カミーユ・サン=サーンス (Camille Saint-Saens,1835-1921)作曲の歌劇『サムソンとデリラ』をバッカナールを中心に、解説とおすすめの名盤レビューをしていきます。
歌劇『サムソンとデリラ』は、サン=サーンスが好んだエキゾチックなオペラです。その中で「バッカナール」が有名で、吹奏楽などでも演奏されます。
解説
歌劇『サムソンとデリラ』について解説します。
実はオペラ作曲家
サン=サーンスが作曲した3幕のオペラです。サン=サーンスは実はオペラ作曲家で13作もオペラがあります。その中で最も成功したのが歌劇『サムソンとデリラ』です。このオペラは旧約聖書「士師記」のサムソンの物語に基づいています。
作曲から成功までの長い道のり
1868年に着手しました。そして6年の歳月をかけて1874年に完成しました。しかし、聖書を題材にしたオペラに難色を示し、オペラ座での上演は拒否されるなど、なかなか初演の機会が得られませんでした。
そこで1875年に第1幕を演奏会形式で、コンセール・コロンヌで初演しましたが、酷評を受けてしまいます。
オペラ全曲の初演は、ドイツのヴァイマールの宮廷歌劇場でドイツ語で行われました。この初演はフランツ・リストの強い希望があったため実現しました。フランス初演も1890年10月31日にパリのエデン劇場で行われました。初めて成功を収めたのは1892年11月23日にコロンヌの指揮による上演でした。その後、30年間は繰り返し上演され、グランド・オペラの人気作となっています。
バッカナール
「バッカナール」は酒の神バッカスの宴です。バレエとして第3幕第2場に配置されています。酒宴、要するに飲み会なので、健康的なシーンでもないのですが、音楽は洗練されていてリズミカルです。吹奏楽部の若い人に人気があるのは、まだアルコールは飲めませんから音楽が洗練されているからですね。
長いオペラですが、今でもたまに上演されます。あまり有名なシーンや曲は少ないようで、主に『バッカナール』によって良く知られているようです。オペラとしてもDVDで入手できます。
アリア
他には第2幕第3場の二重唱「あなたの声に私の心も開く」が有名です。歌手のアルバムに入っている曲もあり、マリア・カラスのアルバムには「春はめざめて」「愛よ、かよわい私に力をかして」「あなたの声に心は開く」の3つのアリアが入っています。
おすすめの名盤レビュー
それでは、サン=サーンス作曲バッカナール(『サムソンとデリラ』より)のおすすめの名盤をレビューしていきましょう。
バレンボイム=パリ管弦楽団
バレンボイム=パリ管弦楽団は『サムソンとデリラ』を全曲録音しています。ここで紹介するのはバッカナールのみですが、気合の入った演奏でパリ管も燃えています。気まぐれで有名なバッカナールを録音した訳ではありません。
最初のオーボエのソロからクオリティが高い演奏です。また録音も良く、残響も適切に入っているので、聴いていて気分爽快な演奏です。ラストのテンポアップの仕方が上手く、凄く気合いが入っているのが分かります。とても楽しめる演奏です
バッカナールは7分で終わりですが、サン=サーンス交響曲第3番『オルガン付き』『死の舞踏』、いずれも名演ですので、これ一枚でサン=サーンスの代表的な音楽が楽しめる名盤です。
プレートル=パリオペラ座管弦楽団 (全曲)
プレートル=パリオペラ座の全曲盤です。昔から定番とされていた演奏です。プレートルらしい機転の利いた演奏で、昔ながらのフランスの雰囲気に溢れています。
『バッカナール』は一番の名演です。最後にアッチェランドする前から色々な表現が出てきて、このシンプルな音楽で良くこれだけの表現が出てくるな、と感心します。テンポは速めでリズミカル、聴いていて楽しい演奏です。『バッカナール』だけとってもこの演奏がダントツでお薦めです。
その後に続くオペラも、舞台の雰囲気が良く伝わってきて、迫力もあるし、プレートルの表現力は映像なしでもこの長いオペラを飽きさせずに聴かせてくれます。
バーンスタイン=ニューヨーク・フィル (1967年)
アリアのCD
マリア・カラスのフランス物のアリア集です。伴奏はプレートル=フランス国立管弦楽団です。若干録音に古さを感じるものの、カラスの圧倒的で豊かな声量はしっかり録音されています。伴奏は色彩感があり、フランス的な演奏です。
オペラDVD
歌劇『サムソンとデリラ』のオペラのDVD、ブルーレイをレビューします。
レヴァイン=メトロポリタン歌劇場 (1998年,日本語字幕)
舞台装置に凝ったグランド・オペラとくればメトロポリタン歌劇場は外せません。演奏もレヴァインとメトロポリタン歌劇場管弦楽団なので、レヴェルが高いです。ただメトは劇場が大きいためか、体の大きな歌手が多いですね。もちろん、歌唱は値段も手ごろなので初めて見る方にはお薦めです。
英国ロイヤル・オペラ (1981年,日本語字幕)
少し古いですが、コリン・ディヴィスが指揮している貴重な上演です。日本語字幕もあります。コリン・ディヴィスは1998年に全曲盤を録音している位で、このオペラに対して思い入れがあります。
フランダースとはベルギーの地方です。ちょうどフランスとドイツの間で、フランスの影響が強いですね。2009年の新しい映像で、画質も音質も良いです。ただ日本語字幕がないため、よくあらすじや対訳本を読んでみたほうが良いです。英語字幕があるので、英語がスラスラ読める人は大丈夫です。ただし、オペラの英語は日常会話とは違い、宗教用語などが多いので、ある程度英語が読めても最初のうちは分からない単語が沢山出てきます。
CD,MP3をさらに探す
楽譜
サン=サーンス作曲のバッカナール(『サムソンとデリラ』より)の楽譜・スコアを挙げていきます。
ミニチュア・スコア
No.230 サンサーンス バッカナール (Kleine Partitur)
レビュー数:5個,残り2点