カバレフスキー 組曲『道化師』

ドミトリー・カバレフスキー (Dmitri Kabalevsky,1904-1987)作曲の組曲『道化師』 (“Comedians” suite)について、解説おすすめの名盤レビューをしていきます。カバレフスキーの道化師は、第2曲「ギャロップ」がとても有名です。速いテンポで運動会にもよく使われる音楽です。その他の曲も短めで、親しみやすく、組曲として特に吹奏楽で良く演奏されますね。知名度は、カバレフスキーの作品の中では断トツで、その意味で代表作とも言われます。

解説

カバレフスキー組曲『道化師』について解説します。

「おすすめ名盤レビュー」にジャンプ

作曲の経緯

『道化師』は1939年に作曲されました。もともとは子供向けの劇音楽で、16曲で構成されていました。その児童劇『発明家と道化役者』は1938年にモスクワで初演されました。

その後、10曲からなる組曲が編纂されました。組曲『道化師』は1940年にレニングラード(現在のサンクト・ペテルブルク)の中央児童劇場で初演されています。

道化師のギャロップ

運動会の音楽として、有名な道化師の「ギャロップ」は、馬術の最も早い走り方を意味しています。馬が一歩ごとに足四本全部を地面からはなす走法です。

ソヴィエトとカバレフスキー

カバレフスキーはソヴィエトで活躍した作曲家です。モスクワ音楽院に進み、ニコライ・ミャスコフスキーに作曲を学びました。そしてソビエト連邦作曲家同盟の指導的地位について活躍しました。

組曲『道化師』以外では、チェロ協奏曲も比較的有名でたまに演奏されます。交響曲やオペラも多く作曲しており、交響曲全集などもリリースされています。オペラでは「コラ・ブルニョン」が有名で、「コラ・ブルニョン」序曲は単独でも演奏されます。また、ロシア国内では歌曲、カンタータの作曲として知られています。

この曲に見られるように比較的分かりやすい作品が多く、ハチャトゥリアンらと共に「社会主義リアリズム」の擁護者で、いわゆる現代音楽に属するような先進的で複雑な音楽は作曲していません。

それでもカバレフスキーは1948年のジダーノフ批判で名前が挙がってしまいます。しかし、高い地位にあったカバレフスキーはコネでジダーノフ批判のリストから外してもらうことができたと、いうことです。

児童音楽教育者としてのカバレフスキー

戦後カバレフスキーは児童教育に取り組み、著作が西側でも出版されています。音楽教育の分野でも知名度が高い人物です。

カバレフスキー こどもに音楽を語る」「子どもの心をひらく カバレフスキー音楽教育」「三頭のくじらと音楽の話」など、今でもアマゾンなどで入手できます。

曲の構成

10曲からなる組曲ですが、1曲が1~3分程度と短いため、組曲全体で演奏時間は16分程度です。

組曲『道化師』

第1曲:「プロローグ」
第2曲:「ギャロップ(道化師のギャロップ)」
第3曲:「行進曲」
第4曲:「ワルツ」
第5曲:「パントマイム」
第6曲:「間奏曲」
第7曲:「叙情的小シーン」
第8曲:「ガヴォット」
第9曲:「スケルツォ」
第10曲:「エピローグ」

編成

フルート(ピッコロ持替), オーボエ(コールアングレ持替), クラリネット×2, ファゴット
ホルン×2, トランペット×2, トロンボーン, チューバ
ティンパニ, シロフォン, トライアングル, タンブリン, スネアドラム, バスドラム, シンバル
ピアノ
弦五部

おすすめの名盤レビュー

それでは、カバレフスキー作曲組曲『道化師』名盤をレビューしていきましょう。

シナイスキー=BBCフィルハーモニック

BBCフィルのクオリティの高いアンサンブルとシナイスキーのロシア的な迫力!
  • 名盤
  • 定番
  • ロシア的
  • スリリング

超おすすめ:

指揮ヴァシリー・シナイスキー
演奏BBCフィルハーモニック

2002年6月,マンチェスター (ステレオ/デジタル/セッション)

ロシア人指揮者シナイスキーとイギリスのBBCフィルの組み合わせです。録音は2002年と十分新しく、シャンドスらしく適度な残響で聴きやすい音質です。

プロローグから速いテンポと安定したアンサンブルでクオリティの高い演奏を聴かせてくれます。BBCフィルのレヴェルの高さを感じます。シナイスキーは緩急を良く付けていて、とても迫力のある指揮ぶりです。

「道化師のギャロップ」速いテンポと金管の上手さに舌を巻く、非常にスリリングで爽快な演奏です。

「行進曲」は一転、遅いテンポでユーモアの感じられる表現です。「ワルツ」は小気味良く色彩感があります。「パントマイム」シリアスで迫力があります。児童劇用の音楽ですが、この演奏は表現がしっかりしていて、楽しめます。「叙情的小シーン」クラリネットやホルンのソロのが上手いです。「エピローグ」は速いテンポでスリリングな演奏で始まり、迫力のある演奏で締めくくっています。

表現の多彩さや音質の良さを考えると一番お薦めのディスクです。

コンドラシン=RCAビクター交響楽団

コンドラシンのストレートで迫力のある定番の名演
  • 名盤
  • 定番
  • スリリング
  • 迫力

おすすめ度:

指揮キリル・コンドラシン
演奏RCAビクター交響楽団

1958年 (ステレオ/アナログ/セッション)

コンドラシンとRCAビクター交響楽団の録音です。昔から定番として親しまれている演奏です。録音は少し古いですが、リマスタリングもされており、十分な音質です。

プロローグは引き締まったストレートな演奏です。ロシアのオケほどではありませんが、RCAビクター交響楽団も安定した演奏です。

「道化師のギャロップ」かなり速いテンポで迫力があります。コンドラシンらしい白熱した名演ですね。

「行進曲」もコンドラシンらしいストレートさで、オーケストレーションの面白い個所を上手く聴かせてくれます。「ワルツ」もストレートですが、落ち着きがあり、ロシア的な味わいがあります。「パントマイム」は鋭さのある名演です。曲が持っている少しグロテスクな雰囲気が良く出ています。「ガヴォット」のロシア的な雰囲気はコンドラシンで無ければ聴けない響きですね。中間部のロシア民謡のようなメロディに味わいがあります。「エピローグ」スケールが大きく、迫力のある演奏です。オケからしっかりした響きを上手く引き出しています。

古めの録音ですが、名匠コンドラシンらしさが良く出ていて、選曲も良く楽しめる名盤です。

イェルヴァコフ=モスクワ交響楽団

  • 名盤
  • 定番
  • 民族的

おすすめ度:

指揮ヴァシーリ・イェルヴァコフ
演奏モスクワ交響楽団

(ステレオ/デジタル/セッション)

イェルヴァコフとモスクワ交響楽団のロシア人の組み合わせです。モスクワ交響楽団は、モスクワ放送交響楽団とは違うオケと思います。録音はナクソスらしく、しっかりしています。

プロローグ

「道化師のギャロップ」速いテンポでスリリングです。ロシアのオケですが、特にロシア的とまでは行かず、軽妙な演奏です。

「行進曲」は遅いテンポで、じっくり演奏しています。全体的にスリリングというより、アルメニアあたりの地方オケのような暖かみがあり、情緒があり民族的な演奏に聴こえます。「パントマイム」も遅めで、味わいのある表現です。コンドラシンのようなグロテスクさはほぼないですが、これはこれで楽しく聴けます。「叙情的小シーン」クラのソロや木管の響きに味わいがあります。「スケルツォ」は子気味良く、オケの音色も民族的で味わいがあります。エピローグはスケールがあって色彩感もあり楽しめます。

カバレフスキーに興味がある人には珍しい曲も多く、とても良い選曲の貴重な名盤です。カバレフスキーの「ロミオとジュリエット」は掘り出し物だと思います。

CD,MP3をさらに探す

楽譜・スコア

カバレフスキー作曲の組曲『道化師』の楽譜・スコアを挙げていきます。

ミニチュアスコアとIMSLPどっちが得?

電子スコア

タブレット端末等で閲覧する場合は、画面サイズや解像度の問題で読みにくい場合があります。購入前に「無料サンプル」でご確認ください。

楽譜をさらに探す

このページの情報はお役に立ちましたか?
はいいいえ