カール・ニールセン (Carl Nielsen,1865-1931)作曲の交響曲第4番 『不滅』 (Symphony No.4)について、解説とおすすめの名盤レビューをしていきます。
解説
ニールセンの交響曲第4番について解説します。
作曲までの経緯
カール・ニールセンの交響曲第4番「不滅」は第一次世界大戦中の1914年~1916年に作曲されました。同年の1916年にコペンハーゲンにて初演されています。
戦争交響曲
ヨーロッパで凄惨をきわめた第1次世界大戦中に書かれた交響曲ですから、テーマは戦争になっています。次の交響曲第5番も戦争交響曲と解釈する演奏家はいますし、交響曲第6番「素朴な交響曲」も戦争に関係あるのではないかと考えられます。
副題の「不滅」はデンマーク語で「Det Uudslukkeligge」で、日本語では「滅ぼし得ざるもの」という意味になります。非常に強い意思を感じる副題です。ニールセンはこの曲のことを「音楽は生命で、そしてそれに似て『滅ぼし得ざるもの』である。この交響曲は、偉大な芸術のみならず、人間の魂までもが『滅ぼし得ざるもの』であることを強調すべく意図されたものである」と述べています。
また、この交響曲は単一楽章から出来ています。実際には4つの部分に分かれていますが、すべて繋げて演奏されるため、ニールセンは単一楽章としたようです。楽章間で休みを入れずに一気に演奏することを意図しているようです。
また、ティンパニを2セット使用することも特徴です。ティンパニを2セット使用する曲って他にないのではないでしょうか?3セット以上はヤナーチェクの「グラゴル・ミサ」(原典版)などで、ありますけど。
2セットのティンパニは、大抵両翼に配置され、最終楽章でバトルを繰り広げます。
ニールセンで一番人気
交響曲第4番「不滅」は、カール・ニールセンの交響曲の中で、一番人気のある交響曲です。筆者的には交響曲第5番が一番お気に入りですけれど。
そのため、ディスクも沢山でています。特にカラヤンが取り上げていて、ベルリンフィルであることもあって、かなりの名盤です。また、他にも交響曲第4番「不滅」のみを取り上げる演奏家も多いですね。
おすすめの名盤レビュー
それでは、ニールセン作曲交響曲第4番の名盤をレビューしていきましょう。
ブロムシュテット=サンフランシスコ交響楽団
ブロムシュテットとサンフランシスコ交響楽団は、速めのテンポと透明感のある響きで、フレッシュな演奏です。録音の音質も非常によく、程よい残響もあって絶妙です。
木管のソロも素晴らしく、弱音の所も美しい響きです。全体的にテンポは速めで、小気味良く演奏されています。
ダイナミックに盛り上がる所は、しっかり盛りあがり、ティンパニの乱打もド迫力です。
ブロムシュテット=サンフランシスコ交響楽団の全集の中でも出色の出来ですね。
パーヴォ・ヤルヴィ=フランクフルト放送交響楽団
パーヴォ・ヤルヴィとフランクフルト放送響の録音です。パーヴォ・ヤルヴィらしい上手く整理された演奏です。録音の良さも効果的です。でも、この交響曲第4番「不滅」の場合は、少しカオスなところが面白いようにも思います。「不滅」ってカオスでなんだか掴みどころがないなぁ、と感じている方には、非常に良い演奏と言えます。
いままでこれだけ知的にまとめ上げた演奏はなかったかも知れませんね。残響が適度なので、響きが交じり合ってカオスになってしまうことはありません。
もっとも単に知的で大人しい演奏という訳では全くなく、金管やパーカッションの迫力はさすがフランクフルト放送交響楽団です。第4部の盛り上がりはなかなかのものです。
ベルグルンド=デンマーク王立管弦楽団
カラヤン=ベルリン・フィル
カラヤンとベルリン・フィルが録音しています。カラヤンは近代音楽が得意です。またベルリンフィルは高度な技術を持っているため、このコンビの場合、しっかり演奏するだけでも、かなりの名演になります。
冒頭から厚みのある弦楽器が曲を支え、響きが曖昧になりすぎず、上手く整理されて聴こえます。初めてこの曲を聴く方は、複雑さと響きが交錯する所が分かりにくいと思いますが、カラヤン盤はこの辺りとても上手くまとめています。響きが交錯する所が面白みでもあるため、あまり整理し過ぎると面白みもなくなってしまいます。この点、カラヤンは上手いですね。
ベルリン・フィルの響きを活かして、遅めのテンポでスケールの大きなサウンドを生み出しています。ベルリン・フィルのパワーも凄いですね。最後のティンパニの連打も凄い迫力です。ニールセンでこれだけレヴェルの高いオケが演奏することはあまり無いので貴重です。
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楽譜・スコア
ニールセン作曲の交響曲第4番の楽譜・スコアを挙げていきます。