コッペリア(ドリーブ)

レオ・ドリーブ (Leo Delibes,1836-1891)作曲のバレエ『コッペリア』 (Coppelia)について、解説おすすめの名盤レビューをしていきます。

『コッペリア』は、バレエ音楽の作曲家ドリーブで一番有名な作品です。もう一つ『シルヴィア』もありますが、こちらも人気作です。いずれも音楽を聴いても楽しいですし、バレエで観ても見所が多く、現在でも多くの劇場のレパートリーとなっています。

解説

ドリーブコッペリアについて解説します。

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台本:E,T.A.ホフマン「砂男」が原作

バレエ『コッペリア』の台本は、E,T.A.ホフマンの小説「砂男」を元に作成されました。この短編小説はバレエ『コッペリア』と違い、あまり楽しくはなく、ホラーに近いもののようです。興味のある方は読んでみてください。また、バレエ『くるみ割り人形』E,T.A.ホフマンの小説を元にしたバレエ作品です。

作曲と初演

1867年に作曲されました。初演は1870年5月25日パリ・オペラ座で行われました。パリ・オペラ座ってそんな昔からあるのですね。振付はアルテュール・サン・レオンが行いました。

アンセルメ=スイスロマンド管より

『コッペリア』のあらすじ

第2幕:ロイヤルバレエ(2000年)
バレエ『コッペリア』のあらすじ

■第1幕
ポーランドの農村にある、とある村の物語です。主人公で村の娘のスワニルダは、同じ村の青年フランツと恋仲です。その村には、コッペリウスという人形職人が住んでおり、気難しい独居老人で、村人から変人扱いされていました。

コッペリウスの家のバルコニーには、少女が座っていました。これがコッペリウスお気に入りのコッペリアという人形なのですが、フランツはこの少女の人形に恋をしてしまいます

まだ無邪気な娘のスワニルダは、その人形に興味を持ちます。好奇心から、スワニルダと数人の友人たちは、コッペリウスが出かけた日にコッペリウスの家に忍び込みます

■第2幕
中に入ってみると沢山のカラクリ人形があり、スワニルダと友人たちはからくり人形で遊びます。その後、コッペリアを見に行くとそれがカラクリ人形であることが分かりました。そこにコッペリウスが帰宅します。慌てたスワニルダと友人たちは、慌てて部屋の中に隠れますが、コッペリウスに見つかり、スワニルダ以外の娘たちは追い出されてしまいます。

ちょうどその時、フランツが窓から忍び込み、コッペリアに会おうととしますが、コッペリウスに見つかってしまいます。コッペリウスは秘伝の書を持っており、フランツから魂を抜いてコッペリアに生命を吹き込むことを思いつきます。

薬入りの飲み物でフランツを眠らせて、コッペリアを部屋に移動させ、秘伝の書を開いて早速生命を吹き込もうとします。しかし、実はコッペリアはスワニルダが衣服をはぎ取って、入れ替わっていました。人形のふりをしていたスワニルダですが、コッペリウスが怪しい書物を読んでいるのを見て、何をしようとしているのか悟ってしまいます。

コッペリウスが書物に従ってコッペリアに魂を吹き込むと、なんとコッペリアは動き始めます。最初はぎこちない動きですが、色々な術を掛けるに従い、だんだん人間らしくなっていきます。
ところが、ある所まで来るとコッペリア(=スワニルダ)はフランツに興味を持った振りをして、寝ているフランツを起こそうとします。コッペリウスが止めると、コッペリアは起こって人形たちに八つ当たりします。
という訳で、コッペリアは年頃の少女のようにどんどん我儘になっていきます。全然気が付かないコッペリウスは、美しいコッペリアに飾りを渡すと、見事な「マズルカ」を踊ります。これにはコッペリウス老人も大喜び!しかし、隙をついて、スワニルダはコッペリアの衣装を脱ぎ捨て、フランツと逃げ去ります。窓際には衣服を取られて壊れたコッペリアが横たわっていました。

■第3幕
村の祭りの日
、さまざまな踊りが繰り広げられます。スワニルダとフランツの結婚式なのですが、第3幕は物語とはあまり関係のない「ディヴェルティスマン(余興)」です。途中で怒ったコッペリウスも登場しますが、スワニルダとフランツの謝罪と村長のとりなしで、機嫌を直します。華麗な踊りと親しみやすく美しいドリーブの音楽が続きます。

見所はなんといっても第2幕です。人形に命が吹き込まれ段々と人間になっていく様子をバレエで表現しているからです。これによって、バレエ『コッペリア』は現在まで人気の演目なのです。

組曲版では、この部分は割愛されていて、やはりバレエのディスクを入手するのがいいと思います。組曲だとどうしてもコンパクトにまとまったディヴェルティスマンの曲が多く使われますね。

おすすめの名盤レビュー

それでは、ドリーブ作曲コッペリア名盤をレビューしていきましょう。

マリ=パリ・オペラ座管弦楽団(全曲盤)

スケールが大きく、劇場の雰囲気たっぷりの名盤
  • 名盤
  • 定番
  • スケール感
  • ダイナミック

超おすすめ:

指揮ジャン=バティスト・マリ
演奏パリ・オペラ座管弦楽団

1977年1月,パリ,サル・ワグラム(ステレオ/アナログ/セッション)

マリとパリ・オペラ座管弦楽団の全曲盤です。コッペリアは劇場で聴く音楽だと思います。親しみやすいメロディはCMやBGMなどでも使用されますが、オーケストラでコッペリアを聴くなら全曲盤がやはり良いです。ただ、舞台やストーリーを知らないと途中で飽きてしまうと思いますけど。別に通しで聴かなくても、気に入った曲だけ聴けばいいと思います。それでも全曲盤で劇場の演奏だとスケールが違うので、それまで組曲しか聴いていなかった人には、少し衝撃だと思います。コッペリアの音楽は意外にダイナミックに演奏しても大丈夫なのです。

さて、全曲盤で一番劇場の雰囲気が出ているのは、このパリ=パリ・オペラ座です。私も若いころこれを聴いたときには感動しました。前奏曲からスケールが大きく「これからバレエが始まる」というワクワク感に満たされています。弦のメロディもフランスらしく美しく出てきてダイナミックになっていきます。ワルツも独特の格調があります。そんな感じで、ティンパニもダイナミックに鳴らしますし、金管も力強く響かせています。

この演奏を聴いて、フランスのエスプリって何だろう?と考えなおしました。アンセルメやデュトワは綺麗すぎて透明度が高いですが、こういうダイナミックさはありません。ソロなどはとてもレヴェルが高いですが、少しこじんまりしています。これが本当のドリーヴの音楽だったのだろうか?と思います。フランス人のプレートルクリュイタンスには、透明感はあまりなく、意外とラテン系です。是非、一度聴いてほしい名盤です。

アンセルメ=スイス・ロマンド管

昔からの定番、小気味良くまとめた名盤
  • 名盤
  • 定番
  • 色彩感

おすすめ度:

指揮エルネスト・アンセルメ
演奏スイス・ロマンド管弦楽団

1957年1月,ジュネーヴ,ビクトリア・ホール

アンセルメはスイス出身の指揮者です。バレエ・リュスの指揮者を務め、ファリャの『三角帽子』の初演を行ったりして、バレエのリズムを極めています。バレエの演奏に一番大事なのはリズムですね。

ドリーブの『コッペリア』といえば、アンセルメが定番です。アンセルメは全曲録音もしているのですが、スイス・ロマンド管弦楽団は劇場のオケでは無いので、劇場のライヴ感はあまり感じられません。しかし、ソロが上手く、細かい所までスコアを読みこんでしっかりまとめられています。リズムも自然で各国の舞曲もきちんとしたリズムで演奏しています。少しですが、第2幕からの抜粋も収められているのは良いですね。

初めて『コッペリア』を聴く人は抜粋や組曲で十分です。まずは、アンセルメ盤を聴きこんで、それからバレエの映像を見るなり、全曲盤を聴くなりすれば、楽しみが増していくと思います。

カラヤン=ベルリン・フィル

  • 名盤
  • 定番

おすすめ度:

指揮ヘルベルト・フォン・カラヤン
演奏ベルリン・フィルはあーもにー管弦楽団

1961年4月,ベルリン,イエス・キリスト教会(ステレオ/アナログ/セッション)

カラヤンはキャリアも演奏を聴いてもバレエ指揮者とは言えないと思います。チャイコフスキーのバレエもリズム主体では無く、横のメロディを艶やかにする方向に行っていて、こういう演奏を「シンフォニックな演奏」という人もいます。ただ、バレエ音楽としては、やはりリズムが基本です。

しかしカラヤンは演出が上手いので、リズムが横に流れたり、アゴーギクを聴かせ過ぎていても、親しみやすいメロディはしっかり聴かせてくれます。ベルリン・フィルですからソロのレヴェルは言うに及ばずで、フルートなど超上手いです。所々で現れるカラヤン特有のレガートをどう見るかで、好き嫌いが分かれそうです。

またカラヤン盤は抜粋では無く、組曲を使っているため、何かの参考にするには良いと思います。カップリングはショパンのロマンティック・バレエ『レ・シルフィード』です。これも珍しい選曲で、貴重なCDだと思います。

バレエ版DVD

コッペリアはバレエ作品だけあって、バレエの映像を見ることで理解が深まります。もちろん、バレエ自体も面白いです。特にスワニルダが人形と入れ替わって、ロボット的な動きから徐々に人間的な動きになっていく場面は、このバレエの一番面白い場面で、ここを観ずにコッペリアは語れません。

ロイヤル・バレエ(2000年)

豪華なキャスト、華やかで親しみやすい舞台
  • 名盤
  • 定番

超おすすめ:

ロイヤル・バレエ

2000年2月,ロンドン,コヴェント・ガーデン王立歌劇場

2000年収録の舞台で、既にロイヤルバレエの新しいバージョンが出ているため、映像的に古いかも知れません。踊りや演出は、ロイヤルバレエらしい分かりやすく楽しめるもので、途中、笑いが起きたりしています。ライヴ感たっぷりの演奏も素晴らしいです。スワニルダ役リャーン・ベンジャミンですが、本来は吉田都が務めるはずだったので、残念です。しかし、そこはロイヤルバレエの懐の深さで、代役のリャーン・ベンジャミン第2幕(人形が徐々に人間の動きになっていくシーン)で素晴らしい踊りを披露しており、初めて見る人も楽しめると思います。華やかで親しみやすいのはロイヤルバレエのプロダクションの特徴で、迷ったらロイヤルバレエをお薦めします。

ロイヤル・バレエ(2019年)

ロイヤルバレエの最新版
  • 名盤
  • 定番

ロイヤル・バレエ

2019年11月29日,12月10日,コヴェントガーデン王立歌劇場

このBlueRayは画質も良くなっていて、非常にお薦めです。演奏も指揮がバリー・ワーズワースです。基本的には上の2000年上演と同じ演出で、豪華です。

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楽譜・スコア

ドリーブ作曲のコッペリアの楽譜・スコアを挙げていきます。

ミニチュアスコアとIMSLPどっちが得?

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