エルガー チェロ協奏曲 名盤レビュー

エドワード・エルガー (Edward Elgar,1857-1934)作曲のチェロ協奏曲 ホ短調 Op.85 (cello concerto e-moll Op.85)について、解説おすすめの名盤レビューをしていきます。第1楽章は結構映画などで使用され、有名な主題が入っています。

解説

エルガーチェロ協奏曲について解説します。

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作曲の経緯

チェロ協奏曲の作曲に取り掛かったとされているのが、1918年3月のスケッチです。エルガーは病気で手術を受け、さらにヨーロッパに大きなダメージを与えた第1次世界大戦の衝撃もあって、作曲は進みませんでした。しかし、6月ごろから作曲を再開し、1918年8月に完成しました。

初演

初演は1919年10月27日にロンドンのクィーンズ・ホールにて、フェリックス・サルモンドをチェロ独奏、エルガー自身の指揮によりロンドン交響楽団によって行われました。サルモンドはエルガーの弦楽四重奏曲、ピアノ五重奏曲の初演にも参加しており、エルガーの信頼を得ていました。ちなみに、この時、ロンドン交響楽団にはバルビローリがチェロ奏者として参加していたそうです。

しかし、同じ演奏会で他のプログラムを指揮したアルバート・コーツがエルガーの分までリハーサルの時間を使ってしまったため、チェロ協奏曲にリハーサルに十分な時間を取ることが出来ませんでした。待ち時間にエルガーは珍しく怒りを爆発させた位です。そして初演での評価は散々なものでした。

オーケストラは惨めな姿を大衆にさらした

音楽評論家:アーネスト・ニューマン

しかし、チェロ独奏のサルモンドが十分な準備をして初演に臨んでいました。

気を取り直したエルガーは、デビューしたばかりで高く評価していたビアトリス・ハリスン(1892~1965年)のチェロ独奏に起用して1921年に再演を行い、成功に終わっています。エルガーはその後もハリスンを高く評価し、エルガーの指揮したチェロ協奏曲の録音にもハリスンを起用しています。

デュプレにより世界で人気に

前述のビアトリス・ハリスンによって、忘れ去られる所だったエルガーのチェロ協奏曲は何度か再演されました。エルガー自身の指揮で演奏したほか、ヘンリー・ウッドの指揮による演奏も大きな成功を収めています。

ジャクリーヌ・デュプレ(1945~1987年)はイギリス人のチェロ奏者ですが、16歳でデビューし、このエルガーのチェロ協奏曲も演奏し、衝撃的なデビューを果たしました。その後、BBCプロムスにも常連として参加し、エルガーのチェロ協奏曲を演奏しています。これにより、イギリス国内だけでなく、世界的にエルガーのチェロ協奏曲の人気を高めました。

録音でも、初演に参加したバルビローリの指揮とロンドン交響楽団を伴奏に迎えたディスクが今でも一番人気です。これはこの後名盤レビューで詳しく紹介します。他にも夫のバレンボイムの指揮によるディスクがあります。

曲の構成

4楽章構成であり、演奏時間は約30分です。第1楽章と第2楽章は続けて演奏されます。

第1楽章:アダージョ~モデラート

自由なソナタ形式です。冒頭はチェロ独奏のカデンツァです。この主題は全曲で大事な主題となります。

第2楽章:レント~アレグロ・モルト

実質的にスケルツォ楽章です。チェロ独奏のスピッカートが印象的です。

第3楽章:アダージョ

緩徐楽章です。歌曲形式を持った楽章です。

第4楽章:アレグロ~モデラート~カデンツァ~アレグロ・マ・ノン・トロッポ

前半はロンド形式です。後半は第1楽章、第3楽章の回想がはいります。

編成

独奏チェロ
フルート×2(ピッコロ持替×1)、オーボエ×2、クラリネット×2、ファゴット×2
ホルン×4、トランペット×2、トロンボーン×3、チューバ
ティンパニ
弦五部

おすすめの名盤レビュー

それでは、エルガー作曲チェロ協奏曲名盤をレビューしていきましょう。

チェロ:デュ・プレ, バルビローリ=ロンドン交響楽団

デュプレの完成度の高い表現とバルビローリのイギリス的なコクのある名盤!
  • 歴史的名盤
  • 定番
  • 表情豊か
  • 格調
  • スリリング

超おすすめ:

チェロジャクリーヌ・デュ・プレ
指揮ジョン・バルビローリ
演奏ロンドン交響楽団

1965年8月19日,ロンドン,キングズウェイ・ホール (ステレオ/アナログ/セッション)

アマゾンUnlimitedとは?

ジャクリーヌ・デュ・プレのチェロ独奏とバルビローリ=ロンドン交響楽団の演奏による録音です。伝説のチェリスト、デュ・プレは、エルガーのチェロ協奏曲を得意としていて、いくつか録音が残されていますが、このバルビローリとの演奏は丁々発止で素晴らしいです。録音は非常によく、リマスタリングのおかげもあって予想以上の高音質です。

第1楽章デュプレの情熱的、というよりワイルドと言ったほうがいい位、力強いチェロで始まります。バルビローリとロンドン交響楽団の伴奏も充実していて、エルガーの威風堂々の名演を残しているバルビローリらしく力強くスケールの大きな演奏を繰り広げています。ロンドン響は力強く、有名なメロディも壮大です。中間の流麗なメロディもデュプレの情熱的で起伏の大きな演奏に圧倒されます。

第2楽章は力強いピチカートで始まり、鋭さのあるチェロです。情熱的に盛り上がりアレグロになるとスリリングな超絶技巧を聴かせてくれます。第3楽章はおだやかでふくよかなチェロの響きで、ゆったりとしたテンポで朗々と歌っています。伴奏はクレッシェンドがあると情熱的に盛り上がりますが、しみじみとした演奏で味わい深いです。

第4楽章バルビローリらしい堂々とした演奏で始まります。チェロもスケールが大きく、情熱的に歌います。テンポは中庸ですが、バルビローリのエルガーらしい格調があり、コクがある響きが味わい深いです。チェロは表現の幅がとても大きく、演奏し慣れていて堂に入った表現で楽しませてくれます。

数あるデュプレの名盤の中でも圧倒的な表現力で、曲としても完成度も非常に高い名盤です。デュプレの本当の凄さを知りたいなら、聴いておくべき名盤ですね。

チェロ:ガベッタ, ヴェンツァーゴ⁼デンマーク国立交響楽団

ガベッタの振幅の大きな表現力と実力派オケの充実した名盤
  • 名盤
  • 定番
  • 艶やか
  • 表情豊か
  • 高音質

超おすすめ:

チェロソル・ガベッタ
指揮ヴェンツァーゴ
演奏デンマーク国立交響楽団

2009年11月9日-12日,コペンハーゲン,コンサートハウスDRベヤン (ステレオ/デジタル/セッション)

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ソル・ガベッタのチェロ独奏とヴェンツァーゴ⁼デンマーク国立交響楽団の録音です。ソル・ガベッタはまだ若いチェリストですが高い技巧や表現力で21世紀を担うチェリストと言われています。2009年の録音で音質も良いです。

第1楽章チェロはとても情熱的で表情豊かな演奏です。高音質なためもあり、古めの録音では隠れてしまうような細かい動きまで良く聴きとれます。第2楽章は聴き物です。チェロの細かい動きの超絶技巧は素晴らしく、ここまで正確に演奏できるのはガベッタだけかも知れません。

第3楽章自然で振幅の大きな歌いまわしで、情熱的であると共に美しさのある演奏です。感情表現を最前面に持ってくるのではなく、自然体の演奏で曲の良さを自ずと引き出しています。第4楽章は速めのテンポのオケで始まります。チェロは情熱的でダイナミックな表現です。オケもリズミカルでデンマーク国立響の実力の高さがチェロをしっかり支えています。チェロは表情豊かで様々なフレーズに良く合った表現を付けていき、テンポも自在に変化させています。

ソル・ガベッタの表現の幅広さが素晴らしく、伴奏も実力派で充実した名盤です。

チェロ:マイスキー,シノポリ=フィルハーモニア管弦楽団

流麗で繊細なチェロと情熱的な伴奏、クオリティの高い名盤
  • 名盤
  • 定番
  • しなやか
  • 軽快
  • スリリング
  • 高音質

おすすめ度:

チェロミッシャ・マイスキー
指揮ジュゼッペ・シノポリ
演奏フィルハーモニア管弦楽団

1990年,ロンドン,ワトフォード・タウン・ホール (ステレオ/デジタル/セッション)

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ミッシャ・マイスキーのチェロ独奏にシノポリとフィルハーモニア管弦楽団の組み合わせの録音です。音質は良好で安定しています。マイスキーとシノポリの組み合わせは、繊細な響きの中に感情的な熱気があり、盛り上がると白熱してきます。マイスキーの純度の高い音色もエルガーに相応しいです。

第1楽章艶やかな響きの中で、マイスキーは感情を強く入れ込んでいます。シノポリとフィルハーモニア管のサポートも、クオリティが高く情熱があり、オケのトゥッティではスケールが大きいです。とても有機的なアンサンブルで味わい深いです。第2楽章はマイスキーの軽快で情熱的な演奏で始まります。力強く小気味良いチェロにオケのシャープなアンサンブルがぴったりはまっていてクオリティが高いです。マイスキーの演奏はとても技巧的に安定していて感心してしまいます。

第3楽章はマイスキーは艶やかな音色で繊細に表現していきます。悲壮感のあるしみじみとした演奏です。第4楽章しなやかで情緒のあるチェロに始まり、シノポリのリズミカルで軽快な伴奏でスリリングに盛り上がります。技巧的な個所も安定しており、またシノポリ=フィルハーモニア管とのアンサンブルも見事で、とてもクオリティの高い演奏です。

エルガーのチェロ協奏曲は比較的古めの録音に名盤が多いですが、マイスキーとシノポリの本盤は高音質でチェロ独奏やアンサンブルのクオリティが高い名盤です。

チェロ:フルニエ, ウォーレンスタイン=ベルリン・フィル

チェロの格調高い音色とベルリン・フィルの快演
  • 名盤
  • 定番
  • 自然体
  • 格調
  • ダイナミック

おすすめ度:

チェロピエール・フルニエ
指揮アルフレッド・ウォーレンスタイン
演奏ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

1966年10月,ベルリン,イエス・キリスト教会 (ステレオ/デジタル/セッション)

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ピエール・フルニエのチェロ独奏にウォーレンスタインの指揮とベルリン・フィルの演奏による録音です。フルニエのコクがあって味わい深いチェロとベルリン・フィルのダイナミックな伴奏も聴き所です。音質は1966年のスタンダードです。

第1楽章フルニエの渋く格調のある音色が味わい深いです。特別に感情を入れ込みすぎず、曲の良さが自然に出ています。ベルリン・フィルはダイナミックで情熱的な演奏を聴かせており、聴いていて爽やかさがあります。第2楽章はチェロの超絶技巧とオケとのアンサンブルもキレがあって素晴らしいです。

第3楽章淡い悲壮感を持ったチェロが格調高く歌いこみます。味わい深く聴き入ることが出来ます。第4楽章速めのテンポでチェロは渋い音色のままスリリングな演奏です。バックのベルリン・フィルの演奏も素晴らしいです。

フルニエの演奏は格調高さと自然さがあり、味わい深いです。情熱的な演奏が多い曲ですが、フルニエの自然体の演奏はこの曲の持つ別の良さを際立たせた名盤です。カップリングのドヴォルザークのチェロ協奏曲も名演です。

チェロ:新倉瞳, 飯森範親=山形交響楽団

チェロの伸びやかで自然体の歌いまわし、山響の小気味良い伴奏
  • 名盤
  • 自然体
  • 艶やか
  • 高音質

おすすめ度:

チェロ新倉瞳
指揮飯森範親
演奏山形交響楽団

2015年5月8日~10日,山形テルサ,テルサホール (ステレオ/デジタル/セッション)

新倉瞳のチェロ独奏、伴奏は飯森範親と山形交響楽団の録音です。ジャケ買いしてしまいそうなディスクですが、内容も意外にしっかりしていて、十分名演です。録音は新しく高音質です。

第1楽章チェロの感情表現が素晴らしく、とても自然に幅広く歌っています山形交響楽団は地方オケですが、パワーはそこまで無いものの、飯森氏のタクトによって小気味良くまとまっています。第2楽章に入るとテンポは速めでチェロの超絶技巧が素晴らしいです。

第3楽章夜想曲のような歌いまわしで、ファンタジーを感じる位です。憂鬱な感情表現より、自然体で美しさのある演奏です。第4楽章チェロの軽快なリズムが印象的です。オケはキビキビとしていて、欧米のオケ並みとはいきませんが、センスの良い演奏を繰り広げています。チェロの音色は自然体で広がりがあり、じっくり聴いて楽しめる名演です。

チェロの自然体で伸び伸びした名演で、ジャケ買いしても損はない、なかなかの名盤です。

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演奏の映像(DVD,Blu-Ray,他)

チェロ:デュ・プレ, バルビローリ=ニュー・フィルハーモニー管弦楽団

チェロ:ワイラースタイン, バレンボイム=ベルリン・フィル

  • 名盤
  • 定番
  • 高画質

チェロアリサ・ワイラースタイン
指揮ダニエル・バレンボイム
演奏ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

2010年 (ステレオ/デジタル/ライヴ)

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楽譜・スコア

エルガー作曲のチェロ協奏曲の楽譜・スコアを挙げていきます。

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