ジョージ・ガーシュウィン (George Gershwin,1898-1937)作曲の『パリのアメリカ人』 (An American in Paris)について、解説とおすすめの名盤レビューをしていきます。
解説
ガーシュインの『パリのアメリカ人』について解説します。
『パリのアメリカ人』は特に作品番号も何もついていませんが、ジャンルは「交響詩」です。
ニューヨーク・フィルハーモニックの委嘱を受けて作曲され、1928年に初演されました。初演は1928年12月13日、ニューヨークのカーネギーホールにおいてウォルター・ダムロッシュ指揮、ニューヨーク・フィルハーモニックによって行われました。
ガーシュインが1920年代に過ごしたパリの活気に触発されて作曲されたもので、『パリのアメリカ人』とは、つまりガーシュイン自身のことです。既にニューヨークに摩天楼が立ち並んでいた1920年代のアメリカが、そんなに田舎だったようには思えないのですが、文化的には、まだまだ差が大きかったんでしょうね。
ガーシュインの初稿の後に、フランク・キャンベル=ワトソンによって改訂されています。現在では改訂版が演奏されます。オーケストラ編成は大きく、特にサックスと打楽器が特殊です。
木管:
アルト・サックス、テナー・サックス、バリトン・サックス
打楽器:
グロッケンシュピール,シロフォン
スネアドラム,タムタム×2,バスドラム,トライアングル,シンバル,ウッドブロック
チェレスタ
タクシーのクラクション(4種類)
タクシーのクラクションは、初演に合わせてガーシュイン自身がパリから持ってきた物、とのことです。シトロエンのクラクションなどなら、今聞いたら味がありそうですね。
ミュージカル映画 (1951年)
1951年公開のミュージカル映画『パリのアメリカ人』があります。第24回アカデミー賞で6部門で受賞しています。日本では1970年代以降に吹替で上映されたり、TV放送されています。
舞台はパリです。アメリカ人の画家とフランス人女性の恋を描く物語です。 (要約しすぎ?)
音楽は全てガーシュインの曲が使われています。「アイ・ガット・リズム」、「ス・ワンダフル」、ピアノ協奏曲「ヘ調の協奏曲」、そして『パリのアメリカ人』も使われています。
バレエ『パリのアメリカ人』
2005年はクリストファー・ウィールドンの振付によるバレエ版『パリのアメリカ人』が上演されています。ガーシュインとの関係はよく分かりませんでした。日本語のページが無いうえに、自動翻訳したところ、余計に意味が分からなかったという訳です。
大まかに把握できたところでは、、最初は1951年のミュージカルのリメイクを行う予定でクリストファー・ウィールドンに依頼したところ、それだと面白くないのでバレエにして自分で振付を行った、ということみたいです。(適当ですみません。)
ミュージカル『パリのアメリカ人』(2014)
2005年のバレエ版を素材にして、2014年にパリ・シャトレ座がミュージカル版「An American in Paris」を制作・上演しました。2015年3月にはブロードウェイ公演も成功させています。
これをベースとしたミュージカルが劇団四季で2019年1月から上演されています。(現在上演中!)
このミュージカルもアメリカ人とフランス人の恋愛を描いています。
アメリカ人の退役軍人がバレエ団を支援し、バレエ『パリのアメリカ人』の上演を成功させるという内容で、クリストファー・ウィールドンの演出・振付となっています。
ガーシュインとの関係は良く分からないのですが、劇団四季のページを見ると、音楽はガーシュインと書いてあります。
おすすめの名盤レビュー
それでは、ガーシュイン作曲パリのアメリカ人の名盤をレビューして感想を書いていきたいと思います。
レヴァイン=シカゴ交響楽団
レヴァインは、バーンスタインに比べるとダイナミックで、演奏もシカゴ交響楽団ですから、相当筋肉質な演奏です。アメリカ的な音楽を目指すというより、クラシック音楽として割と真面目に取り組んでいます。レヴァインの場合、もともとメトロポリタン歌劇場の指揮者なので、細かく見るより、インテンポでしっかり演奏しています。その辺りはトスカニーニに似ています。
録音は非常によく、シカゴ交響楽団の重厚でダイナミックなサウンドが良く聴けます。ジャズ的なところも、真面目ですがしっかり演奏していて、上手いです。ちょっと重すぎるような気もしますが、『ラプソディー・インブルー』の方はかなりの名演でした。
トスカニーニの『パリのアメリカ人』は、凄い名演です。普通のクラシック音楽のように、軽快なテンポで飛ばしていきます。トランペットのミュートなんて小技は気にしていません。ガーシュインの才能の本質を見抜いて、それを演奏しているんだと思います。『パリのアメリカ人』はアメリカのみならず、世界で見ても十分面白い管弦楽曲なんです。
ちなみにカップリングのグローフェも爆演で、「日の出」はまさにグランドキャニオンのダイナミックな朝です。トスカニーニがグランドキャニオンに実際に訪れたかは分かりませんが、この演奏を聴くと本当にグランドキャニオンにいるようなリアリティです。さらにスーザは1942年とちょうど日本と戦争中に録音されているので、物凄い爆演です。これを聴くとさすがに敵わないな、と思ってしまいます。
バーンスタインのガーシュインは、スタンダートといっていい演奏です。『パリのアメリカ人』は少し録音が古く、アメリカらしさを出そうとしてコミカルに演奏しています。これが普通の演奏です。でも、トスカニーニ盤のほうが本質は突いてます。これは否定できない事実ですね。
デュトワ=モントリオール交響楽団
フランスのエスプリを強調しているデュトワ=モントリオール交響楽団ですが、やはりアメリカ大陸のオーケストラであることを再認識させられる名盤です。
上手さと言い、録音の良さと言い、文句のつけようがありません。深みに欠けるので、『パリのアメリカ人』はトスカニーニに比べると面白みに欠けますが、リズム感の良さはヨーロッパのオケとは比較にならず、トータルとして決定盤の一つと言えます。
演奏のDVD
『パリのアメリカ人』の演奏のDVDをレビューします。
小澤征爾=ベルリン・フィル
ワルトビューネのアメリカン・ナイトです。指揮は小澤征爾です。小澤氏がジャズやアメリカ音楽が得意なのかは良くわかりませんが、ジャズが好きで良くピアノを弾いていた、という話は残っています。
小澤氏の友人である3人のジャズプレイヤーが共演していることが魅力的です。
1.パリのアメリカ人(管弦楽)
2.ラプソディ・イン・ブルー(共演,編曲:マーカスロバーツ)
3.ピアノ協奏曲ヘ調(共演、編曲:マーカスロバーツ)
4.コール・アフター・ミッドナイト(ピアノトリオ、作曲:マーカスロバーツ)
5.ストライク・アップ・ザ・バンド(管弦楽、編曲:D.ロース)
6.アイ・ガット・リズム(ピアノトリオ)
現在、廃盤ですが、中古でも状態が良ければ仕方ないですね。もう一つの方法として、ベルリンフィルの「デジタルコンサートホール」に入ると過去のワルトビューネを高いクオリティで見ることができます。
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楽譜
ガーシュイン作曲の『パリのアメリカ人』の楽譜・スコアを挙げていきます。
ミニチュア・スコア
An American in Paris
レビュー数:10個
ガーシュイン: パリのアメリカ人/アルフレッド社/中型スコア
レビュー数:1個