弦楽セレナーデ (エルガー)

エドワード・エルガー (Edward Elgar,1857-1934)作曲の弦楽セレナーデ Op. (String Serenade Op.20)について、解説おすすめの名盤レビューをしていきます。ワンストップでスコアと楽譜まで紹介します。

エルガー弦楽セレナーデは、チャイコフスキードヴォルザークに比べるとマイナーかも知れませんが、非常に美しいメロディが多くエルガーらしいロマン派の名曲です。

解説

エルガー弦楽セレナーデについて解説します。

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作曲と初演

1892年に作曲した弦楽アンサンブルのための作品です。妻キャロライン・アリスに、3回目の結婚記念日のプレゼントとして贈られました。エルガーは1898年に作曲した『エニグマ変奏曲』が出世作で、それよりも前のまだ無名の時期の作品です。

初演第2楽章のみが1893年4月7日にヘリフォードで行われ、全曲の初演はベルギーのアントウェルペンで1896年7月23日に行われました。

曲の構成

エルガーの弦楽セレナーデは、3楽章構成で、演奏時間13分程度の小品です。

弦楽セレナーデ

第1楽章:アレグロ・ピアチェヴォーレ
イギリスの民族的なリズムとロマンティックなメロディを持つ曲です。至る所にソロパートが現れます。

第2楽章:ラルゲット

緩徐楽章です。ロマンティックなメロディで、夜想曲風に盛り上がります。

第3楽章:アレグレット

6/8拍子系で、民族舞曲のようですが、メロディはとてもロマンティックです。

おすすめの名盤レビュー

それでは、エルガー作曲弦楽セレナーデ名盤をレビューしていきましょう。色々な演奏がありますが、室内オーケストラの弦楽セクションで演奏される場合が多いです。また、かなりロマンティックな作品ではありますが、イギリス的な素材を使用しているため、イギリスの演奏家が多いですね。

ボールト=ロンドン・フィル

洗練されたイギリスのコクのある響き

超おすすめ:

指揮サー・エードリアン・ボールト
演奏ロンドン・フィルハーモニック

(ステレオ/アナログ/セッション)

ボールトとロンドン・フィルの演奏です。さすが、イギリス音楽を深く理解しているボールトは、自然体でロマンティックになりすぎず、夜想曲などしっかり盛り上げて、聴きごたえの演奏です。

第1楽章はリズミカルで、紳士的というべきか感情を入れ過ぎず、コクのあるロンドン・フィルの弦を活かした演奏です。第2楽章はコクがある響きと大編成のスケールで盛り上げています。ここできちんと夜想曲になっていて甘美さも同時に表現されているのは凄いですね。絶妙なバランスです。第3楽章はリズミカルでロンドン・フィルの低弦の味のある響きを活かした演奏です。

甘美になりすぎないので、自然に良さが伝わってくる名盤です。

ペトレンコ=ロイヤル・リヴァプール・フィル

イギリス的に洗練された色彩豊かな名盤

超おすすめ:

指揮ヴァシリー・ペトレンコ
演奏ロイヤル・リヴァプール・フィルハーモニー管弦楽団

(ステレオ/デジタル/セッション)

ペトレンコとロイヤル・リヴァプール・フィルの演奏です。色彩的な演奏が多いこのコンビですが、このエルガーではイギリス的な風味を響かせています。新しい録音で音質も良いため、ロマンティックに盛り上がる所も透明感があり、甘美になりすぎず、自然に聴ける演奏となっています。

第1楽章はリズミカルで、このコンビからこんなイギリス風の響きが出てくるとは考えていませんでした。アンサンブルのクオリティも高く、良い演奏です。第2楽章は遅めのテンポで透明感のある弦楽器の響きが美しく、上手く盛り上げて、ロマンティックな演奏ですが、甘美になりすぎすことはない絶妙なバランスです第3楽章はリズミカルで色彩的な演奏です。この楽章に限らずですが、スコアの読みが深く、表情豊かで色々な表現が出てきます。

ヒューズ=カメラータ・ウェールズ

イギリスの田舎の舞曲を感じさせる名盤

おすすめ度:

指揮オーワイン・アーウェル・ヒューズ
演奏カメラータ・ウェールズ

(ステレオ/デジタル/セッション)

ヒューズとカメラータ・ウェールズによる演奏です。ウェールズはイングランドとは別の地域になり、スコットランドほどではありませんが、独自の文化を持つ地域です。

第1楽章はリズムがしっかりしています。弦楽の響きはイギリスの田舎であるウェールズの民族的な響きです。ロマンティックな演奏ですが、民族的な味わいもあります。後半の感情的な盛り上がりが良いですね。第2楽章ボリュームある弦セクションの音色が味わい深いです。次第に夜想曲風に盛り上がります。強弱のメリハリもはっきりしていて民族的な要素も強い演奏です。第3楽章は、民族的な濃厚さがあります。所々に出てくるソロも味わい深さがあります。

カップリングのホルストなどもそうですが、ウェールズの響きを活かした演奏です。

シノポリ=フィルハーモニア管弦楽団

洗練された透明な響きとロマンティックさがある名盤

おすすめ度:

指揮ジュゼッペ・シノポリ
演奏フィルハーモニア管弦楽団

1989年8月 (ステレオ/デジタル/セッション)

シノポリとフィルハーモニア管弦楽団の演奏です。大編成の弦楽アンサンブルの演奏で、透明感がある響きが美しいです。

第1楽章はリズミカルさよりもロマンティックさを優先した透明感のある響きです。非常に感傷的で繊細な表現です。好みが分かれそうですが、こういう演奏もアリだと思います。第2楽章弦の響きが美しく甘美です。大編成なのでスケールの大きな透明な響きの中で、とても居心地が良いです。第3楽章はリズミカルですが、大編成の弦の響きは弾力があり、弦楽の響きの波の中にいる感じです。

カップリングの『エニグマ変奏曲』などは名演なので、ちょっと甘美すぎるかな?というのが率直な感想です。ただ、大編成でこれだけ透明感のある演奏はこの曲では珍しいと思うので、聴いてみると新しい発見があると思います。

イ・ムジチ合奏団

自然体のふくよかな響き

おすすめ度:

演奏イ・ムジチ合奏団

1985年 (ステレオ/デジタル/セッション)

『四季』で有名な、イ・ムジチの演奏です。指揮者のいないアンサンブルなので、スコアの指示通りに演奏したうえで、表情をつけている感じです。ロマンティックさはありますが、思ったほどでもありません。同じイタリアでもシノーポリの演奏とは大分違いますね。

第1楽章リズミカルで、インテンポです。ふくよかな響きで、特別ロマンティックに演奏しようという感じではなく、自然な響きです。部分的にロマンティックな響きになっていますけれど。第2楽章も同じ方向性で、各メンバーがふくよかに響かせ、段々自然に盛り上がっていき、その結果、夜想曲らしい音楽になっています。第3楽章はリズミカルで中低音の響きに味わいがあります。

しっかり音を出しているので、各パートの動きもよく分かりますし、アマチュアが演奏するときには参考になりそうな録音です。

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楽譜・スコア

エルガー作曲の弦楽セレナーデの楽譜・スコアを挙げていきます。

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スコア

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