交響的絵画『ポーギーとベス』 (ガーシュイン)

ジョージ・ガーシュウィン (George Gershwin,1898-1937)作曲の交響的絵画『ポーギーとベス』 (A Symphonic pucture ”Porgy & Bess”)について、解説おすすめの名盤レビューをしていきます。ワンストップでスコアと楽譜まで紹介します。

解説

ガーシュイン交響的絵画『ポーギーとベス』について解説します。

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作曲の経緯

1935年に作曲した3幕のオペラです。当時はまだミュージカルは一般的ではなく、オペラとして作曲されました。しかし、様式的にはミュージカルに近いスタイルとなっています。

アメリカの小説家エドワード・デュボーズ・ヘイワード小説『ポーギー』を書きまいした。そして、妻のドロシーの協力を得て1927年に舞台化しました。ガーシュインヘイワードの協力も得て、この『ポーギー』のオペラ化を行いますが、黒人音楽を研究するなど、かなり時間をかけて作曲されました。上演時間は全て上演すると3時間かかります。

初演は1935年9月30日にボストンのコロニアル劇場で行われました。ただ評判は芳しくありませんでした。同1935年10月10日にニューヨークのブロードウェイで短縮版が上演され、これが成功を収めます。その後、連続公演が行われました。1937年に38歳でガーシュインは没したため、晩年の大作といえます。

サマータイムが有名

やはり圧倒的に有名なのは「サマータイム」です。これだけ抜粋されて歌唱されることも多いです。またジャズの音楽として単独で演奏されます。しかし、他にも良い音楽が多く、アメリカの黒人音楽、ジャズの要素を多く含んでいます。

ポーギーとベスの様々な編曲

歌劇『ポーギーとベス』は非常な傑作で、随所に美しいメロディや親しみやすい音楽が登場します。これらを組曲にしようとする動きがありました。以下の2つがまとまっていますが、他にもジャズバンド向けの編曲が多く存在します。

キャットフィッシュ・ロウ組曲

ガーシュイン自身が1936年「キャットフィッシュ・ロウ」組曲 (Suite from Porgy and Bess “Catfish Row”)と名付けた組曲を編曲しています。これは5曲ですが、演奏時間は25分前後で、選曲や構成も優れています。キャットフィッシュは「なまず」のことで、「キャットフィッシュ・ロウ」で「なまず横丁」となります。連続して演奏され、メドレーのようになっています。

「キャットフィッシュ・ロウ」組曲

第1曲:キャットフィッシュ・ロウ (Catfish Row)
第2曲:ポーギー・シングス (Porgy Sings)
第3曲:フーガ (Fugue)
第4曲:ハリケーン (Hurricane)
第5曲:おはよう、ブラザー (Good Mornin’ Sistuh)

交響的絵画『ポギーとベス』

当時、ピッツバーグ交響楽団の指揮者だったフリッツ・ライナーの委嘱を受け、ロバート・ラッセル・ベネット(Robert Russell Bennett)1942年に編曲したものです。(吹奏楽版も存在しますが、内容は違うものです。)最終的には交響的絵画演奏時間27分程度で、一番よく演奏されています。組曲よりも親しみやすい曲が多く。小気味良くまとまった編曲となっています。

おすすめの名盤レビュー

それでは、ガーシュイン作曲交響的絵画『ポーギーとベス』名盤をレビューしていきましょう。ただし、他の編曲で近いCDも入っています。

デュトワ=モントリオール交響楽団

水を得た魚のように生き生きと演奏するモントリオール響
  • 名盤
  • 定番
  • 色彩感
  • 高音質

超おすすめ:

指揮シャルル・デュトワ
演奏モントリオール交響楽団

1988年 (ステレオ/デジタル/セッション)

デュトワとモントリオール交響楽団はガーシュインで非常に良い演奏をしています。この交響的絵画『ポーギーとベス』は、色々演奏がある中でも最もクオリティが高く、シンフォニックな演奏で、スタンダードになる存在です。

まず、このコンビの特徴ですが、録音が非常によく、残響も適度です。全体的にモントリオール響のしなやかで上手いソロが素晴らしいです。リズム感も非常に良いです。地元アメリカ大陸の音楽であるガーシュインはとても合っていて、フランス音楽よりも素晴らしい位です。組曲キャットフィッシュ・ロウに当たる速いテンポの部分がとてもスリリングです。そのままサマータイムに入りますが、少しクールですが、各楽器のソロが素晴らしいです。組曲ハリケーンにあたる音楽の演奏も素晴らしいです。ドラムセットなども入りますが、ポップスやジャズにはならず、あくまでシンフォニックでクラシック的な演奏です。ラストのメロディもとても有名ですが、モントリオール響の弦のサウンドが素晴らしいです。

目下廃盤ですが、中古CDまたはアマゾン・ミュージックで聴くことが出来ます。

小澤征爾=ベルリン・フィル (1983年)

小澤征爾屈指の名演奏、高音質でシンフォニックな名盤
  • 名盤
  • 定番
  • 透明感
  • 色彩感
  • 高音質

超おすすめ:

指揮小澤征爾
演奏ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

1983年6月 (ステレオ/デジタル/セッション)

小澤征爾は交響的絵画ではなく、「キャットフィッシュ・ロウ」組曲を演奏しています。ピアノソロアメリカの民族楽器バンジョーなども入っています。音質も非常に良いです。演奏はベルリン・フィルですがドイツのオケとは思えないガーシュインとの相性の良さです。シンフォニックな演奏ですが、小澤氏のCDの中でも屈指の出来栄えだと思います。

第1曲「キャットフィッシュ・ロウ」の冒頭は少し遅めのテンポで正確にアンサンブルしています。こういう演奏はあまり無いので、新鮮です。次に出てくるピアノはクラシックらしいピアノ演奏です。音質が非常に良いので、各パートがリアルに聴こえてきます。ヴァイオリンが非常に美しくサマータイムを弾いています。夏の暑さを感じるサマータイムで、伴奏も含めて精緻な演奏で、ガーシュインのオーケストレーションの工夫が良く聴こえてきます第2曲「ポーギー・シングス」はまずバンジョーの響きが良いです。次の弦のメロディはベルリン・フィルの透明感のある響きが心地よいです。第3曲「フーガ」はモダンな響きになりがちですが、アメリカ音楽としてまとめられています。第4曲「ハリケーン」は、弦の音色が美しく不安げな感じを良く出しています。嵐が盛り上がってきても派手になりすぎず、各パートの音階の動きがきれいに聴き取れます第5曲「おはよう」は朝のさわやかさを楽しく表現しています。リズミカルですが、この演奏では透明感や色彩感を失うことはありません。派手に演奏しがちなパーカッションの分散和音も場面に相応しい、しなやかさです。ラストは速めの颯爽としたテンポで、しなやかさのある、さわやかな演奏です。

カップリングは、ラプソディ・イン・ブルーですが、クラシックの巨匠ワイセンベルクがピアノを担当して話題になった演奏です。

レヴァイン=シカゴ交響楽団 (1983年)

  • 名盤
  • 定番
  • 透明感
  • 高音質

おすすめ度:

指揮ジェームズ・レヴァイン
演奏シカゴ交響楽団

1990年7月,シカゴ,オーケストラ・ホール (ステレオ/デジタル/セッション)

レヴァインとシカゴ交響楽団交響的絵画ではなく、キャットフィッシュ・ロウ組曲を録音しています。

第1曲は、シカゴ響のドライな響きでアメリカらしく、シンフォニックでスリリングな演奏です。その後、サマータイムに入りますが、遅めのテンポで熱さを感じさせる雰囲気の良く出た演奏です。第2曲「ポーギー・シングス」はダンジョーの響きがリズミカルで楽しめます。その後、歌のフレーズが現れますが、熱く歌っています。第3曲「フーガ」は激しい演奏で、さすがシカゴ響です。第4曲「ハリケーン」は、とても色彩的な描写で、明るい演奏になっています。第5曲「おはよう」は、キレの良いリズムの曲が続きます。ラストの有名なメロディは、少し遅めですね。デュトワ盤のほうがセンス良く演奏していると思います。

ドラティ=デトロイト交響楽団

  • 名盤
  • 定番

おすすめ度:

指揮アンタル・ドラティ
演奏デトロイト交響楽団

1982年 (ステレオ/デジタル/セッション)

ドラティとデトロイト交響楽団の演奏です。デュトワ盤が出るまでは定番だったと思います。今聴いてもしっかりとした演奏です。職人的ともいわれるドラティらしい演奏ですね。録音もしっかりしていて、残響も適切です。

冒頭の静かな部分も良く聴きとれ、各パートがしっかりアンサンブルしています。決して不自然なテンポにせず、テンポを速めることもなく、じっくり聴かせてくれますテンポの速い部分はブリリアントに聴かせてくれます。サマータイムの表現もとても上手く、テンポが遅くなりすぎたり、必要以上に湿っぽくなることもありません夏の雰囲気も良く出ています。バンジョーが出てくる音楽もリズミカルで上手いです。響きも色彩的です。後半はテンポが速すぎることは無く、しっかりした演奏です。ラストの有名なメロディも丁度良いテンポでとてもさわやかな感じです。

ライナー=ピッツバーグ交響楽団 (1945年)

溌剌としてメリハリのある名盤、サマータイムの表現は秀逸
  • 歴史的名盤
  • 情熱的
  • ダイナミック
  • モノラル

おすすめ度:

指揮フリッツ・ライナー
演奏ピッツバーグ交響楽団

1945年 (モノラル/アナログ/セッション)

ライナーとピッツバーグ交響楽団の演奏です。交響的絵画は前記したようにライナーの委嘱によって編曲されたものです。これによって『ポーギーとベス』の美しいメロディをオペラを観ない世界中の人たちに知らしめることになりました。日本でも吹奏楽で取り上げられたり、若い人にも大分浸透したと思います。

1945年録音のモノラルです。無論、昔の録音のため、少し音場が狭い感じはします。ただオケは上手くライナーの表現も、ポップス風な所はなく、真摯にクラシックとして演奏しています。冒頭はサックスのソロがいいですね。組曲の第1曲の冒頭にあたる部分は凄い速さで演奏しています。サマータイムに入りますが、夏の暑さを感じる、とてもいい雰囲気で、このページのCDの中でも特に素晴らしい演奏です。リズム感もアメリカらしくて、とても良いです。嵐の場面も派手に演奏しています。テンポ設定は編曲者とのベネットとも話をしていると思います。後半は色々なモチーフが現れ、溌剌としています。ポルタメントのつけ方がジャズ風でいいですね。ラストの有名な部分もさわやかです。

さすが交響的絵画『ポギーとベス』を委嘱した本人だけあって、とても良く練られた演奏で、『ポギーとベス』特にテンポが遅い部分の雰囲気作りは素晴らしいです。元々、ピッツバーグ交響楽団の記念でリリースされたCDなので、この曲だけで良い場合はアマゾン・ミュージックでストリーミングかMP3を購入するのがいいです。

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楽譜・スコア

ガーシュイン作曲の交響的絵画『ポーギーとベス』の楽譜・スコアを挙げていきます。

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