フランツ・フォン・スッペ (Franz von Suppe,1819-1895)作曲の詩人と農夫 (詩人と農夫)について、解説とおすすめの名盤レビューをしていきます。最後に楽譜・スコアも挙げてあります。
『詩人と農夫』は、有名で親しみやすいメロディで人気です。オーケストラでも演奏されますが、吹奏楽で良く演奏されます。このページでは『詩人と農夫』について解説した後、お薦めの名盤をレビューしていきます。
解説
『詩人と農夫』を解説します。
フランツ・フォン・スッペは、ウィーンで活躍した作曲家で、「ウィンナ・オペレッタの父」と言われます。いまでも一部の作品はウィーン・フォルクスオーパーなどで、上演されているのだとか。
オペレッタ『詩人と農夫』は、1846年8月24日にアン・デア・ウィーン劇場で初演された、3幕のオペレッタです。しかし、楽譜は失われ、筋書きは忘れ去られてしまった、と言われています。ですが、ネットを探していたところ、一つだけ大まかな、あらすじを見つけました。
オーストリアの田舎を舞台としたストーリーです。
行方不明になっていた農夫が、実はブダペストで売れっ子の詩人になっていました。
それがもとで色々な騒動を巻き起こします。
このあらすじの情報源は不明ですが、コンサートのプログラムなので、きっと本当でしょう。詳細は忘れられたのかも知れません。
この序曲は歴史的にずっと親しまれており、いまでもまだ親しまれています。吹奏楽などでもよく演奏されます。
リッカルド・ムーティが指揮した2021年のニュー・イヤー・コンサートで『詩人と農夫』が取り上げられました。ムーティは円熟してきた感じで、イタリアオペラのような演奏だったと思います。テンポは遅く、チェロのソロは明るいカンタービレでシチリアーナのように聴こえました。なかなかの名演でした。本場オーストリアのスウィトナー盤とは少し違いますが、新しい録音なので楽しみですね。1月27日発売です。
おすすめの名盤レビュー
スッペの『詩人と農夫』序曲の名盤をレビューしていきます。有名な曲だと思うのですが、どうも最近はスッペの人気は落ちてきているのか、CDが意外に少ないですね。
スウィトナー=ドレスデン・シュターツカペレ
スウィトナーとドレスデン・シュターツカペレの録音です。「詩人と農夫」はオーストリアの田舎の雰囲気を持った曲です。特にチェロのソロはキャッチーなメロディで有名ですね。スウィトナーは素朴な演奏を繰り広げています。この曲の場合、ちょっと音質が気になりますが、まあ古い録音なのです。劇場で演奏されそうな、このスウィトナーの演奏はやはり基本だなと思います。
中古でもCDで買うならこれが一番良い演奏だと思います。MP3でもダウンロードできます。
バーンスタイン=ニューヨーク・フィル
バーンスタイン=ニューヨークフィルの1963年の演奏です。このディスクのロッシーニは高い評価を受けています。スッペのほうもなかなかの好演です。
『詩人と農夫』では、素朴に始まり、チェロのソロもレヴェルが高く、聴きごたえがあります。その後、テンポが速くなるとかなりスリリングでダイナミックですが、スッペのウィンナ・オペレッタの雰囲気を壊すようなダイナミックさではなく、素朴で爽快な演奏です。
1963年としては音質も良く、木管の素朴な音色を良く捕えています。3拍子の部分も小気味良いリズムで進み、最後はアッチェランドしてスリリングに終わります。
バーンスタインが振ると重厚さのある名門ニューヨーク・フィルハーモニックも軽快で小気味良い演奏をするのですよね。自然さがあって、名盤だと思います。
パレー=デトロイト交響楽団
同じスッペと言っても、結構多彩です。『詩人と農夫』はもっとも素朴さや田舎の雰囲気が大事だと思います。
パレーは『詩人と農夫』と相性が良いようで、速めの軽快なテンポで素朴さもある演奏を繰り広げています。長い重要なチェロのソロがある訳ですが、チェロのレヴェルは高く、味のある歌い方をしています。速いテンポの個所は、かなりスリリングな速さです。また、弦楽セクションの響きに味があって、雰囲気を楽しめる演奏です。
ネーメ・ヤルヴィ=スコティッシュ・ナショナル管
ネーメ・ヤルヴィとスコティッシュ・ナショナル管の録音です。ネーメ・ヤルヴィは、『詩人と農夫』のような民族的な音楽を得意としています。出身はバルト3国のエストニアですが、どの国の民族音楽でもなかなか良い雰囲気で演奏しています。
このディスクの『詩人と農夫』も落ち着いたテンポ取り、素朴でふくよかな響きで、特にチェロのソロは素晴らしい演奏です。ヨーロッパの田舎の民族的な響きが良く出ている名盤です。
メータ=ウィーン・フィル
メータとウィーン・フィルの録音です。テンポ取りは普通で、磨き上げられたウィーンフィルの音色はなかなかです。ダイナミックな部分はキビキビと演奏していますし、弱音の個所は透明感があってウィーン・フィルの美音を聴くことが出来ます。
いわゆる中庸の洗練された演奏であり、スウィトナー盤のような特別な名盤ではないですが、ウィーンフィルの響きを活かしたスタンダードな演奏です。また、このディスクの良い所は、あまり有名ではないスッペの序曲が入っていて、そちらが名演で楽しめることです。
カラヤン=ベルリン・フィル
カラヤンも「詩人と農夫」は「軽騎兵」のような爆演とはいかなかったようです。とはいえ、スケールの大きな演奏ではあります。弦楽セクションの厚みは凄いものがあります。ただ『詩人と農夫』のようなウィンナ・オペレッタに合うかと言われると、なんとも言い難いですけど。レヴェルの高い演奏であることは事実です。
カラヤンのテンポ取りなどを聴くに、『詩人と農夫』がウィンナ・オペレッタの序曲であることは理解していると思います。カラヤンは地元オーストリア人ですから。ですが、ベルリンフィルには意図的にドイツ的なダイナミックな響きで演奏させていると思います。あとは、聞き手の好みの問題でしょうか。
デュトワとモントリオール交響楽団の録音です。フランス物を得意とするこの組み合わせは、いかにもオーストリア音楽に合わなそうな組み合わせですが、実際聴いてみた感じ「詩人と農夫」はなかなかです。オーケストラの響きや録音の音質は良く、デュトワはまじめに譜面通りに演奏するので、納得して聴ける場合も多いです。
このアルバムはスッペの序曲が多く含まれていて、選曲が大変良いですね。
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楽譜・スコア
スッペの『詩人と農夫』序曲の楽譜やスコアを紹介します。
ミニチュア・スコア
No.236 スッペ 「詩人と農夫」序曲 (Kleine Partitur)
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