画家マティス(ヒンデミット)

パウル・ヒンデミット (Paul Hindemith,1895-1963)作曲の交響曲『画家マチス』(Symphony Mathis der Maler)について、解説おすすめの名盤レビューをしていきます。またスコアの紹介もします。

交響曲『画家マチス』は、ヒンデミットの作品の中でももっとも有名で、人気のある作品です。非常に美しく透明さがあり、第3楽章の迫力は尋常ではありません。オーケストラファンから吹奏楽ファンまで色々な層から愛される曲です。

ヒンデミットの作品の中では、もっとも親しみやすい部類の曲です。作曲当時はナチスドイツに理解されず批判的な曲とされ、いわゆる「ヒンデミット事件」を巻き起こし、ヒンデミットがアメリカに亡命する原因になってしまいます。

解説

交響曲『画家マチス』(1934年)は、ドイツとフランスの国境付近で、現在フランスのコルマール美術館に展示されているマチス・グリューネヴァルト(1480~1528)の「イーゼンハイムの祭壇画」にインスパイアされて生まれた作品です。もともとは、コルマールの近くにあるイーゼンハイムの聖アントニウス会修道院付属の施療院のために描かれました。

「イーゼンハイムの祭壇画」は、1511年~1515年に制作された、ドイツ美術史でもっとも重要な作品の一つです。グリューネヴァルトは、ドイツ・ルネサンス美術の時代の画家ですが、作風は末期ゴシックの画家と位置付けられます。

1933年ごろ、この題材でオペラを作曲していて、交響曲は構想にありませんでした。


ブロムシュテットによるPromsでの演奏

指揮者のフルトヴェングラーはヒンデミットに交響曲の作曲を依頼しました。フルトヴェングラーは当時ナチスによって弾圧されていたヒンデミットを擁護しようとしたのです。

そこでヒンデミットは、すでに作成した素材を集め、3楽章からなる交響曲を書きあげました。1934年にフルトヴェングラー指揮ベルリンフィルハーモニー管弦楽団で初演され、大成功を収めました。

しかし、ヒンデミットの名誉回復には至らず、結局ヒンデミットはスイス経由で亡命することになります。フルトヴェングラーが初演時に宰相のゲッペルスと握手するシーンは有名な逸話ですね。

交響曲「画家マティス」の構成

第1楽章 天使の合唱:穏やかに、運動的に
第2楽章 埋葬:非常にゆっくりと
第3楽章 聖アントニウスの誘惑:非常にゆっくりと、自由なテンポで

おすすめの名盤レビュー

それでは、ヒンデミット作曲画家マティス名盤をレビューしていきます。

名演奏が多く、アバド、ブロムシュテット、サロネンなど多くの指揮者が名盤を残しています。また、作曲者の自作自演などもあり、これも名演です。

アバド=ベルリン・フィル

透明な美しさと第3楽章の凄い迫力
  • 名盤
  • 定番
  • スリリング
  • 迫力
  • 高音質

超おすすめ:

指揮クラウディオ・アバド
演奏ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

1995年2月,ベルリン,フィルハーモニー(ステレオ/デジタル/セッション)

Mathis De Maler – Symphony
在庫情報:残り1点 レビュー数:20個

アバドとベルリンフィルの相性の良い点がよく出た演奏です。アバドは速めのテンポで、リズミカルに曲を運びつつも、ベルリンフィルから少し硬質な音を引き出して、第1楽章に相応しい緊張感と透明度の高い演奏を繰り広げています。非常に味わいもあるし、リズムも良いし、この曲が持っている少し宗教的な緊張感まで表現しています。

第3楽章ではアバドは絶好調で、まるで本当に大天使が下りてきて地上世界を?き乱すかのような、本当に大聖堂の宗教画のような迫力を全力で表現しています。ここでのベルリンフィルの弦楽器の緻密で大迫力のアンサンブルには度肝を抜かれます。凄いインスピレーションで、こんな凄い演奏はアバド=ベルリンフィルといえども、なかなか無いですよ。

しかし、これを聴くとやはり作曲当時の状況というのも伝わってくる気がします。まるで大天使が地上の人間をもてあそぶ様に、天から降りてきてかき回している感じです。折しも第2次世界大戦中で、戦況は拡大していくときに作曲されたわけですから。ヒンデミットはユダヤ人ではありませんが、友人たちが収容所送りになったりもしている状況なのです。

カラヤン=ベルリン・フィル (1960年)

ダイナミックで力強く重厚な名盤
  • 名盤
  • 定番
  • 重厚
  • 迫力

超おすすめ:

指揮ヘルベルト・フォン・カラヤン
演奏ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

1960年11月,ベルリン,グリューネヴァルト教会(ステレオ/アナログ/セッション)

カラヤン=ベルリン・フィルの重厚でドイツ的な演奏です。1960年録音と少し古いですが、ドイツ的な重厚さを持った演奏は意外に少なく、貴重な演奏だと思います。

第1楽章はしっかりした土台があってそこに高音楽器を積み重ねたドイツ的な音楽づくりです。第2楽章は1960年録音なのに響きの艶やかさを感じる美しい演奏です。特にフルートの高音域は絶品です。第3楽章ド迫力で聴き物です。アバドのスリリングさとは違ったドイツ的な重厚な迫力です。おそらく1960年代後半あたり重厚さが最盛期の演奏だったら、他の大幅にCDを引き離した超名盤になっただろうと想像します。

カラヤンの真摯な演奏は、ヒンデミットの作品が持っているシニカルで皮肉っぽい面がほぼ感じられませんが、『画家マティス』に関していえば、それが良い方向に出ています。カラヤンは20世紀の音楽は得意なので、もっとヒンデミットを録音してほしかったですね。

サヴァリッシュ=フィラデルフィア管弦楽団

オケの色彩感とサヴァリッシュの重厚感の絶妙なブレンド
  • 名盤
  • 円熟
  • 色彩的
  • ダイナミック

超おすすめ:

指揮ヴォルフガング・サヴァリッシュ
演奏フィラデルフィア管弦楽団

1994年

サヴァリッシュはフィラデルフィア管弦楽団の音楽監督をやっていた時期がありました。その時は、ドイツ系の指揮者がアメリカの楽団でもてはやされ、ニューヨークフィルもマズアをシェフとして迎えていました。サヴァリッシュ=フィラデルフィア管弦楽団のディスクの中でも、もっとも素晴らしい部類で、十分すぎるほど名盤と呼べると思います。

フィラデルフィア管弦楽団色彩的でゴージャスなサウンドを出していて、昔のオーマンディ時代以前に戻ったような雰囲気です。その中に円熟期のサヴァリッシュは重厚さを植え込んでいます。ドイツのオケのような響きも交じり、こんなオーケストラのサウンドを聴くのは初めてです。ダイナミックなところはフィラデルフィア管弦楽団の特徴が出て、ドイツの重厚さが加わっているので、立体感のある油絵のようです。

第2楽章は厚みのある演奏です。第3楽章は最初から既にダイナミックです。「画家マティス」の名盤なら聴くことができる「神の手」がこの演奏にもありますね。

ブロムシュテット=サンフランシスコ交響楽団

  • 名盤
  • 定番
  • 洗練
  • ダイナミック

おすすめ度:

指揮ヘルベルト・ブロムシュテット
演奏サンフランシスコ交響楽団

ヒンデミット:交響曲「画家マティス」他
在庫情報:残り1点 レビュー数:5個

Hindemith: Orchestral Works
在庫情報:レビュー数:9個

ブロムシュテットはインテンポで真摯にスタンダードなアプローチでこの曲と対峙しています。

サンフランシスコ交響楽団ですから、非常に透明なサウンドで、少し色彩的な演奏を楽しめます。時折現れる不協和音は、他の演奏に比べるとあまり強調しておらず、その点聴きやすい演奏ともいえますね。でも、第1楽章は非常に綺麗ですし、第3楽章の迫力もかなりのものです。オーケストラのレヴェルが高いので、各パートの対位法的な動きが良く聴こえますし、それぞれのパートも理想的といえるくらい上手いです。

サロネン=ロスアンジェルス・フィル

  • 名盤
  • 知的
  • しなやか
  • 精緻

おすすめ度:

指揮エサ=ペッカ・サロネン
演奏ロスアンジェルス・フィルハーモニック

1999,2000年,ロスアンジェルス

ヒンデミット作品集
在庫情報:レビュー数:2個

Hindemith: Metamorphosen
在庫情報:レビュー数:1個

非常に丁寧にまとめてあります。ただ、この曲が持つ迫力はそれほど出ていない、というより、あまりサロネンはそういった点をあまり重視していないようです。サロネンらしい、さわやかで、しなやかなサウンドの中で、ロスアンジェルス・フィルの優秀な木管・金管楽器が丁寧に自分のパートを吹き、ところどころに出てくる絡み合いや対位法的な動き、和音などを大事に演奏していると思います。

各楽器の音がとても綺麗に録音されていて、緊張感はあまり高くありませんが、曲の作りが明瞭に伝わってきます。サロネンは作曲家になりたいということですが、なるほどクオリティの高いディスクを録音したな、と思います。迫力とは無縁ですが、聴いた後に結構充実感が残るという意味でもクオリティの高い名盤ですね。

ヒンデミット=ベルリン・フィル

ダイナミックでリアリティ溢れる名盤
  • 名盤
  • 歴史的名盤
  • ダイナミック

おすすめ度:

指揮パウル・ヒンデミット
演奏ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

1950年代

Hindemith Conducts Hindemith
在庫情報:レビュー数:25個

ヒンデミットは指揮者としての才能がかなりあり、ベルリン・フィルをきちんと振って自作を多く録音しています。その内容も素晴らしいもので、録音が古いこと以外は不満はないくらいです。

『画家マティス』は、アバドに比べるとシャープさに欠けますし、録音が古いので透明感もありませんが、それでも十分優れた演奏です。それにヒンデミットのやりたい表現をしているわけで、やはり自作自演は聴いておくべきだと思います。

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