ジョン・ウィリアムズ 組曲『スターウォーズ』 名盤レビュー

ジョン・ウィリアムズ (John Williams,1932-)作曲の組曲『スターウォーズ』 (Suite ‘Star wars’)について、解説おすすめの名盤レビューをしていきます。

解説

ジョン・ウィリアムズ『スターウォーズ』について解説します。

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ジョン・ウィリアムズの映画音楽

ジョン・ウィリアムズは、オーケストラによる映画音楽で多くのヒット曲を作曲しています。有名なものでも『ジョーズ』『未知との遭遇』『インディ・ジョーンズ』『ジュラシック・パーク』『ハリー・ポッターと賢者の石』など、多くの映画音楽を作曲しており、そのいずれもキャッチーなモチーフで印象深いものです。映画音楽は商業音楽ではありますが、ジョン・ウィリアムズはクラシックの作曲家、指揮者としても名声を得ています。ただ、映画監督など依頼者は、クラシックの曲を上げたりして、「こんな曲を作曲してほしい」とイメージを伝えることもあり、有名なクラシック作品に似た曲もあります。帝国のマーチはホルストの『惑星』の火星に似ていますし、『未知との遭遇』は現代音楽のクラスター技法を使っていてノーノペンデレツキの作品に似ています。ただ、現代音楽というよりは、親しみやすい作品になっています。

映画『スターウォーズ』シリーズ

組曲「スターウォーズ」映画『スターウォーズ』の音楽を組曲化したものです。映画は1977年にアメリカで公開されました。世界的に大ヒットし、そのテーマ音楽は今でも誰でも知っている有名なファンファーレで始まります。1980年には「帝国の逆襲」1983年に「ジェダイの復讐」の三部作となりました。

その後、1999年に「エピソード1:ファントムメナス」、2002年に「エピソード2:クローンの復讐」とまた新たなシリーズが始まっており、非常に息の長いシリーズになっています。まさに大人から若い人まで、幅広い年代で誰でも知っているハリウッドを代表する映画です。

演奏会用組曲

組曲の内容はジョン・ウィリアムズ自身が選択した6曲の演奏会用組曲があります。1977年からの3部作に使用された音楽から抜粋しています。実際は組曲をそのまま演奏することは少なくCDによって選曲は異なります。

組曲『スターウォーズ』

メイン・タイトル
レイア姫のテーマ
帝国のマーチ
ヨーダのテーマ
王座の間とエンド・タイトル

映画やオリジナル・サウンドトラックで使用されているのはJ.ウィリアムズ指揮のロンドン交響楽団の演奏です。ロンドン交響楽団らしいダイナミックな演奏です。

スターウォーズで一番有名なのは、言うまでもなくいずれの映画でも冒頭に使われているメインタイトル(ファンファーレ)です。作曲から既に50年弱の歳月が流れ、映画音楽の中でも古典の部類に入ってきましたし、音楽としてもクラシックと呼んで良いような位置づけになってきました。

吹奏楽での人気

オーケストラのコンサートなどで聴く機会は少なめですが、吹奏楽では昔から良く演奏されてきました。吹奏楽のレパートリーの中では難しい曲の部類に入りますが、吹奏楽界はいくらでもレヴェルの高い団体がいますからね。

おすすめの名盤レビュー

それでは、ジョン・ウィリアムズ作曲『スターウォーズ』名盤をレビューしていきましょう。

ジョン・ウィリアムズ=ボストン・ポップス

高音質と色彩感、最も充実したスターウォーズ
  • 名盤
  • 定番
  • 情感
  • 色彩感
  • ダイナミック

超おすすめ:

指揮ジョン・ウィリアムズ
演奏ボストン・ポップス・オーケストラ

1983年6月,ボストン (ステレオ/デジタル/セッション)

作曲者のジョン・ウィリアムズがボストン・ポップスを指揮した録音です。ボストン・ポップス・オーケストラは、ボストン交響楽団が夏のオフシーズンにポップスを演奏するために編成を変えたオーケストラです。ほとんどのメンバーはボストン交響楽団のメンバーで構成されているため、とてもハイレヴェルです。またこの録音は音質も良く、微妙なニュアンスまで良く伝わってきて、映画の音楽らしいです。

ジョン・ウィリアムズの自作自演ですが、とても指揮が上手くレヴェルの高いオーケストラを色彩的にまとめ上げて新しい『スターウォーズ』の響きを作り上げています。選曲は『スターウォーズ(第1作)』『帝国の逆襲』『ジェダイの復讐』から8曲を取り上げています。

スターウォーズ選曲

『スター・ウォーズ(第1作)』より「メインテーマ」
『スター・ウォーズ(第1作)』より「王女レイア姫のテーマ」
『帝国の逆襲』より「小惑星の原野」
『帝国の逆襲』より「ヨーダのテーマ」

『帝国の逆襲』より「ダース・ベイダーのマーチ」
『ジェダイの復讐』より「ジャバ・ザ・ハット」
『ジェダイの復讐』より「ルークとレイア」
『ジェダイの復讐』より「イウォーク族のパレード」
『ジェダイの復讐』より「森林での闘い」

メインテーマなかなかの高音質で響きが良いです。弦のうねりも良いですね。ホルンのパワーもさすがです。密度のあるダイナミックさを求めるならメータ=ロス・フィルの方が上かも知れませんが、こちらは高音質でさわやかさがあります。後半の中低音のモチーフは感情も入っていて、映画のシーンを思い起こさせます。「王女レイア姫のテーマ」は響きの美しさが印象的です。ホルンも柔らかい音色で、木管が入ると情緒も出てきます。情感豊かで、ジョン・ウィリアムズが何を表現したかったのか良く分かります

『帝国の逆襲』より「ダース・ベイダーのマーチ」が収録されており、選曲も良いですね。ダイナミックでそれでいながら透明感のある録音で、スリリングさと共に響きの奇麗さも良く収録されています。『ジェダイの復讐』より「ルークとレイア」は有名な音楽ですが、とてもキレのよりリズムで、スリリングに聴かせてくれます。「イウォーク族のパレード」ではチューバのソロが素晴らしく上手いです。「森林での闘い」はダイナミックで複雑な音楽ですが、録音の良さのおかげで分離良く聴くことが出来ます。

カップリングの『スーパーマン』は颯爽とした名演です。

メータ=ロスアンジェルス・フィル

ダイナミックでスケールの大きな名盤
  • 名盤
  • 定番
  • スリリング
  • スケール感
  • ダイナミック

おすすめ度:

指揮ズービン・メータ
演奏ロスアンジェルス・フィルハーモニック

1977年12月,ロサンゼルス (ステレオ/アナログ/セッション)

メータとロス・フィルのスターウォーズです。組曲『惑星』とカップリングされていて、演奏もクラシック音楽レヴェルのクオリティの高さです。録音は少し古めですが、ダイナミックさや色彩感が堪能できます。

収録曲

第1曲:メイン・タイトル
第2曲:王女レイアのテーマ
第3曲:リトル・ピープル
第4曲:酒場のバンド
第5曲:戦い
第6曲:王座の間とエンド・タイトル

第1曲「メインタイトル」少し遅めのテンポでスケールが大きな演奏です。広がりがあり、その後の木管の響きも色彩的で、滑らかさがあります。金管のダイナミックながら柔軟性のある演奏はさすがロス・フィルの金管セクションです。第2曲「王女レイアのテーマ」ホルンのソロが線が細く美しい響きで印象的です。フルートは神秘的な雰囲気を良く醸し出しています。第3曲「リトル・ピープル」は落ち着いたテンポの中で、少し異様で色彩感のある演奏が繰り広げられます。チューバなど低音が印象的です。第4曲「酒場のバンド」はオーケストラというよりジャズバンドの演奏で、少しコミカルですね。ちなみにマーチングバンドの京都橘高校が2018年アメリカローズパレードのフェスタで上手くアレンジしています。

第5曲戦いはマーチ風のスリリングな曲です。有名なモチーフが色々と出てきて楽しく聴くことが出来ます。第6曲王座の間とエンド・タイトルは誰でも聴いたことがある有名なファンファーレで始まり、スケールの大きな壮観な音楽です。さらにスリリングに盛り上がって熱狂的に曲を締めます。とても纏まった選曲だと思います。

ジョン・ウィリアムズの自作自演とは異なる部分が多いですが、メータらしい力強さとスケールの大きさ、ロスフィルのパワーと柔軟性が良く発揮されていて、クラシックとして聴くにも良い名盤です。カップリングの『惑星』も非常に評価が高いダイナミックな名演です。また組曲『未知との遭遇』もカップリングされていて、この一枚で宇宙に関係のある音楽が堪能できます。

ジョン・ウィリアムズ=ベルリン・フィル

ベルリン・フィルの抜群のレヴェルの高さ、ダイナミックでスリリングな名盤
  • 名盤
  • 定番
  • クオリティ
  • スリリング
  • 高音質

超おすすめ:

指揮ジョン・ウィリアムズ
演奏ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

2021年10月,ベルリン,フィルハーモニー (ステレオ/デジタル/ライヴ)

ジョン・ウィリアムズが初めてベルリン・フィルを指揮したライヴ録音です。とにかく、金管セクションの華やかさはさすがベルリン・フィル!でとても爽快に聴けます。最初のオリンピック・ファンファーレの鮮やかな演奏で一気に引き込まれます。

ジョン・ウィリアムズの作品集なので、他の映画音楽も多く入っており、『スターウォーズ』は以下の4曲です。

スターウォーズから

『スター・ウォーズ エピソード5/ 帝国の逆襲』から ヨーダのテーマ
『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』から 王座の間とエンドタイトル
『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』から 王女レイアのテーマ
『スター・ウォーズ エピソード5/ 帝国の逆襲』から 帝国のマーチ

ベルリン・フィルとウィーン・フィルの違いは、ベルリン・フィルのサウンドの抜けの良さです。会場のフィルハーモニーの響きのスピードを活かして、とてもスリリングで爽快な演奏が繰り広げられていきます。ジュラシック・パークのテーマ少し遅めのテンポですが、スピード感のある広がりが感じられ、恐竜たちのジュラシック・パークの

光景が目に浮かんできます。金管が入った時の気分の良さは別格ですね。「スーパーマン」のマーチもさすがで、エネルギーに満ちていて、トランペットの主題は本当に輝かしいです。「レイダースのマーチ」は軽快でかっこよい演奏です。高音質が生きていて、昔の録音では聴けなかった立体的なサウンドになっています。『インディ・ジョーンズ/最後の聖戦』から オートバイとオーケストラのスケルツォは今まで知りませんでしたが、隠れた名曲ですね。ワーグナーの間奏曲のようで吹奏楽で演奏するのに丁度よさそうです。

さて『スターウォーズ』ですが、映画音楽らしいまとまりのクオリティの高さで、さすがベルリン・フィルです。金管のパワーも音色も圧巻です。「ヨーダのテーマ」は開放感のある弦とハイレヴェルな金管で実に様々な表情を見せてくれます。フルートソロも素晴らしいです。「王座の間とエンドタイトル」はオペラのようなスケールの大きな演奏です。トランペットの高音の伸びが心地よいです。弦もイギリス風な格調があり、映画音楽とは思えないクオリティの高さです。ドラマティックな盛り上がりも凄いものがあります。終盤の盛り上がりは重戦車のようなスケールのあるものです。「王女レイアのテーマ」ホルンのレヴェルの高さに圧倒されます。フルートソロも爽やかで味わい深いです。ここで『ET』のテーマが入っています。スリリングでクオリティの高い名演です。「帝国のマーチ」はさすがベルリン・フィルといえる重厚さです。どのパートも非常にハイレヴェルでベルリン・フィルが演奏するとこうなるのか、と感心します。ところで肝心のスターウォーズの「メインタイトル」が入っていないのが少し残念ですが、格段のレヴェルの高さで聴きごたえは十分すぎるほどです。

という訳で、ベルリン・フィルとのライヴは有名なテーマが多く選ばれていて、飽きることなく全曲を聴き通せます。聴いた後はお腹いっぱいですね、

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演奏の映像(DVD,Blu-Ray,他)

ジョン・ウィリアムズ=ベルリン・フィル

  • 名盤
  • 定番
  • スリリング
  • 高音質
  • 高画質

超おすすめ:

日本語字幕
指揮ジョン・ウィリアムズ
演奏ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

2021年10月,ベルリン,フィルハーモニー (ステレオ/デジタル/ライヴ)

ジョン・ウィリアムズ=ウィーン・フィル

ウィーン・フィルの現代的だがコクと深みのある響き
  • 名盤
  • 定番
  • 深み
  • 格調
  • 高画質

超おすすめ:

指揮ジョン・ウィリアムズ
演奏ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

2020年1月18,19日 (ステレオ/デジタル/ライヴ)

ジョン・ウィリアムズがウィーン・フィルを指揮したライヴ映像です。楽友協会大ホールでの演奏で、スターウォーズなどの映画音楽はウィーン・フィルに合わない先入観がありますが、第1曲目から非常にクオリティの高い胸の透くサウンドで驚かされます。録音は高音質です。

ジョン・ウィリアムズの映画音楽が抜粋されて、演奏されていきます。『スター・ウォーズ』からはレベリオン・イズ・リボーン (『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』から)、ルークとレイア (『スター・ウォーズ/ジェダイの帰還』から)、メイン・タイトル (『スター・ウォーズ/新たなる希望』から)の3曲が収録されています。

スターウォーズのみならず、ウィーン・フィルの演奏だと現代音楽の要素を持つ『未知との遭遇』がとても安定したハイレヴェルな演奏になっています。ウィーン・フィルのコクのある弦も良く合っています。ヘドウィグのテーマ (『ハリー・ポッターと賢者の石』から)はさらに豪華でアンネ・ゾフィー・ムターのヴァイオリンソロが入ります。

『E.T』の地上の冒険は名演です。『ジュラシック・パーク』のテーマは少し遅めのテンポでウィーン・フィルらしい渋い音色でスケール大きく盛り上がり、映画音楽というよりクラシックを聴いているんじゃないか、と思わせる所も多いです。この辺りの曲選びも、有名な曲だけではなく、じっくり聴ける曲が多いです。

この後『スターウォーズ』からの抜粋が出てきます。メインタイトルではなく、「ルークとレイア」で始まります。ウィーン・フィルの音色はとても練りこまれていて、ポップスを聴いている感じはしません。木管のアンサンブルも渋い音色です。ジョン・ウィリアムズ自身も円熟してきた気がします。弦の音色は深みがあります。「メイン・タイトル」ウィーン・フィルとは思えぬダイナミックさです。見た感じ前の曲からアタッカで行きたかったのだろうと思いますが、拍手が来てしまったので、一息ついてメインタイトルに入りました。比較的遅めのテンポ取りで、やはり響きが渋く、いぶし銀です。こんなスターウォーズを聴いたのは初めてですね。じっくり味わいながら聴かせてくれます。「帝国のマーチ」

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楽譜・スコア

ジョン・ウィリアムズ作曲の『スターウォーズ』の楽譜・スコアを挙げていきます。

ミニチュアスコアとIMSLPどっちが得?

映画「スター・ウォーズ」の中から5曲を抜粋してまとめられた演奏会用組曲。ジョン・ウィリアムズ氏自身によるオリジナル・スコアです。

電子スコア

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