シューマン 交響曲第4番 Op.120

ロベルト・シューマン (Robert Schumann,1810-1856)作曲の交響曲 第4番 ニ短調 Op.120 (Symphony no.4 d-moll Op.120)について、解説おすすめの名盤レビューをしていきます。ワンストップでスコアと楽譜まで紹介します。

この曲は、20歳になった妻のクララ・シューマンへのプレゼントとして贈られました。内容的にも演奏時間(30分)的にも、最もシューマンらしく、かつ人気のある交響曲です。

解説

シューマン交響曲第4番について解説します。

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おすすめの名盤レビュー

それでは、シューマン作曲交響曲第4番名盤をレビューしていきましょう。

クーベリック=バイエルン放送交響楽団

シューマンの微妙な感情表現と味わい深さ
  • 名盤
  • 定番
  • ロマンティック
  • 熱演
  • ダイナミック

超おすすめ:

指揮ラファエル・クーベリック
演奏バイエルン放送交響楽団

1979年9月27日~30日,ミュンヘン,ヘルクレスザール(ステレオ/アナログ/セッション)

クーベリックはバイエルン放送交響楽団とも全集を残しています。こちらの方が録音時期が遅いため、落ち着いた演奏になっています。またバイエルン放送交響楽団とヘルクレスザールの深みのある音色が交響曲第4番には相応しいです。

第1楽章シューマンらしい曇りのあるオーケストレーションが素晴らしいです。主部はバイエルン放送交響楽団の重厚でありながら暖かみのある響きが味わい深いです。あまり金管を鳴らし過ぎず、中庸で繊細な響きです。第2楽章は歌謡的な旋律を良く歌わせていて素晴らしいです。第3楽章はリズミカルですが角が丸く、ふわっとした感じです。ドイツ的なふくよかな響きが味わい深いです。第4楽章速めのテンポでリズミカルです。バイエルン放送交響楽団としては軽快な響きを出していると思います。もちろんドイツのオケなので低音にしっかりとした土台を築いてオケの響きを作っていくのは変わりません。

全体的にベルリン・フィルとの全集よりも、味わい深さが増しています。それぞれに良さはありますけれど。この第4番の録音はクーベリックによる改訂が入っており、クライマックスで金管による補強がされているようです。

クーベリック=バイエルン放送交響楽団

  • 名盤
  • 定番
  • ロマンティック
  • 熱演
  • ダイナミック

超おすすめ:

指揮ラファエル・クーベリック
演奏バイエルン放送交響楽団

1977年,ミュンヘン,ヘルクレスザール(ステレオ/アナログ/ライヴ)

フルトヴェングラー=ベルリン・フィル (1953年)

感情的な表現だが、しなやかさもある名盤
  • 名盤
  • 共感
  • 自然
  • ダイナミック
  • モノラル

おすすめ度:

指揮ウィルヘルム・フルトヴェングラー
演奏ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

1953年5月,ベルリン,イエス・キリスト教会(モノラル/アナログ/セッション)

フルトヴェングラーシューマンは合いそうな気もしますが、この録音は第4番の金字塔と呼ばれる優れた演奏です。この第4番は非常にロマンティックな名演です。録音の古さもほとんど感じさせない名盤です。

第1楽章序奏から感情をしっかり入れていています。一方でクーベリックのような鋭さはなく、柔らかさもあります。主部に入ると弦のしっかりした響きにコクがあります。割と自由なテンポ取りと適度な感情表現で、じっくり聴かせてくれます。第2楽章は、感情を入れて主題を歌いこんでいます。ゆっくり目のテンポで、味わい深い表現です。第4楽章への移行部は壮大です。そして第4楽章主部速めのテンポでダイナミックに盛り上がります

フルトヴェングラーのセッション録音の中でも名演であり、録音状態も良いため、SACDなどの効果が良く出るCDです。

フルトヴェングラー=ルツェルン祝祭管弦楽団 (1953年)

ライヴならではの白熱した演奏
  • 名盤
  • 共感
  • ダイナミック
  • モノラル
  • ライヴ

超おすすめ:

指揮ウィルヘルム・フルトヴェングラー
演奏ルツェルン祝祭管弦楽団

1953年(モノラル/アナログ/ライヴ)

フルトヴェングラーがルツェルン祝祭管弦楽団を振った演奏で、ベルリンフィルと同年の1953年です。ライヴでモノラルなので、音質はダイナミクスが入り切っていない感じですが、ライヴだけに凄い気迫を感じますし、冒頭や大音量の個所を除き、そんなに悪い録音では無く、リアリティが凄いです。

第1楽章は、ダイナミックに始まり、情熱的に歌っています。主部に入ると円熟味を感じさせつつ、適度に感情を入れていますが、盛り上がりが凄い迫力なのがスタジオ録音盤と違う所です。第2楽章はしなやかで味わい深い表現です。奥の深さを感じさせます。第3楽章は遅めのテンポでダイナミックかつ情熱的です。中間部はしなやかで味わい深い表現です。第4楽章への導入は物凄いことになっています。これは圧倒されるので聴いてみてください。主部は速めのテンポでダイナミックです。

素晴らしい演奏ですが、録音は粗さもあるので、初心者にはお薦めできませんフルトヴェングラー好きには超おすすめです。

カラヤン=ウィーン・フィル (1987年)

  • 名盤
  • 共感
  • ダイナミック
  • ライヴ

超おすすめ:

指揮ヘルベルト・フォン・カラヤン
演奏ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

1987年5月24日 (ステレオ/デジタル/ライヴ)

カラヤン晩年のウィーンフィルとのライヴです。ダイナミックですがしなやかさもあり、迫真の名演奏です。ウィーン・フィルも音色の艶やかさだけではなく、深みを感じる響きを出しています。

第1楽章はダイナミックに始まり、その後しなやかに歌いこんでいます。主部はカラヤンらしいしっかりした演奏です。カラヤンとしては円熟味も感じられ、感情表現も上手く入っています。展開部の金管などはグロテスクなほどで、荒ぶる感情があり、かと思えば、とても美しい弦の音色が聴こえてくるなど、カラヤン晩年のライヴ録音の中でも特に素晴らしい演奏だと思います。第2楽章は、静かな音楽で神妙な雰囲気です。第3楽章はダイナミックでリズミカルです。第4楽章へのつなぎの部分も壮大です。主部はなかなかダイナミックです。かなりの熱演ですが、全体として美しいフォルムは維持していて、色々な面で名演奏です。

晩年の『タンホイザー』序曲を思い出します。あれも凄い迫真の演奏でした。それまでの磨きつくしたカラヤン=ウィーン・フィルの演奏より、さらに一歩円熟して、凄みが出ています。

準メルクル=NHK交響楽団 (第1稿)

貴重な第1稿での演奏、N響も好調!
  • 名盤
  • 定番
  • 明晰
  • スリリング
  • 高音質

おすすめ度:

指揮準・メルクル
演奏NHK交響楽団

2006年7月12-15日,東京,すみだトリフォニーホール(ステレオ/デジタル/セッション)

準メルクルとNHK交響楽団の演奏です。改訂前の1841年第1稿での演奏です。演奏レヴェルも高く、2006年録音で音質も良いです。

第1楽章最初の一音から違いますね。主部もかなりの違いがあります。ただ録音が良いからか、特にオーケストレーションが悪いようには思えないです第4番はクーベリックなど、シューマンを得意とする指揮者によるオーケストレーションの補強が多いので、原典版だとさぞ響かないのかなと思っていましたが、特に響きが物足りない、ということは無いですね。第2楽章はあまり改訂による変化は無いようです。NHK交響楽団は柔らかい響きでシューマンらしい演奏です。第3楽章は特に大きな変更は無いようで、リズミカルで普通に楽しめます。準メルクルも細かなアゴーギクを入れていて効果的です。第4楽章への移行部分など雰囲気作りがとても上手いです。移行部分と第4楽章は改訂により別の曲のようになっていますが、良くなった所と普通になってしまった所がありますね。準メルクルはかなり速いテンポで演奏していますが、オケは綺麗に響いていて、改訂の前後でそこまで変わらないですね。アーティキュレーションの違いは準メルクルの演奏スタイルかも知れません。

NHK交響楽団は準・メルクルとの相性もいいですし、アンサンブルや響きの完成度が高く、とてもいい演奏をしています。

ヘレヴェッヘ=アントワープ交響楽団

ピリオド奏法による透明感のある演奏
  • 名盤
  • 定番
  • 自然美
  • ピリオド奏法
  • 高音質

おすすめ度:

指揮フィリップ・ヘレヴェッヘ
演奏アントワープ交響楽団

2018年4月17-19日,ベルギー,アントワープ,エリザベート王妃記念音楽堂(ステレオ/デジタル/セッション)

ヘレヴェッヘシャンゼリゼ管弦楽団と既に一度シューマンを録音しています。これは完全な古楽器でのピリオド演奏です。今回のアントワープ交響楽団(旧称:ロイヤルフランダース・フィル)で、モダン楽器によるピリオド演奏です。

第1楽章ヴィブラートを掛けていないことによる透明感あふれる演奏で、強い感情が入った演奏とは違いますが、すっきりしていて自然美があります第2楽章は透明感と穏やかさの中に精妙な感情表現があります。第3楽章はリズミカルです。基本的にテンポが速めの演奏ですが、コンパクトにリズムを刻んでいます。歌謡的な中間部は穏やかさがあります。オクターヴ上げたほうがメロディが明確に聴こえそうですが、それをしないのがシューマンですね。第4楽章は移行部はそれほどスケールが大きくなく、主部に入るとリズミカルです。ダイナミックですが、他のクーベリックなどと比べるとコンパクトな感じです。

好みの分かれそうな演奏ですが、クーベリックの強い感情の入った表現にくどさを感じる人にはいいかも知れません。第2番とのカップリングですが、録音も新しいですし、新しい新鮮な響きが聴けることと、聴いていて疲れない所がいいと思います。

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シューマンの交響曲の中でも第4番は良い映像がリリースされています。

ピアノ:ケンプ, クーベリック=バイエルン放送交響楽団

  • 名盤
  • 定番
  • ロマンティック
  • ダイナミック

超おすすめ:

ピアノヴィルヘルム・ケンプ
指揮ラファエル・クーベリック
演奏バイエルン放送交響楽団

(ステレオ/デジタル/ライヴ)

ピアノ:アルゲリッチ, シャイー=ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団

  • 名盤
  • 定番
  • 高画質

ピアノマルタ・アルゲリッチ
指揮リッカルド・シャイー
演奏ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団

2006年6月1-2日,ライプツィヒ,ゲヴァントハウス (ステレオ/デジタル/ライヴ)

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楽譜・スコア

シューマン作曲の交響曲第4番の楽譜・スコアを挙げていきます。

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