タイスの瞑想曲 (マスネ)

ジュール・マスネ (Jules Massenet,1842-1912)作曲のタイスの瞑想曲 (meditation thais)について、解説おすすめの名盤レビューをしていきます。歌劇『タイス』の間奏曲として作曲されました。とても有名な間奏曲で、オーケストラでも演奏されますし、ヴァイオリン、フルート、クラリネットなど様々な楽器に編曲されています。またアンコールピースとしても良い作品です。ワンストップでスコアや楽譜まで紹介します。

解説

マスネタイスの瞑想曲について解説します。

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歌劇『タイス』

歌劇『タイス』はフランスの作曲家であるジュール・マスネが作曲し、1894年3月16日パリのガルニエ宮で初演されました。その後、マスネ自身による改訂が施され、改訂版は1898年に初演されています。

『タイスの瞑想曲』は、マスネ作曲の歌劇『タイス』第2幕の第1場と第2場の間で演奏される間奏曲です。『タイスの瞑想曲』を理解するには、歌劇『タイス』の筋書きが大事なので、少し長くなりますが書いていきます。

フランス人のアナトール・フランス(1844年-1924年)小説『舞姫タイス』を原作としています。台本はルイ・ギャレによってフランス語で脚本化されました。

あらすじと『タイスの瞑想曲』

歌劇『タイス』ビザンチン帝国統治下のエジプトが舞台です。中心となる登場人物は禁欲主義の修道僧アタナエルと、アレクサンドリアの高級娼婦(クルチザンヌ)でヴィーナス(愛と美の女神)の信者であるタイス(聖タイス)です。

修道僧アタナエルは禁欲的な修行をしているにも関わらず、アレクサンドリアで見た娼婦タイスの魅力に取りつかれてしまったことをバレモンに告白します。この時点では、修道僧アタナエルは自分が恋愛をしていることに気づいていないようです。逆に修道僧アタナエル娼婦であるタイスを改心させてキリスト教に改宗させ、修道会に入るよう、説得しに行くことにします。

タイス

修道僧アタナエル娼婦タイスを改心させるために饗宴にやってきます。しかしタイスは拒否し、

来れるものなら来てみなさい。ヴィーナスを侮るあなたに

を歌ってアタナエルを誘惑します。修道僧アタナエルは憤慨しますが、タイスの誘惑に動揺し、あとでまた来ると言い残してその場を去ります。

饗宴の後、疲れ切ったタイスは虚しさを感じ、老いが魅力を衰えさせていくことを考えます。そんな時に、修道僧アタナエルタイスの所に戻ってきました。そして、

精神によって愛していること、その愛は一夜ではなく永久に続くものだ

と説得します。

タイス

が、実のところ修道僧アタナエルは、タイスを改心させる説教の最中にタイスの肉体的魅力に負け葛藤していたのでした。タイスは自分の考えを主張して修道僧アタナエルを追い払います。しかし、タイスの心は純潔であり、第2幕第1場第2場の間の「長い瞑想」の後、アタナエルの教えに従いタイスは娼婦をやめてキリスト教への改宗し修道僧になることを決意します。その瞑想のシーンで、この『タイスの瞑想曲』が演奏されます。3幕物の第2幕の中央、まさに中心です。コーラスが入っていますが、オーケストラ版とほぼ同じでヴァイオリン・ソロが中心です。

アタナエルタイスは砂漠を超え、アタナエルの修道院に戻りタイスは尼僧院に入ります。しかし、アタナエルタイスと会えなくなったことで、結局はアタナエル自身のタイスに対するこだわりも、欲望に由来していることをやっと自覚します。アタナエルは自身の信仰を捨て尼僧院にタイスを探しますが、眠らずに懺悔を続けたタイスは死の床にいました

アタナエル

自分が教えてきた全てが嘘だった

と告げ、タイスを愛していることを告げました。しかし、改心したタイスは天国に行くことのみを考えつつ天に召されます。全てを失ったアタナエルは絶望します。

見事なまでのすれ違いぶりで、なかなか凄い台本ですね。そしてその大逆転の中心にあるのが『タイスの瞑想曲』なので、とても重要な曲と言えます。

歌劇『タイス』の人気

この歌劇『タイス』は、精神と肉体の葛藤など、初期のオペラ(音楽劇)で題材にもなった『魂と肉体の劇』のような深みのある内容で、それがルイ・ギャレの台本によってドラマティックに描かれており、オペラとしても傑作です。これまで継続的に各地のオペラ座で何度も上演されてきました。

おすすめの名盤レビュー

それでは、マスネ作曲タイスの瞑想曲名盤をレビューしていきましょう。ただ、普通に『タイスの瞑想曲』というと美しい曲ですが、情熱的な面がある演奏が多いですね。本来はコーラスも入っていて、宗教音楽的な清々しさがある曲であるべき、ですが、あまりそこには拘らずレビューしてみたいと思います。

ヴァイオリン:ムター, レヴァイン=ウィーン・フィル

ムターの艶やかな音色と繊細な表現を堪能できる名盤!
  • 名盤
  • 定番
  • 繊細
  • 艶やか
  • 高音質

超おすすめ:

ヴァイオリンアンネ=ゾフィー・ムター
指揮ジェームズ・レヴァイン
演奏ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

(ステレオ/デジタル/セッション)

アンネ=ゾフィー・ムターがヴァイオリン・ソロを務めたオーケストラ版です。レヴァインとウィーン・フィルとの共演です。音質はとても良く、繊細なヴィブラートも細部まで聴き取れます。

ムターは繊細に曲を初めて、艶やかな響きで情熱的に盛り上がります。やはりムターのヴァイオリンの凄さは、このページの中でもずば抜けていて、安定したテクニックと言い、表現力の豊富さと言い、さすがムターと感嘆させられます。ポルタメントのセンスもとても良く、張りのある音色でロマンティックです。他にもこの短い曲の中で色々な表現を聴くことが出来ます。ウィーン・フィルは伴奏に徹していますが、ムターとヴァイオリンセクションが一緒に弾く所では、繊細な表現でムターの音色と上手くあっています。

ムターがメインのディスクですが、タイスの瞑想曲のオーケストラ版を聴くなら、これが一番お薦めです。

ヴァイオリン:ルノー・カピュソン,ドイツ・カンマーフィル (オーケストラ版)

線が細く清々しいヴァイオリンとカンマーフィルのダイナミックな伴奏
  • 名盤
  • 定番
  • 透明感
  • 清々しさ

超おすすめ:

ヴァイオリンルノー・カピュソン
演奏ドイツ・カンマーフィルハーモニー

2021年5月16-18日,スイス,ヴォー州ロール,ロゼ・コンサートホール (ステレオ/デジタル/セッション)

フランスのヴァイオリニスト、ルノー・カピュソンとドイツ・カンマーフィルによる録音です。録音は非常に高音質です。

ルノー・カピュソンのヴァイオリンは冒頭から少し速めのテンポで、とても優美でシンプルな表現です。透明感のある音色は清々しさを感じさせます。盛り上がると情熱的ですが、スケールも大きいです。オーケストラはかなりシリアスかつダイナミックに盛り上がります。シリアスさというのは、他の演奏では感じられない表情付けと思います。テクニック面もとても安定しています。

オペラの筋書きを考えても十分説得力のある名演と思います。このアルバムの他の曲もインスピレーション溢れる名演が多く、非常な名盤です。

カラヤン=ベルリン・フィル (オーケストラ版)

カラヤンらしい艶やかさとスケールの大きさ
  • 名盤
  • 定番
  • 艶やか
  • スケール感

おすすめ度:

指揮ヘルベルト・フォン・カラヤン
演奏ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

1967年9月,ベルリン (ステレオ/アナログ/セッション)

カラヤンとベルリン・フィルの録音です。ヴァイオリン・ソロはミシェル・シュヴァルベが務めています。録音は少し古めですが、かなり音質は良いです。

シュヴァルベはあくまでベルリン・フィルの中でソロを弾いていて、表現も艶やかでロマンティックですが、少し控えめで、オケ全体として一体感のある演奏になっています。カラヤンは割とスケールが大きい表現で、弦セクションもしっかり鳴らしています。この時期のカラヤンは1970年代ほどはレガートは掛けず、きっちりまとめています。

もちろん、カラヤンの間奏曲抜粋アダージョ・カラヤンに含まれる演奏で、基本的にロマンティックですけれど。

ウィルソン=シンフォニア・オヴ・ロンドン

フランス物として自然な演奏
  • 名盤
  • 定番
  • 自然体

おすすめ度:

指揮ジョン・ウィルソン
演奏シンフォニア・オヴ・ロンドン

2019年1月16日-18日,ロンドン,セント・オーガスティン教会 (ステレオ/デジタル/セッション)

ジョン・ウィルソンとシンフォニア・オヴ・ロンドンの録音です。カップリングはイベール『寄港地』とラヴェルの『スペイン狂詩曲』に挟まれています。マスネの『タイスの瞑想曲』はフランス物であることを忘れてはいけません。録音は新しく、とても高音質です。

ヴァイオリン・ソロを誰が担当しているのか分かりませんが、この演奏はあくまでオペラの間奏曲として演奏していると感じます。ヴァイオリン・ソロは少し速めのインテンポで演奏していて、最後のフラジオまで確かなテクニックです。シンフォニア・オヴ・ロンドンは小編成ですが、弦セクションと同じメロディを弾く所では弦セクションの一人として演奏している印象です。ジョン・ウィルソンは自然なテンポどりながら、細かい所までしっかりまとめていて好感が持てる演奏です。

ヴァイオリン:古澤巌, ルリンフィル・ブルームピアノクインテット (ヴァイオリン、ピアノ伴奏)

  • 名盤
  • 情熱的

おすすめ度:

ヴァイオリン古澤巌
ピアノルリンフィル・ブルームピアノクインテット

(ステレオ/デジタル/セッション)

ヴァイオリンは古澤巌、ピアノ伴奏は良く分かりませんでしたが、ピアノ五重奏団「ベルリンフィル・ブルームピアノクインテット」の中の一人でしょうか。録音は良いです。

古澤巌は、少し速めのテンポでアクセントを付け、情熱的な演奏です。ピアノは古澤巌の演奏をしっかりサポートしています。さすがにムターやルノー・カピュソンに比べると技巧的には敵わない感じですが、表現がとても情熱的で、好みがあえば楽しめると思います。

またヴァイオリンの演奏の参考に良いかも知れません。管理人もヴァイオリンを始めたころ、古澤氏のディスクにはお世話になりました。

歌劇『タイス』全曲盤

マゼール=ニュー・フィルハーモニア管弦楽団

  • 名盤
  • 定番

指揮ロリン・マゼール
演奏ニュー・フィルハーモニア管弦楽団

(ステレオ/デジタル/セッション)

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『タイスの瞑想曲』の映像(DVD,Blu-Ray)

ヴァイオリン:サラ・チャン, ドミンゴ=ベルリン・フィル

  • 名盤
  • 定番

ヴァイオリンサラ・チャン
指揮プラシド・ドミンゴ
演奏ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

2001年,ヴァルトビューネ (ステレオ/デジタル/ライヴ)

歌劇『タイス』(DVD,Blu-Ray,他)

オペラの映像もいくつかリリースされています。歌劇『タイス』はあまり知られていませんが、マスネの絶頂期の名作です。

フセイン=ウィーン放送交響楽団,他

日本語字幕付きのオペラ『タイス』
  • 名盤
  • 定番、高画質
  • 日本語字幕

ソプラノニコール・シュヴァリエ
バリトンヨーゼフ・ワーグナー
演出ペーター・コンヴィチュニー
指揮レオ・フセイン
演奏ウィーン放送交響楽団
合唱アルノルト・シェーンベルク合唱団

2021年1月,ウィーン,アン・デア・ウィーン劇場 (ステレオ/デジタル/ライヴ)

筋書きに興味を持ったら、日本語字幕付きでオペラ版を観ると、楽しめると思います。歌劇『タイス』はディスクも多いですが、最新だとアン・デア・ウィーン劇場で上演されたこのディスクがあります。

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楽譜・スコア

マスネ作曲のタイスの瞑想曲の楽譜・スコアを挙げていきます。

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