ミハイル・グリンカ (Mikhail Grinka,1804-1857)作曲の歌劇『ルスランとリュドミラ』 (Ruslan and Lyudmila)について、解説とおすすめの名盤レビューをしていきます。最後に楽譜・スコアも挙げてあります。
解説
グリンカの歌劇『ルスランとリュドミラ』について解説します。
グリンカはチャイコフスキーやロシア5人組のボロディン、ムソルグスキーらの先輩にあたる作曲家です。「近代ロシア音楽の父」と呼ばれています。チャイコフスキーの伝記によれば、グリンカのオペラを興味深く観たことが記されています。上流階級の貴族たちは西ヨーロッパのオペラを観ていて、ロシア国内のオペラには興味がなかったようです。しかし、チャイコフスキーは熱心に見入っていたとのことです。グリンカは主にロシアの大衆から支持を得ていました。
グリンカは歌劇を2作残しています。一つ目は歌劇『皇帝に捧げた命(イワン・スサーニン)』です。そして2作目がこの歌劇『ルスランとリュドミラ』です。
作曲の経緯
歌劇『ルスランとリュドミラ』は、ロシアの詩人アレクサンドル・プーシキンが著した「ルスランとリュドミラ」を基にしています。当初はプーシキンに台本を依頼する予定でしたが、ケガで亡くなったため、グリンカとその仲間5人でロシア語で台本を作成することになりました。
メルヘン・オペラ
幻想的なシーンもあり、バレエも元々組み込まれているなど、舞台セットや衣装もゴージャスなオペラです。「メルヘン・オペラ」とも言われます。そして上演時間は3時間10分と少し規模の大きいオペラです。このファンタジー溢れるオペラは、後のリムスキー=コルサコフのオペラに大きな影響を与えました。
手短ですが、あらすじを書いておきます。
魔法使いに新妻のリュドミラをさらわれた騎士ルスランが、いろいろな問題を解決してリュドミラを取り戻すという物語です。最後は結婚式のシーンでゴージャスンに幕となりますが、ゲルギエフ=マリインスキー劇場の上演では、ここでも序曲の音楽が使われています。
初演と評価
初演は1842年12月9日に、サクンクトペテルブルクでカルル・アリブレヒトの指揮により行われました。しかし上演の質が低かったため、あまり評価されませんでした。
序曲の人気
現在『ルスランとリュドミラ』といえば、その軽快でダイナミックな序曲が有名です。実は初演のリハーサル中に書き上げた曲とのことです。5分程度の序曲ですが、ムラヴィンスキーはじめ、多くの演奏家に取り上げられ、今でも高い人気を誇っています。吹奏楽でも演奏されるようです。かなり難しいと思いますけどね。
オペラの上演
オペラの方は、長い間上演されていませんでしたが、ゲルギエフとマリインスキー劇場がやってくれました!ゴージャスなセットや衣装を使った歴史的な上演です。やはり長いと感じますが、十二分に素晴らしい上演です。ファンタジー溢れる物語なので、楽しめるシーンも多いです。海外盤のみですがDVDで入手できます。
おすすめの名盤レビュー
それでは、グリンカ作曲歌劇『ルスランとリュドミラ』の名盤をレビューしていきましょう。
ゲルギエフ=マリインスキー劇場 (オペラDVD)
ゲルギエフとマリインスキー劇場の素晴らしい上演です。リュドミラ役でアンナ・ネトレープコも出演しており、素晴らしい歌唱力です。ただ日本語版が無く、日本語字幕はないため、英語字幕で見ることになると思います。
舞台はゴージャスで特に最後の大団円は素晴らしいです。あらすじを知っていれば映像で十分楽しめます。2枚組ですが、飽きる様なら2枚目の大団円から見るといいですね。
演奏はゲルギエフ=マリインスキー劇場が物凄く気合いが入っています。なんといってもチャイコフスキーや国民楽派の作曲家が子供の頃に見た、ロシア音楽の源流といってもいいオペラです。しかも内容はかなりハイレヴェルで、編曲なしで今の劇場で上演できる位です。
ダイナミックなのはムラヴィンスキーが演奏した序曲だけ、と思っていましたが、オペラも十分ロシア的でダイナミックなんですね。演奏も凄いですけれど。
ムラヴィンスキー=レニングラード・フィル(序曲のみ)
ムラヴィンスキーの『ルスランとリュドミラ』序曲は、物凄いテンポで昔からの定番です。いくつか録音がありますが、絶対聴いておくべき超名演です。上にYouTubeを貼ってあるので、音質を気にしない方はどうぞ。CDでも録音によって大分音質が変わりますけれど。
アンセルメ=スイス・ロマンド管(序曲のみ)
ムラヴィンスキーは速すぎて、本当にこのテンポなのか、と思う人が多いと思います。多分、速すぎだと思いますが、オペラを観る限り、大団円で使われているので、おそらくゆっくり演奏するのも違うと思います。
アンセルメは中庸なテンポで、ロシア的な力強さもあるので、信頼できると思います。スタンダードというに相応しい演奏内容です。録音もアンセルメのCDとしては良い録音で、音質が気になることは多分無いと思います。
プレトニョフ=ロシア・ナショナル管(序曲のみ)
プレトニョフ=ロシア・ナショナル管弦楽団の演奏です。新しめの録音で音質も十分良いです。テンポはスタンダードですが、結構弦セクションのキレが良くアンセルメとはまた違った名演です。
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楽譜・スコア
グリンカ作曲の歌劇『ルスランとリュドミラ』の楽譜・スコアを挙げていきます。