ニコロ・パガニーニ (Nicolo Paganini,1782-1840)作曲のヴァイオリン協奏曲第2番『ラ・カンパネラ』 (ラ・カンパネッラ、Violin Concerto no.2 “La campanella”)について、解説とおすすめの名盤レビューをしていきます。ワンストップでスコアと楽譜まで紹介します。
第3楽章の『ラ・カンパネラ』のメロディがとても有名です。パガニーニらしい超絶技巧が要求される曲です。
解説
パガニーニのヴァイオリン協奏曲第2番『ラ・カンパネラ』について解説します。
このヴァイオリン協奏曲第2番で有名なのはやはり第3楽章の『ラ・カンパネラ』です。『ラ・カンパネラ』はイタリア語で鐘(かね)という意味で、鐘の響きを模したロンドです。ロンドの繰り返しにつれて、様々に変奏され、まさに超絶技巧を見せつける様な音楽になっています。
ヴァイオリン協奏曲第2番の作曲は1811~1812年または1819~1826年のどちらかと推定されています。大分時期が異なりますが、はっきりしたことは分からないようです。1826年12月のパガニーニ自身の手紙が残されており、
鐘のオブリガートがついた第2番を演奏するつもりです。
とあることから、その頃には完成していたようです。ただ初演に関してもいくつか説があってはっきりしません。演奏と言っても伴奏がオーケストラであったかも不明です。1838年になって初演された、とする説もあります。
フランツ・リストは有名なピアノ曲『パガニーニによる大練習曲』を作曲しており、第3番が『ラ・カンパネラ』となっています。このリストのピアノ曲は1938年に作曲されたため、それ以前に初演されていたことは間違いなさそうですね。
楽曲構成
3楽章形式の協奏曲です。演奏時間は30分と標準的または少し長めです。非常に技巧的で、全曲に渡ってパガニーニの超絶技巧を魅せつけるかのような協奏曲です。第3楽章のとても有名な主題があるにも関わらず、ヴァイオリン協奏曲第1番の方が良く演奏されますね。
イタリア的な明るさやカンタービレ、そして超絶技巧をこれでもか!と使った派手さでは、空前絶後と言えそうです。名曲かどうかはさておいて、ここまで徹底しているのは凄いですね。
第1楽章:アレグロ・マエストーソ
通常はソナタ形式が来る第1楽章ですが、この協奏曲では自由な形式で書かれています。第1主題と第2主題が存在しますが、ロ短調とニ長調で並行調では無く、通常のソナタ形式と異なります。
まずオーケストラにより長めの前奏が演奏されます。その後、ヴァイオリン独奏がカンタービレの明るい歌謡的な第1主題を演奏します。超絶技巧を惜しげもなく散りばめられています。第2主題は少し落ち着いていますが、明るい歌謡的な主題です。最後にカデンツァがあります。
第2楽章:アダージョ
イタリア・オペラを思わせるような明るく艶やかなメロディです。オーケストラの伴奏はダイナミックさがあり、情熱が感じられます。
第3楽章:ロンド(アレグロ・モデラート)
有名な鐘の主題で始まります。そしてロンドの繰り返しに応じてオーケストラと掛け合いながら、フラジオレットなどの技巧を多用した多彩な変奏になっていきます。
おすすめの名盤レビュー
それでは、パガニーニ作曲ヴァイオリン協奏曲第2番『ラ・カンパネラ』の名盤をレビューしていきましょう。ヴァイオリン協奏曲第2番は、第1番に比べるとディスクの数が少ないのですが、いくつか聴いてみたいと思います。
Vn:アッカルド, デュトワ=ロンドン・フィル
ヴァイオリン独奏はイタリアのトリノ出身のサルヴァトーレ・アッカルドです。バックはデュトワとロンドン・フィルです。フランス人のデュトワがパガニーニ、というのは合わなそうな気もしますが、ロンドン・フィルの演奏でしっかりした伴奏を付けています。
第1楽章は力強くも美しさのある伴奏で始まります。アッカルドはイタリア的な軽い音色で入ってきてカンタービレで優美に歌います。テクニックはとても安定していて、メリハリのある音色で軽々と弾いていきます。カデンツァは張りのある力強い音色で、超絶技巧を弾いていきます。パガニーニらしい長いカデンツァで細かいパッセージと巧みな移弦の技術など凄いものがあります。第2楽章は優美なカンタービレで、力強くも優雅に弾いていきます。
第3楽章は有名なメロディを情熱的に弾いていきます。オケも音に厚みがあり、アッカルドのヴァイオリンに合っています。ピチカートやフラジオを使った細かいパッセージが続きますが、アッカルドは余裕を持って弾いていきます。とてもスリリングです。鮮やかな技巧を駆使しつつ、盛り上げていきます。
アッカルドは持ち前の明るい音色とカンタービレでパガニーニを得意としています。パガニーニは技術だけでなくイタリア的なメロディが特徴で、まさにアッカルドに相応しい協奏曲です。
Vn:カントロフ,オーヴェルニュ室内管弦楽団
ヴァイオリン独奏はフランス人のジャン=ジャック・カントロフで1964年にパガニーニ国際コンクールで第一位に輝いた経歴の持ち主です。伴奏はオーヴェルニュ室内管弦楽団というフランス中部の楽団です。
第1楽章はオーヴェルニュ室内管は一流とはいえないかも知れませんが、軽快かつ情熱的に曲を進めていきます。カントロフは非常に情熱的でイタリア的な艶やかさがある演奏です。その後、表情豊かに演奏を進めていきます。技巧的な面では余裕を感じますが、スリリングな表現です。独奏と伴奏の息もぴったりで、情熱的に盛り上がります。カデンツァはパガニーニらしく超絶技巧をちりばめたもので、色々な技巧を楽しんで聴くことが出来ます。第2楽章は冒頭のホルンが上手いです。カントロフは情熱的で張りのある音色で長いメロディを弾いていきます。終盤は結構スリリングです。
第3楽章は有名なメロディのカントロフの演奏は、まさに王道という感じで、誰もがこの主題に感じるであろう華やかさ、情熱を持っています。伴奏も情熱的な盛り上がりです。技巧が複雑になると(わざと)テンポアップしていきますが、伴奏もテンポを上手くコントロールし、盛り上がりをサポートします。
カントロフは技巧面でも表現でも、この曲の良さを上手く生かしてスリリングな仕上がりです。伴奏も情熱的で、少し粗さがありますが、カントロフを上手くサポートしています。
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楽譜・スコア
パガニーニ作曲のヴァイオリン協奏曲第2番『ラ・カンパネラ』の楽譜・スコアを挙げていきます。
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