バルトーク ルーマニア民俗舞曲 Sz.56,Sz.68

ベーラ・バルトーク (Bela Bartok,1881-1945)作曲のルーマニア民俗舞曲 Sz.68 (Roumanian folk dances Sz.68)について、解説おすすめの名盤レビューをしていきます。

ルーマニア民俗舞曲は、少し難しい曲の多いバルトークの作品の中で、オーケストラのための協奏曲(オケコン)と並んで、非常に親しみやすく有名な作品です。演奏時間は6分程度の小品で、ピアノソロ、ヴァイオリンなど多くの楽器のために編曲されています。

オーケストラ版は昔はもっと人気があったような気もしますが、廃盤が多いですね。いずれにしてもバルトークの中では人気曲なので、このページで紹介していきたいと思います。スコア、楽譜までワンストップで紹介しています。

解説

バルトークルーマニア民俗舞曲について解説します。

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ハンガリーの作曲家であるベラ・バルトークはハンガリーを中心に民謡の蒐集(しゅうしゅう)を行っていました。ハンガリーはマジャール人中心の国家ですが、ハンガリー民謡はジプシー(ロマ)の影響も大きく、多様な民謡を蒐集しています。さらに当時は同じハンガリー王国の一部であった隣国ルーマニアにも、多様な民謡があることに気づきました。ルーマニアもジプシーが多い国です。ジプシーは定住せずに移動生活をしながら音楽などを職業にしていました。結婚式などでは、ジプシーの音楽家を招いて演奏してもらっていたようです。そして定住している農民の民謡にも大きな影響を与えたとのことです。もちろん、ジプシーの影響が少ない民謡もあります。

リストやブラームスの頃はハンガリーと言えばほぼジプシーの音楽でしたが、バルトークはコダーイらとも協力し、ジプシーからではなく、実際に各地に足を運び、その地の農民の民謡を録音するなどして蒐集にあたりました。

バルトークはルーマニアのトランシルヴァニア地方を何度も訪れています。以下の場所です。

バルトークは1915年にルーマニアで収集したいくつかの民謡に和声を付けるなどして、6曲から成るピアノの組曲(Sz.56)としました。作曲というより蒐集した民謡をあまり改変せずに編曲した民謡編曲作品です。

また、1917年にはバルトーク自身により、小規模の管弦楽に編曲されました。このオーケストラ版はSz.68という作品番号がついています。

初演は1920年ピロスカ・ヘヴェジのピアノ独奏により行われました。

ルーマニア民俗舞曲の構成

1. 棒踊り
2. 腰帯踊り
3. 足踏み踊り
4. 角笛の踊り
5. ルーマニア風ポルカ
6. 速い踊り

また、親しみやすいメロディから様々な編成に向けて編曲されました。1926年にはセーケイによりヴァイオリンとピアノ版が編曲されました。さらに弦楽合奏版、管楽アンサンブル版も編曲されました。

ピアニストであったバルトーク自身がコンサートで良く演奏していました。

現在では吹奏楽版も編曲され、良く演奏されているようです。

今回はオーケストラ版を中心に、ピアノ版、ヴァイオリン版など聴いていきたいと思います。

おすすめの名盤レビュー

それでは、バルトーク作曲ルーマニア民俗舞曲名盤をレビューしていきましょう。

ドラティ=ミネソタ管弦楽団

  • 名盤
  • 職人的

おすすめ度:

指揮アンタル・ドラティ
演奏ミネソタ管弦楽団

1956年11月,ミネアポリス (ステレオ/デジタル/セッション)

ハンガリー人のドラティとミネソタ管弦楽団の録音です。1956年録音と少し古めですが、音質は安定しています。ドラティはこの小品でもしっかりした演奏です。

第1曲は少し遅めで弦のスケール感があります。第2曲リズミカルでクラのソロが上手いです。第3曲はフルートの神秘的な雰囲気が良いです。第4曲ヴァイオリンが味わい深く、レコードで聴きたい感じです。第5曲、第6曲はそれほど速くはなく、しっかりとした演奏です。

比較的大編成のオケのようで、ドラティの丁寧なまとめもあって、少しスケールが大きい感じですね。ただ、ドラティらしく、舞曲のリズムがしっかりしていて、味わい深さもあります。

オルフェウス室内管弦楽団

  • 名盤
  • 定番
  • クオリティ
  • スリリング

おすすめ度:

演奏オルフェウス室内管弦楽団

(ステレオ/デジタル/セッション)

小編成でレヴェルの高いオルフェウス室内管弦楽団の演奏です。指揮者を置かないアメリカの室内オケです。管理人もこの演奏は昔からよく聴いていました。当時としては、とても上手い楽団だったのですが、現在はレヴェルが上がってきているので、ずば抜けて上手い、という程ではなくなったかもしれませんが、今聴いても十分素晴らしい演奏です。

第1曲はドラティ盤よりは軽快です。管楽器もうまくメリハリがあって、リズミカルな演奏となっています。和声がよく聴こえますが、バルトークは随分おしゃれな和音を付けたようですね。第2曲はクラのソロが上手く、間の取り方も自然です。第3曲のフルート、第4曲のヴァイオリンはとても上手く、民謡の味わい深さをじっくりと聴かせてくれます。第5曲は速めのテンポで盛り上がりますが、アンサンブル力のクオリティが高いです。第6曲はスリリングに熱狂的に盛り上がり爽やかに曲を閉じます。

小品ながら、今聴いても十分楽しめる内容の濃さですね。

イヴァン・フィッシャー=ブダペスト祝祭管弦楽団

  • 名盤
  • 民族的
  • 熱気

超おすすめ:

指揮イヴァン・フィッシャー
演奏ブダペスト祝祭管弦楽団

(ステレオ/デジタル/セッション)

イヴァン・フィッシャーとブダペスト祝祭管弦楽団の録音です。ハンガリーの組み合わせです。

第1曲から速いテンポでリズムを刻んでいきます。やはりハンガリーの隣のルーマニアの民謡だけあって、リズムや強弱などの勘所を良く表現しています。第2曲もリズムと間合いの取り方がとても自然です。第3曲独特の神秘的な雰囲気が良く出ています。第4曲はヴァイオリンの音色に暖かみがあり、味わい深いです。後半はポルタメントのかけ方が自然で良いですね。第5曲、第6曲はとても盛り上がります。弦の編成がどの位なのか分かりませんが、小気味良くアッチェランドしていき熱狂的に曲を締めます。

やはり、バルトークの地元ハンガリーの組み合わせは民族的な響きが良く出ていて良いですね。イヴァン・フィッシャーの速めのテンポ取りも曲に相応しいです。

ピアノ:エレーヌ・グリモー

  • 名盤
  • スリリング
  • 高音質

おすすめ度:

ピアノエレーヌ・グリモー

2010年9月,ベルリン,放送センター (ステレオ/デジタル/セッション)

エレーヌ・グリモーのピアノによるピアノ版組曲(Sz.56)の録音です。新しめの録音で高音質です。

グリモーはフランス人なので、ルーマニアやハンガリーと直接関係は無いと思いますが、ピアノ曲の小品として広く演奏されています。

第1曲はピアノ版だと随分シンプルで、グリモーはさらっと弾いていきます。第2曲とても良い民族的なリズムと間合いを取っています。第3曲とても透明感があり、神秘的な雰囲気です。第4曲はさりげなく味わいのある演奏です。第5曲はテンポが速く激しい舞曲となり、第6曲でスリリングにもりあがり曲を締めます。

ピアノ版はシンプルですが、グリモーはサラッとセンス良く、小気味良く演奏しています。

ヴァイオリン:諏訪内晶子,ピアノ:イタマール・ゴラン

  • 名盤
  • 情熱的
  • 高音質

超おすすめ:

ヴァイオリン諏訪内晶子
ピアノイタマール・ゴラン

2012年1月, (ステレオ/デジタル/セッション)

さてセーケイによるヴァイオリン版です。ヴァイオリンは諏訪内晶子、ピアノ伴奏はイタマール・ゴランです。音質は良く、ヴァイオリンの音色を良く再現しています。

第1曲はしっかりしたピアノ伴奏の上で、(譜面通りか分かりませんが)ジプシーのような弾き方をしてみたり、重音や装飾を上手く使って民族舞曲を情熱的に演奏しています。第2曲は軽妙でテンポは速めです。第3曲はフラジオで神秘的な雰囲気を出しています。第4曲は味わい深さもありますが、軽妙でジプシーのような情熱もあります。第5曲、第6曲は速いテンポで熱狂的な演奏です。激しく盛り上がり情熱的に曲を締めます。

このアルバムはスペインとルーマニアの民謡が取り上げられていて興味深いです。諏訪内晶子はジプシーのような情熱的な演奏を繰り広げています。スペインも結構ジプシーの影響が大きいので、共通点も多いと思います。

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楽譜・スコア

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