが良く分かりますが、十分平和を表現できています。「喜び」ではまたスネヤが登場し、かなりダイナミックに盛り上がります。「メヌエット」で弦セクションとオーボエが交互に演奏し、落ち着いた雰囲気を出しています。最後のメヌエットは金管中心にダイナミックに演奏されます。
ガーディナー=イギリス・バロック管弦楽団
クーベリック=ベルリン・フィル
クーベリックとベルリン・フィルの演奏です。モダン・オーケストラの演奏ですが、リズミカルで音も詰めたりしていて、気分良く聴ける名演です。特に古楽器奏法とまでは行きませんが、センスの良い演奏だと思います。全体的にエコー(繰り返しの2回目を弱くする)をしていないことも特徴です。
序曲は祝祭といった感じで、華やかでダイナミックです。フランス風序曲も上手く演奏し、主部もリズミカルです。若干、ヴィブラートは強めです。クーベリックが指揮なので、結構感情的な盛り上がりがありますね。『王宮の花火の音楽』では良い方向に出ています。ブーレも舞曲のリズム、テンポから外れておらず良い演奏です。クーベリックの演奏には「涼し気」という感じはないですが、モダン・オケの演奏では良い演奏だと思います。「平和」は、少し遅いですが、許容範囲だと思います。「歓喜」は華やかに盛り上がっています。「メヌエット」はデザートみたいなものなのですが、少し重い演奏かな、という感じです。
1963年の録音なので、まだ古楽器奏法はなく、その状況での演奏だと考えると、クーベリックも意外にセンス良く演奏していると思います。ヘンデルの中にある感情的な部分が強調されていてダイナミックさがあり、『王宮の花火の音楽』らしいです。
ラモン=ターフェルムジーク・バロック
ターフェル・ムジーク・バロック管弦楽団の演奏です。『王宮の花火の音楽』の場合、弦楽器を入れるかどうかで議論になった位なので、古楽器の弦楽セクションを中心に据えると迫力がなくなる場合が多いです。
序曲は金管とティンパニも入ってダイナミックに演奏していますが、編成が小さいので、モダンオーケストラのようなダイナミックさは出せません。しかし、ターフェル・ムジークは自然で小気味良く演奏していて、弦とのバランスは取っているのでヘンデルらしさは良く出ています。「ブーレ」は自然でフランス的な演奏です。響きがクールなので『水上の音楽』のように思えてしまいます。「平和」は3拍子のリズム感が保たれていてとても自然に平和を表現しています。「喜び」は、舞曲風で高揚感が少ない感じでしょうか。編成の小ささによるものだと思いますけど。「メヌエット」はイネガルで揺らしながら演奏していて、ちょうど良い雰囲気です。
全体的に良い演奏ですけれど、『王宮の花火の音楽』にはパワー不足で、『水上の音楽』と大きく変わらない感じになっています。もっとも、演奏レヴェルは非常に高く、これはこれで気持ちよく聴ける演奏です。
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楽譜・スコア
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