シューマン ピアノ協奏曲 イ短調 Op.54

ロベルト・シューマン (Robert Alexander Schumann, 1810~1856)ピアノ協奏曲 イ短調 Op.54 (Piano concerto a-Moll)について、解説おすすめの名盤レビューをしていきます。この協奏曲は第1楽章の出だしが一番有名ですね。シューマンらしい激しい感情、情感豊かな緩徐楽章、など感情表現に優れたロマン派的なピアノ協奏曲です。

人気のあるピアノ協奏曲ですので、沢山のピアニストが名盤を残しています。近年好調のグリモー、このピアノ協奏曲を得意としているリヒテル、ロマン派ピアノ協奏曲なら得意なアルゲリッチ、歴史的名演としてはリパッティケンプなどの名盤がありますので、ご紹介していきます。

解説

シューマンのピアノ協奏曲 イ短調 Op.54を解説します。

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管弦楽分野への進出

ロベルト・シューマン (1810~1856) のピアノ協奏曲 イ短調 作品54は、1845年に完成し、1846年にシューマンの妻クララのピアノ独奏によりライプツィヒ・ゲヴァントハウスで初演されました。

シューマンが管弦楽の分野の作曲に乗り出したのは、1841年に交響曲第1番が完成した後のことでした。管弦楽分野への進出は妻クララの助言があったと言われています。交響曲第1番は初演の評判も良く、シューマンも自信を持つことになりました。

こうして、交響曲のみならず、ピアノ協奏曲、チェロ協奏曲、ヴァイオリン協奏曲などの作品が誕生していきます。

ピアノ協奏曲の作曲

ピアノ協奏曲の作曲に当たっては、慎重に作曲を進めていきました。1841年に「ピアノと管弦楽のための幻想曲」を作曲し、妻クララのピアノ独奏でゲヴァントハウスで初演しました。

そして、この「ピアノと管弦楽のための幻想曲」を第1楽章とし、第2楽章、第3楽章をさらに作曲し、1845年になってやっとピアノ協奏曲が完成したのでした。

ピアノ:グリモー、ヘンゲルブロック=北ドイツ放送交響楽団

ピアノ協奏曲の構成

全楽章の演奏時間は30~35分程度と、標準的なピアノ協奏曲の規模になっています。

第1楽章:Allegro affettuoso

出だしのピアノが感情的で、非常に有名で人気の高いピアノ協奏曲です。そのまま第1楽章は素晴らしく情熱的な音楽で完成度も高いです。

第2楽章 : Intermezzo. Andantino grazioso

第2楽章は4, 5分程度の緩徐楽章です。間奏曲の名前の通り、第1楽章と第3楽章を上手く繋いでいます。

第3楽章 : Allegro vivace

第3楽章は、早めのテンポの楽章です。ピアノ独奏とオーケストラが互いにオブリガートを演奏するなど、凝った構成になっています。最後は盛り上がって終わります。

充実した第1楽章に比べ、第2楽章、第3楽章で緊張感が切れてしまう演奏も多いようです。そのため、ディスクは沢山リリースされていますが、本当に良い演奏を探すとなかなか難しい曲なのです。ですので、かなり古い演奏も入りますが、良いディスクを探していますので聴いてみて頂きたいです。

おすすめの名盤レビュー

シューマンのピアノ協奏曲のおすすめの名盤をレビューしていきます。

ピアノ:リパッティ、カラヤン=フィルハーモニア管弦楽団

若いリパッティとカラヤンの競演、鮮度の高い名演
  • 名盤
  • 定番
  • スリリング
  • ダイナミック

超おすすめ:

ピアノディヌ・リパッティ
指揮ヘルベルト・フォン・カラヤン
演奏フィルハーモニー管弦楽団

1948年 (モノラル/アナログ/セッション)

ピアノのディヌ・リパッティ(Dinu Lipatti)は、33歳という若さで夭折してしまったピアニストです。この演奏を聴いても分かりますが、非常に素晴らしい才能を持っていて、シューマンに必要とされる強い感情表現にも優れていたピアニストでした。

1948年録音とかなり古いスタジオ録音ですので、音質が良いとは言えませんが、リパッティの演奏を聴くなら必要十分な音質です。また、カラヤンとの仲が上手くいかなかったようで、この録音の時も喧嘩気味だったそうです。このコンビが実力を出し切れば凄い演奏になりそうです。実際、名演奏で、最初から第3楽章まで鮮度が落ちることなく最後まで気分よく聴くことができます。喧嘩腰だった分、緊張感につながったのかも知れませんね。

他に夭逝する9カ月前のライヴ演奏がありますが、このディスクでも十分素晴らしい演奏です。

ピアノ:リパッティ、アンセルメ=スイスロマンド管弦楽団

進化した多彩な表現、情感に満ちた感動的な名演
  • 名盤
  • 定番
  • 共感
  • 情感
  • ダイナミック
  • ライヴ

超おすすめ:

ピアノディヌ・リパッティ
指揮エルネスト・アンセルメ
演奏スイス・ロマンド管弦楽団

1948年 (モノラル/アナログ/ライヴ)

リパッティが夭逝する9カ月前の演奏です。既に病気は発症していている中での演奏であり、ライヴ録音です。アンセルメ=スイスロマンド管弦楽団とシューマンを演奏するには不向きな組み合わせのように思いますが、アンセルメらも病気のことを知っていて、感動的な演奏となっています。

ライヴ録音のため、カラヤンとのスタジオ録音に比べると音質は落ちますが、非常に感動的な演奏です。録音はピアノは良く入っていますが、オーケストラが遠めに聴こえます。

演奏は、カラヤンとのスタジオ録音に比べると、情感がさらに増している感じです。スタジオ録音では鋭角的だったところもありましたが、表現の幅が大きく増して、鋭角的に強い感情を出すところと、少しウェットな情感で満たされるところがありますね。オーケストラは録音は悪いですが、ピアノにとても共感していて素晴らしいです。なるほど、ピアノ協奏曲の醍醐味というのはこういうことなのかも知れない、と、知っていましたが、この演奏に接して再発見させられました。

第2楽章もこんなに天国的に演奏できるんだなと思いますし、第3楽章も色々な表情付けがあって、最後の盛り上がりも素晴らしいです。力強いタッチは病気を感じさせません。

音質が悪かろうが、聴いていて完全に音楽に引き込まれてしまい、シューマンのピアノ協奏曲にこんなにも様々な感情や情感があったのだなと気づかされました。本当に、あっという間に3楽章聴き終えてしまいます。

ピアノ:ケンプ、クーベリック=バイエルン放送交響楽団

落ち着きのある適度な情感、スケールの大きな伴奏
  • 名盤
  • 定番
  • 情感
  • 円熟
  • スケール感
  • ライヴ

おすすめ度:

ピアノ
指揮ラファエル・クーベリック
演奏バイエルン放送交響楽団

1973年12月,ミュンヘン (ステレオ/アナログ/セッション)

78歳のウィルヘルム・ケンプが、シューマンを得意とするクーベリックと組んだ演奏です。クーベリック=バイエルン放送交響楽団がバックなので、ロマンティックな演奏になるのかと思いきや、ウィルヘルム・ケンプは少し遅めのテンポで、意外にカチッとした演奏をしています。やはりベテランのピアニストだけのことはあり、テンポが遅めでも十分シューマンらしい感情の入った演奏は出来るのです。

バックのクーベリック=バイエルン放送交響楽団もいつものシューマンの交響曲同様、ロマンティックで厚みのある充実した演奏をしています。

特に第2楽章、第3楽章はケンプのピアノの充実ぶりももちろんですが、クーベリックの伴奏が非常によく、第3楽章は遅いテンポで指揮者によっては戸惑いそうですが、クーベリックはそのテンポで弛緩することなく自分のシューマンを演奏していて、その結果、まるで広々とした野原で演奏しているようです。お互いの相性の良さが、この演奏をさらに昇華させたのだと思います。

DVDも発売されていますが、映像は少し古さを感じさせます。1973年録音で音質は当時の標準的なものです。定番としてお薦めできる演奏だと思います。

リヒテル,マタチッチ=モンテカルロ国立歌劇場管

情熱的でスケールが大きな名盤
  • 名盤
  • 定番
  • 軽妙
  • スリリング
  • 円熟

超おすすめ:

指揮ロヴロ・フォン・マタチッチ
演奏モンテ・カルロ国立歌劇場管弦楽団

1974年11月25-30日 (ステレオ/アナログ/セッション)

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リヒテルは、多くのオーケストラとシューマンを録音してきました。リヒテル自身が安定感に少し欠けることがあり、録音の時にベストの演奏が出来ていないことがありました。特に名盤と言えるのは2つで、ムーティが伴奏をしたディスクと、マタチッチが伴奏を指揮した本ディスクです。

第1楽章リヒテルの鋭い表現と、マタチッチの力強い演奏で情熱的に始まります。リヒテルはピアノを悠々と鳴らし、スケールの大きな音楽を作り出しています。伴奏のマタチッチとモンテカルロ管は男性的な荒々しい力強さです。リヒテルのピアノはさらに力強さを増していき、その中で情感に溢れる表現も繰り広げています。

第2楽章はロマンティックな演奏です。しなやかさとスケール感があり、伴奏のマタチッチはコクのある音色です。ピアノは段々とロマンティックさを増していき、オケのソロも味わいがあります。ロマンティックと言っても常に根底に力強さがあります。第3楽章はリズミカルに盛り上がっていきます。ピアノは情感溢れる表現もありますが、オケは剛健な演奏です。スケールの大きさと爽快さが前面に出た演奏です。

リヒテルはロマンティックな情感あふれる演奏ですが、安易に甘美な方向には行かず、しっかりした演奏です。伴奏はマタチッチらしくマッシヴな力強さがあります。二人の巨匠によるスケール感を感じる名盤です。

ピアノ:リヒテル、ムーティ=ウィーンフィル

切れの良い伴奏、情緒に満ちたリヒテルのピアノ
  • 名盤
  • 表情豊か
  • スリリング
  • ダイナミック
  • ライヴ

おすすめ度:

ピアノスヴャトスラフ・リヒテル
指揮リッカルド・ムーティ
演奏ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

1972年8月17日,ザルツブルク (ステレオ/アナログ/ライヴ)

リヒテルのピアノ独奏にムーティ=ウィーン・フィルとのライヴ録音です。ベテランになったリヒテルは、安定した演奏を披露し、若いムーティはリヒテルにきちんとついて行ってクオリティが高く、フレッシュな伴奏をつけています。何度も録音してきたリヒテルはシューマンのピアノ協奏曲を得意としています。そして演奏スタイルはまさに典型的なもので、誰もがシューマンのピアノ協奏曲に期待するものを持っています。

リヒテルは円熟してきていますが、テンポはスタンダードで、期待を裏切りません。1972年のライヴ録音ですが、音質は1970年代とは思えないくらい良いです。シューマンを得意とするリヒテルの新しい定番になりそうなディスクです。

ピアノ:アルゲリッチ、バラコフスキー=スイス・イタリアーナ語放送管

  • 名盤
  • 定番
  • 情感
  • 円熟
  • スケール感
  • ライヴ

おすすめ度:

ピアノマルタ・アルゲリッチ
指揮アレクサンドル・ラビノヴィチ=バラコフスキー
演奏スイス・イタリアーナ語放送管弦楽団

2002年4月,ルガーノ・フェスティバル (ステレオ/アナログ/ライヴ)

アルゲリッチはシューマンのピアノ協奏曲を得意としていて、既に何度も録音しています。どれを選ぶかがまず難しいのです。アーノンクールとの演奏も持っていますが、怪演と言われているので、ここでは、2002年と新しめのライヴ録音について書いてみようと思います。

アルゲリッチは非常にロマンティックで感情を表に出した演奏をしています。こういう曲の感情の出し方は上手いですね。いくつか録音がありますけれど、その中でも早めのテンポ取りも上手いし、感情表現をしっかりしている演奏だと思います。

伴奏はスイス・イタリアーナ語放送管弦楽団で、始めて聴くオーケストラですね。伴奏のほうは、一流オケの流麗な演奏とまでは行きませんが、イタリア的なサウンドのオケです。イタリアの一流オケといえばスカラ座のオケ位で、珍しい組み合わせだと思います。第2楽章の掛け合いなどはオケもがんばっています。

第3楽章は華麗なピアノを聴かせてくれます。アルゲリッチは自由自在なテンポで、それにオケがついていく感じです。アルゲリッチはもうこの曲については余裕をしゃくしゃくで自由自在に弾いています。

また、アルゲリッチの演奏は以下の新日本フィルハーモニーとの録音もあります。非常に評判が良いので挙げておきます。

  • ライヴ録音

ピアノ:アルゲリッチ、指揮:アルミンク、新日本フィルハーモニー管弦楽団

グリモー,ジンマン=ベルリン・ドイツ交響楽団

情感を湛えつつスタイリッシュな演奏
  • 名盤
  • 定番
  • 情感
  • スタイリッシュ
  • スリリング
  • 高音質

おすすめ度:

ピアノエレーヌ・グリモー
デイヴィッド・ジンマン
演奏ベルリン・ドイツ交響楽団

1995年,ベルリン,イエス・キリスト教会 (ステレオ/デジタル/セッション)

エレーヌ・グリモーは天才少女でしたが、最近では大分円熟してきていて、早めのテンポでセンスの良い演奏を繰り広げるようになり、注目される存在になっています。このシューマンのピアノ協奏曲は、かなりテンポが速く、情感をたたえながらも重くならず、さりげなく弾いていてスタイリッシュです。とてもセンスのある演奏だな、と思います。

そんなスタイリッシュな演奏に、ジンマンはドイツ的ながらも重くなり過ぎず、上手く伴奏をつけていて、ピアノが良く生きている演奏になっています。第2楽章は、新しい録音の音質の良さで、ピアノ、オーケストラ共々透明感のある演奏です。第3楽章はダイナミックに始まります。テンポは標準的なところですね。しかし、ドイツ的な演奏では無く、少し崩してみたり、細かいパッセージを軽妙に弾いたりして、グリモーらしいフレッシュでスタイリッシュな演奏になっています。

グリモーはフランス人ですが、ドイツ的なシューマンとは少し違った、軽快でさわやかさのある演奏です。

ピアノ:仲道育代、フロール=フィルハーモニア管弦楽団

ピアノ:仲道郁代、指揮:フロール(クラウス・ペーター)、フィルハーモニア管弦楽団

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楽譜・スコア

シューマン作曲のピアノ協奏曲の楽譜・スコアを挙げていきます。

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