ジョージ・ガーシュウィン (George Gershwin,1898-1937)作曲のラプソディ・イン・ブルー (Rhapsody in Blue)について、解説とおすすめの名盤レビューをしていきます。最後に楽譜・スコアも挙げてあります。
解説
ガーシュインのラプソディ・イン・ブルーについて解説します。
作曲の経緯
作曲のきっかけは、ポール・ホワイトマンの提案です。しかし、ガーシュインは仕事で多忙でした。ところがガーシュインが引き受ける前に、ホワイトマンはガーシュインに作曲を依頼したことを新聞に発表してしまいます。ガーシュインは抗議しましたが、
新聞記事になってしまったから作曲してくれ
とホワイトマンに押し切られ、結局作曲することになります。
グローフェによるオーケストレーション
ガーシュインはまだオーケストラ曲の作曲の経験が少ない状況でした。そこで『大渓谷(グランド・キャニオンン)』で有名なグローフェがオーケストレーションすることになりました。グローフェは当時ホワイトマン楽団のピアニスト兼編曲者でした。
ガーシュインは2台のピアノを想定して作曲し、それをグローフェがオーケストレーションする、という形で作曲が進みました。最初はピアノと小規模のジャズバンド向けの作品として1924年に完成しました。初演はニューヨークで「新しい音楽の試み」というコンサートで行われ、成功しました。
オーケストラ版の編曲
グローフェにより、伴奏をオーケストラとした編曲が行われ、1926年オーケストラ稿と呼ばれています。さらに1938年オーケストラ稿としてピアノパートもオーケストレーションし、ピアノなしでも演奏できるヴァージョンを編曲しています。
最終的には1926年オーケストラ稿を元に、フランク・キャンベル=ワトソンが改訂したヴァージョンが作成され、1942年オーケストラ稿と呼ばれています。現在、演奏されるのはこのバージョンです。
曲の名称
もともと『アメリカ狂詩曲』という名前でした。ジャズをアメリカの民族音楽とみなして、ジャズの技法を使用したこの曲を『アメリカ狂詩曲』と名付けたのでした。兄の提案で、ジャズの語法を用いた音楽を意味する『ラプソディ・イン・ブルー』となりました。
おすすめの名盤レビュー
それでは、ガーシュイン作曲ラプソディ・イン・ブルーの名盤をレビューしていきましょう。
ジェームズ・レヴァイン=シカゴ交響楽団
レヴァインがシカゴ交響楽団を振り弾きした演奏です。まず録音はとても良くピアノもオケも透明感がある高音質です。
冒頭のクラからシカゴ響の管楽器のレヴェルの高さを感じます。オケの伴奏は軽快でかなりのテンポの速さです。演奏はクオリティが非常に高く、細かい遊びの部分も完璧に演奏していて、聴いていてスッキリします。アッチェランドも凄く速くなり、とてもスリリングです。レヴァインのピアノはウェットな所はなく、透明感があり軽快です。なかなか超絶技巧でダイナミックです。
バーンスタイン=コロンビア交響楽団
バーンスタインがコロンビア交響楽団を振り弾きした1959年の録音です。当時としては非常に良好な録音です。若いころのバーンスタインの機転の利いたセンスの良い演奏が聴けます。上に貼った1976年の演奏とは全く違ったテンポの速めの演奏です。
ピアノが良く入っていて、このCDはバーンスタインのピアノを聴くCDだな、と思います。個性もあるしリズム感も凄いし、表現の振幅がとても大きいので、確かに自然に主役になってしまう感じですね。しかし、コロンビア交響楽団はソロも上手く、ダイナミックさもあります。色々ユニークな演奏をしていて、他のCDでは聴こえない音が聴こえたりします。たまたま録音の関係でそうなったのかも知れませんが、色々な音が克明に録音されていて楽しめます。終盤はピアノもオケもダイナミックに盛り上がります。
プレヴィン=ロンドン交響楽団
若いプレヴィンがロンドン交響楽団を振り弾きしています。冒頭のロンドン響のクラリネットがセンスいいですね。プレヴィンのピアノも圧倒的なテクニックとアメリカを感じさせるセンスがあるし、ロンドン交響楽団はノリノリです。結構、伴奏から煽ったりして、プレヴィンと丁々発止の演奏を展開しています。ミュートなどの小技も上手く、まるでアメリカのオケのようです。
プレヴィン=ピッツバーグ交響楽団
プレヴィン2度目の録音は、アメリカのピッツバーグ交響楽団を振り弾きしたものです。まず、録音の音質が大きく改善されています。
演奏の方は、ピアノが良く聴こえて、オケのソロも上手く綺麗に聴こえるので、ロンドン響との旧盤とは大分イメージが違います。プレヴィンもピッツバーグ交響楽団もアメリカなので、ジャズに対するセンスもいいです。ピアノは細かい所が良く聴こえて色彩的です。プレヴィンのピアノはスリリングで上手さは旧盤以上だと思います。伴奏のオケはあまりプレヴィンのサポートが中心で、旧盤のように丁々発止とは言えないですね。これが普通の演奏ですけれど、好みの問題だと思います。
Pfマツーエフ,ギルバード=ニューヨーク・フィル (2017年)
マツーエフのピアノ独奏、アラン・ギルバートとニューヨーク・フィルの伴奏による演奏です。
「人間業とは思えない無尽蔵に湧き出るエネルギー、圧倒的なヴィルトゥオジティ、そしてダイナミック・レンジの幅広さで知られる、ロシアのピアノの巨人、デニス・マツーエフ」と紹介されている通り、マツーエフはダイナミックに華麗に弾きこなしています。アメリカ音楽の代表とも言えるガーシュインを、ロシア人マツーエフが弾いたこのディスクは、イギリス、アメリカ系のピアニストとは一味違った魅力を引き出しています。
デュトワ=モントリオール交響楽団
高音質で適度に色彩的な響きを出しています。オケのほうは、しっかりまとまっていてレヴェルが高いです。
ルイ・ロルティは、ジャズのピアニストです。しっかりした演奏ですが音量が小さめです。ピアノが主役ですけど押され気味な感じもします。ピアノ・ソロのセクションになると色彩感のあるリズミカルで精妙な表現を聴かせてくれます。ジャズに詳しくないですけれど、所々ジャズらしいな、と感じる部分もあります。オケはピアノとのアンサンブルも完璧で、有名な主題が弦楽器に現れる時の響きは素晴らしいです。ダイナミックさもあり、やはりモントリオール交響楽団はアメリカ大陸のオーケストラなんだな、と感じます。
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小澤征爾=ベルリン・フィル
小澤征爾はアメリカ音楽やジャズも得意で、マーカス・ロバーツ・トリオとの共演です。この映像はジャズ好きの方からも高く評価されています。
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楽譜・スコア
ガーシュイン作曲のラプソディ・イン・ブルーの楽譜・スコアを挙げていきます。
電子スコア
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