ハーリ・ヤーノシュ(コダーイ)

ゾルダン・コダーイ作曲の組曲『ハーリ・ヤーノシュ』は、コダーイの作品の中で一番有名で人気があり、オーケストラファンから吹奏楽ファンまで親しまれています。

組曲『ハーリ・ヤーノシュ』は、6曲から成る組曲ですが、もともとのストーリーが面白いので、楽しめる曲が揃っています。第2曲「ウィーンの音楽時計」は有名ですし、「歌」では民族楽器のツィンバロンを使って雰囲気を出しています。

ドラティフリッチャイショルティら、ハンガリー系の演奏家が取り上げる場合が多いですが、ドイツ人のテンシュテットも名盤を残しています。また、ケルテスは全曲盤(オペラ版)を録音しています。

沢山のおすすめの名盤がありますので、レビュー・比較していきます。

解説

作曲の経緯や曲の特徴について説明します。

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コダーイとハンガリー民謡

ゾルダン・コダーイ (Zoltan Kodaly, 1882~1967)は、南ハンガリーのケチメートで生まれました。父の仕事の関係で各地を移り住む生活をしていました。母はピアノを弾き、女中たちはマジャール(ハンガリー)民謡を歌っている環境で育ちました

ハンガリーは、オーストリア=ハンガリー帝国として、長い間オーストリア皇帝の傘下にありましたが、民族的には8割方マジャール系といわれています。民族も文化も全く違うのです。

ハンガリーというとチェコに近いイメージがありましたが、実際はチェコは大分西側で、ハンガリーはオーストリアの東側にあり、スロヴァキアの南、ルーマニアの西です。ルーマニアまでいくとかなりヨーロッパとは違った雰囲気になります。ただ、マジャール人が住んでいるのはほとんどハンガリーで、2/3はハンガリーに住んでいるということで、フィンランドと同じように孤立した民族といえそうです。

ハンガリーのマジャール系民族は9~10世紀に東から来たようです。テュルク(トルコ)系民族が元になり、そこに各国の白人が混血した民族のようです。なおマジャール語はウラル語族でフィンランドと同系統です。DNAで見ると、元々はモンゴロイドですが、白人(コーカソイド)と混血して、白人のDNAが中心になっているようです。長い時間をかけて、長い距離を移動してきたため、それ以外にも混血が多くDNAも一筋縄ではなさそうです。

コダーイは作曲家としてハンガリー国民音楽の創造に尽くし、また、1905年からマジャール民謡の収集と研究を始め、大きな功績を残しました。

あらすじ

ハーリ・ヤーノシュはもともと4幕物のオペラ『5つの冒険』として作曲されました。ドイツのジングシュピュールに近い形で、セリフの部分がかなり多いですけれど。

ヤーノシュ・ガレー(1812~1853)の詩を元にして、ベーラ・ポーリーが台本を書きました。手元の解説書類だと結構いろいろ違いがありますし、YouTube(字幕なし)の映像も参考にして書きました。オペラの演出は監督によって変わりますが、大枠こんな筋書き(あらすじ)のようです。

歌劇「5つの冒険」のあらすじ

19世紀のハンガリーの村の居酒屋で、初老の話好きのハーリは昔ばなしを始めます。

その時、第1曲「前奏曲」が始まり、オーケストラが大きな「くしゃみ」をします。ハンガリーには「聞き手がくしゃみをするとその話は本当だ」という言い伝えがあるのです。

ハーリは若いころに軽騎兵で、恋人のエルザがいました。しかし、ある日、ナポレオンの妃のマリア・ルイザに惚れられて、彼女の寵愛をうけるようになります。(話が随分ジャンプしますね。)

ルイザとハーリの浮気に気づいたナポレオンは大軍を挙げます。ハーリはオーストリア=ハンガリー軍を率いて、ナポレオンを迎え撃ちます。

オーストリア=ハンガリー軍は善戦しますが、ナポレオン軍には歯が立たず、退却を始めます。そこにハーリが出てきて、敵を撃退してしまいます。ここで、第4曲「戦争とナポレオンの敗北」が出てきます。本当に数分でナポレオンを撃退してしまうんです。そしてナポレオン軍を降伏させてしまいます。(そんな史実はありませんので、念のため)

ハーリはウィーンに凱旋します。皇帝は彼を褒めたたえ、貴族に推挙します。ハーリを宮廷に招きますが、登場したのは現在のハーリでした。ここで第6曲「皇帝たちの入場が始まります。田舎者のハーリは農民の娘さんやハンガリーに居そうな太ったおばさんと民謡を踊ったりして、皆あきれてしまいます。ハーリは結局エルザとの素朴な生活を選び、マリア・ルイザをおいて、故郷に帰ります。

ハーリの昔話なので、若いころの理想のハーリが中心ですけど、たまに現在の初老のハーリが現れたりして、現在とホラ話が混ざっていて巧妙です。

フィナーレの「歌」の場面は感動的で、初老のハーリの目の前に若いハーリが現れ、コラールのフーガの合唱から若いハーリとエルザの2重唱になります。ハーリの壮大なホラ話のこの部分は最初の「くしゃみ」の暗示の通り、オペラの中で本当になったのではないでしょうか。

このオペラは1926年に初演され、ハンガリー国内では再演もされてきたようです。そして、1960年代になってドイツ、スイス、アメリカなどでも上演されたとか。今はあまり上演されないようですが、上演しようと思えば記録は沢山残っているはずです。

下に挙げたYouTubeのオペラ映像を観た感じでは、字幕が無いので分かりにくいのですが、それでも飽きずに観られるくらいです。そしてフィナーレでは凄く感動できます。質の高いオペラだと思いました。最後の部分は組曲に入れられませんから、オペラの全曲盤も価値のあるものだということですね。オペラを観ないと『ハーリ・ヤーノシュ』の真価もコダーイの才能も分かりませんね。

さて、コダーイはこのオペラから6曲抜き出して、組曲『ハーリ・ヤーノシュ』としました。

組曲の構成

組曲『ハーリ・ヤーノシュ』は以下の曲から構成されています。組曲の場合は、オペラのような壮大なフィナーレはありません。第6曲で、ハーリの化けの皮が剥がれて、最後はバスドラムの一撃でコミカルに終わります。

組曲『ハーリ・ヤーノシュ』

1. 前奏曲 – おどぎ話ははじまる
2. ウィーンの音楽時計 (Viennese Musical Clock)
3. 歌
4. 戦争とナポレオンの敗北
5. 間奏曲
6. 皇帝たちの入場

民族楽器ツィンバロン

第3曲「歌」、第5曲「間奏曲」では、ハンガリーの民族楽器である“ツィンバロン”が活躍します。特に「歌」の後半ではグリッサンドで神秘的な響きです。ツィンバロンとはどんな楽器なのでしょうか?

簡単に言えば、チェンバロの蓋を外して、キーボード機構を外せば大体似たような楽器になります。大きな特徴は、弦を上から叩くことです。逆に言うと、ツィンバロンのような古い民族楽器にキーボードをつけて演奏しやすくした楽器がチェンバロなんです。

なお、ツィンバロンが準備できない場合は、チェンバロでも代用可能となっています。組曲『ハーリ・ヤーノシュ』の人気が衰えない限りツィンバロンとその奏者の需要はあるので、世界で数人ツィンバロン奏者がいます。日本人奏者も何人かいます。

オーケストラはプロ・アマ問わず、代用楽器は使わないで、プロのツィンバロン奏者を依頼します。チェンバロとツィンバロンでは、音色が全然違いますから。吹奏楽では自由に編曲できるので、ツィンバロンを入れることは少ないですが、CDをリリースするような団体はツィンバロンを入れてますね。

おすすめCD、名盤の紹介 (組曲)

フリッチャイ=ベルリン放送交響楽団

ハンガリーの巨匠フリッチャイによる力強い名盤
  • 名盤
  • 定番
  • 民族的
  • 白熱
  • ダイナミック

超おすすめ:

指揮フェレンツ・フリッチャイ
演奏ベルリン放送交響楽団

1961年 (ステレオ/アナログ/セッション)

フリッチャイとベルリン放送交響楽団のCDは、定番の名演です。天才フリッチャイの1961年録音で、フリッチャイの残した名盤の中で音質は良いと言えます。

第1曲「くしゃみ」はとても良いです。その後は、低弦から始まるフーガ的なところですが、何か凄くシリアスな感じです。この辺りから盛り上げていくところに確かに凄い才能を感じます。かなりの緊張感をもって盛り上がります。「ウィーンの音楽時計」はスタンダードといってもいいくらいで、コダーイのオーケストレーションの良さもよく分かります。このページのディスクの中で一番名演だと思います。

「歌」も名演ですね。ハンガリーっぽいヴィオラのソロと、土の香りがして鮮やかなツィンバロンのアンサンブルです。ツィンバロンの民族的な響きが一番よく採れています。ツィンバロンが響き渡っていて、グリッサンドのところなど他のCDにはない魅力です。

後半は早めのテンポですね。サックスのソロはとてもユニークです。このサックスは是非聴いてみてほしいです。フリッチャイはこの曲が冗談音楽であることを忘れていないようですね。これが普通のテンポだと思います。ベルリン放送響は凄いアンサンブル力です。でも第1曲のシリアスさは何だったのでしょう。

また、なかなか民族的なところが強調されています。ドイツのオケですが、ハンガリーを感じさせます。実はこの演奏は、私が中学のころから聴いていたCDで、その時は飽きるほど聴いていたのですが、久々に聴いてみてこの名盤の面白さを再発見しました。

ドラティ=ミネアポリス交響楽団

  • 名盤
  • ダイナミック

おすすめ度:

指揮アンタル・ドラティ
演奏ミネアポリス交響楽団

1956年11月 (ステレオ/アナログ/セッション)

ドラティとミネアポリス交響楽団の録音です。ドラティのハーリ・ヤーノシュはフィルハーモニア・フンガリカとの録音がメジャーですが、技術的に今一つな所もあってか、他の演奏もリリースされています。その中でミネアポリス交響楽団との録音は評価が高いようです。音質は1956年とは思えないしっかりしたもので、色彩感も上手く捉えています。

第1曲のくしゃみの所は、アメリカのオケらしくしっかりしたアンサンブルです。その後、重厚とも言える響きになり、フーガ風の所はオケのレヴェルの高さを感じさせます。盛り上がる所ではとてもダイナミックなサウンドです。「ウィーンの音楽時計」しっかりしたアンサンブルと色彩感で、とても良い演奏です。「歌」はチェロが渋い演奏で味わい深いです。ドラティの指揮もとても丁寧で、細部までしっかりまとめられています。ツィンバロンはしっかり演奏していますが、上手く録音されていないですね。1956年録音なので、他の部分が良く録音されすぎなんじゃないか、とも思いますけど。

「間奏曲」はツィンバロンも含めて、しっかりしたアンサンブルです。ミネアポリス響の上手さはかなりのものですね。中間部はのどかな田園風景を思わせるような名演で、クラやフルートのソロも印象的です。「皇帝たちの入場」

は、冗談音楽らしい大仰な表現で楽しめます。ドラティのテンポ設定も素晴らしく、終盤の遅くする所など、上手くスケール感を引き出しています。

ドラティ=フィルハーモニア・フンガリカ

ハンガリー的なふくよかな響き、スタンダードど呼べる名盤
  • 名盤
  • 定番
  • 色彩的
  • 民族的
  • ダイナミック

おすすめ度:

指揮アンタル・ドラティ
演奏フィルハーモニア・フンガリカ

1968-69年 (ステレオ/アナログ/セッション)

ドラティはコダーイの曲集を手兵のデトロイト響ではなく、フィルハーモニア・フンガリカを起用しています。このオーケストラは亡命したハンガリー人を中心にウィーンで結成されています。国際的なメンバーで構成され、日本人のコンサートマスターも居たそうです。フィルハーモニア・フンガリカは決してレヴェルの低いオケではありませんし、やはりハンガリーらしい音色を持っているオケです。ドラティの職人的で遅めのテンポだと、ハンガリーらしいゆったりした感じも出ます。スタンダードのスタイルでしっかり演奏しています。

第1曲の「くしゃみ」のところは、ちょっと物足りないですが、フィルハーモニカ・フンガリカは新しいオケだからか、たまに意外なところで音が薄くなったりします。その後のクラリネットのソロは非常に素晴らしいです。ハンガリーらしい音色と落ち着いた歌い方で、木管のソロのレヴェルは文句なく高いです。

「ウィーンの音楽時計」は名演です。ウィーンで活動しているのと関係があるか分かりませんが、少しウィーン的な響きもあるので合いますね。ドラティのしっかりしたテンポ取りも良いのだと思います。フルートの音色がまたハンガリー的で味があります。第3曲「歌」では、柔らかいヴィオラのソロと、ツィンバロンの響きが良くマッチしていて良いですね。ツィンバロンの音色が綺麗に聴こえてきます。

その後の3曲は、このオーケストラが意外に厚みのある響きを持っていることが分かります。あくまで、ふくよかな音色なのですが、ドラディの遅めのテンポでも金管楽器中心に、オケ全体で緊張感を失わず、充実感があります。

最後の第6曲に至っては、他の演奏に比べるとスローモーション気味のテンポなのですが、これが絶妙なテンポでスケールの大きなサウンドを生み出しています。このテンポ感がはたまらないです。最後はアッチェランドして、あっという間に終わってしまいます。

全体的に丁寧で暖かい音色がコダーイにあっています。また音質もなかなか良くて、1973年の録音とは思えません。

ネーメ・ヤルヴィ=シカゴ交響楽団

N.ヤルヴィの絶妙なテンポ取り、シカゴ響のパワーも全開
  • 名盤
  • 定番
  • 色彩的
  • 民族的
  • ダイナミック
  • 高音質

超おすすめ:

指揮ネーメ・ヤルヴィ
演奏シカゴ交響楽団

1990年2月,シカゴ・オーケストラ・ホール (ステレオ/デジタル/ライヴ)

ネーメ・ヤルヴィとシカゴ響という珍しい組み合わせの、コダーイの管弦楽曲集です。私は、このディスクの『孔雀変奏曲』がとても気に入っています。

ハーリヤーノシュは一応コミカルな冗談音楽に近い性格の組曲ですが、シカゴ響は低音が効いていて、たまに迫力のある和音が聴こえてググっと来ます。それに低音域がひんやりしていて、シリアスな雰囲気さえある気がします。

第1曲は「くしゃみ」は品が良い感じですが、その後のフーガが少しバルトークみたいにシリアスに聴こえます。これはこれで民族的な味があるなと思いますし、何か時代背景みたいなものもあったかなぁと考えてみたくなりますが、そのうち調べてみたいと思います。

第3曲「歌」では、ツィンバロンが非常に良く聴こえて、ツィンバロン協奏曲のようです。シカゴ響の木管のソロも味がありますが、ツィンバロンの響きは民族的ですし、華麗なところもありますね。音色は琴みたいですけれど、弦の数はハープシコードを上から叩いているような楽器ですから、音階や分散和音などで速く動くと結構、華麗でまるで孔雀が羽を広げたようです。(曲が違うか…)

続く第4曲はドラティと同じで、ネーメ・ヤルヴィも少し遅めの絶妙なテンポ感です。こうするとスケールの大きさも出るのです。金管楽器もとても上手いです。グリッサンドは個性的ですね。第5曲のテンポ感もいいですね。後半のダイナミックさは特筆ものです。金管も上手いし、弦楽器もクールでシャープです。

録音は悪くありませんが、シャンドスとしては響きが少ないような感じがします。会場のせいかも知れませんし、シカゴ響は響きの少ないところで筋肉質のサウンドを楽しむことができるので、そういうセッティングかも知れません。

全体としては、ただの楽しい『ハーリ・ヤーノシュ』ではなくて、シリアスなところのある演奏でした。個性的なところもあるし、シカゴ響は上手いし、とても楽しめます

セル=クリーヴランド管弦楽団

  • 名盤
  • 定番
  • 民族的
  • ダイナミック

おすすめ度:

指揮ジョージ・セル
演奏クリーヴランド管弦楽団

1969年1月,クリーヴランド,セヴェランス・ホール (ステレオ/アナログ/セッション)

セルとクリーヴランド管弦楽団はかなりの名盤です。どちらかというとチェコの音楽が得意なコンビですが、ハンガリーの民族的な雰囲気も出せるようですね。クリーヴランド管弦楽団の安定したアンサンブルとジョージ・セルの丁寧なスコアの読み込みのおかげで、細かいところまで神経が行き届いていて、第3曲「歌」などは新しい発見があります。

第4曲以降もテンポ選びもセンスが良く、少し速めなテンポで進めていきます。サックスなどはあまり大胆ではなく、基本的に真面目で真摯な演奏ですね。第5曲の中間部などは、落ち着いたテンポでチェコの音楽を感じさせます。第6曲も同様で曲の雰囲気をよく出していますが、基本的に真摯でスタンダードなアプローチです。

これでもう少し新しい録音だったら、と思います。この曲は、1960年代やそれ以前の名盤が多いですね。

テンシュテット=ロンドン・フィル

  • 名盤
  • 定番
  • 色彩的
  • 民族的
  • ダイナミック
  • 高音質

おすすめ度:

指揮クラウス・テンシュテット
演奏ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団

(ステレオ/デジタル/セッション)

一見、ハンガリーと関係なさそうなテンシュテットがこの曲を録音しているのは意外です。テンシュテットと言えばマーラーやワーグナーの名演を思い出しますから。一方、ロンドンフィルのほうは、ショルティが指揮者を務めていたこともあって、コダーイやバルトークに縁があるオーケストラでした。

実際、聴いてみると、ハンガリー人とはやはり少し違う所がある気がします。でも、第1曲など、かなりの熱演です。また、ロンドン・フィルには当然ハンガリー的な民族性や響きのふくよかさもないのですが、『ハーリ・ヤーノシュ』は、民族性とは関係なくても名曲なんだな、と思います。第2曲も色彩的で好演です。

第3曲「歌」は味わい深いです。テンシュテットの情熱的なところが、コダーイとも共鳴するところがあるのではないかと思います。民族的な繊細な和声もとても繊細で色彩的に響いています。ゲシュトップのホルンなどは、ハンガリー系の指揮者はかなり荒く吹かせるのですが、テンシュテットは繊細さが勝っているようです。いずれにせよ、十分味わい深いです。

第4曲以降は、民族的な要素はさらに後退して、少しドラマティックに展開していきます。むしろスタイリッシュですが、クールでは無いので物足りなさを感じることはないですね。第5曲「間奏曲」はツィンバロンも入る曲ですが、ロマンティックで中間部のホルンの個所など、ワーグナーやブルックナーを思い出してしまいます。

第5曲は情熱的で少しドラマティックでしょうか。テンシュテットらしいというか、情熱的なところがあり、センスも良いので、案外コダーイとも相性がいいのかも知れませんね。

カップリングの「キージェ中尉」も名演で、それも含めて名盤です。東側の指揮者なので、東欧やロシアの音楽もできるのかも知れませんけど、「キージェ中尉」など、しなやかさもあって、普通のロシアの指揮者のCDよりも名盤です。

ショルティ⁼ロンドン・フィル (1955年)

若きショルティの刺激的なハーリ・ヤーノシュ
  • 名盤
  • 定番
  • 民族的
  • 白熱
  • ダイナミック
  • モノラル

おすすめ度:

指揮ゲオルグ・ショルティ
演奏ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団

1955年,ロンドン (モノラル/アナログ/セッション)

ショルティとロンドン・フィルの録音です。ショルティはコダーイのほうは、シカゴ響ではなくロンドン・フィルと録音しました。ヤルヴィ盤を聴くに、やはりシカゴ響と録音してほしい気もしましたが。1955年とショルティがかなり若い時の録音でモノラル録音で、それを考慮すれば若いころのショルティの演奏として楽しめます。

第1曲くしゃみの描写が上手く、シャープな表現です。その後はハンガリーらしい民族的な雰囲気でダイナミックに盛り上がっていきます。第2曲「ウィーンの音楽時計」は速いテンポで一気果敢に演奏しています。

第3曲「歌」はかなりの聴き物です。若いころのショルティのインスピレーションを感じます。テンポは速めですが、ハンガリーらしい味があります。ツィンバロンもとてもエキゾチックに響き渡っています。録音が古いため、奥行きの狭さを感じますが、じっくり聴くとかなり味わい深い演奏です。

第4曲はとてもメリハリがあり、鋭さがあります。中間部のホルンが良い味を出しています。民族舞踊風な所は絶妙なテンポ取りです。第5曲はかなりの速さでとてもシャープな演奏です。ラストも凄い速さで締めくくります。

若いころのショルティといえば、スッペの序曲集などを思い出しますが、凄くテンポが速くて刺激的な表現ですね。ロンドン・フィルやウィーン・フィルの指揮台に立っているので、評価は高かったのだろうと思います。

デュトワ=モントリオール交響楽団

  • 名盤
  • 定番
  • 色彩感
  • 高音質

指揮シャルル・デュトワ
演奏モントリオール交響楽団

(ステレオ/デジタル/セッション)

デュトワとモントリオール交響楽団の録音です。サウンドの透明感や管楽器の上手さ、録音は普段通りの良さです。このコンビは民族的な味わいがもともと希薄なので、別のところで勝負していますやはり管楽器の上手さと色彩感は素晴らしいですからね。

このコンビは民族的な味わいがもともと希薄なので、別のところで勝負すれば良いのですが、やはり冗談音楽の面白さをうまく表現できなかったのかなと思います。ダイナミックさがないと面白くないですね。また色彩感も普段より後退しています。

第1曲くしゃみの所から非常に色彩感溢れる演奏です。その後、暗い雰囲気になり、そのままシリアスに盛り上がっていきます。第2曲「ウィーンの音楽時計」は、色彩感を活かして好演です。

第3曲「歌」はモントリオール響の響きは民族性はあまり感じませんが、弱音での独特の暗さを上手く再現しています。また、ツィンバロンの響きはとても良いです。「戦争とナポレオンの敗北」は金管がとても良い音色で、レヴェルの高い演奏です。「皇帝たちの入場」はとても色彩的な響きが魅力です。クレッシェンドしていくとレヴェルの高い金管がしなやかに演奏していきます。最後は巻いて終わるのですが、冗談音楽としてはスタイリッシュすぎかも、と思います。

『孔雀の主題による変奏曲』が名演なのは内容がシリアスだからかも知れませんね。

イヴァン・フィッシャー=ブダペスト祝祭管弦楽団

  • 名盤
  • シャープ
  • スリリング
  • 高音質

指揮イヴァン・フィッシャー
演奏ブダペスト祝祭管弦楽団

(ステレオ/デジタル/セッション)

ハンガリーの指揮者イヴァン・フィッシャーとブダペスト祝祭管弦楽団の演奏です。これまでのハンガリー系の演奏を聴いてくると、この鮮烈さにはとても驚きました。テンポも全体的に速めです。まず最初の「くしゃみ」がとても鮮烈です。それでもハンガリーらしさは全く失っていません。指揮者のイヴァン・フィッシャーもブダペスト祝祭管弦楽団も、もちろんハンガリーの演奏家です。これだけクオリティのが高く、コダーイの対位法が綺麗に聴こえるような理知的なところがありますが、各楽器の音色のせいか、非常にハンガリーらしい土の香りも感じます。

ブダペスト祝祭管弦楽団は、弦も管もモダンでレヴェルが高いのですが、綺麗な弦セクションの響きの中にもハンガリーらしい、くすんだ音色が良く出ています。金管楽器もダイナミックでハンガリーらしいですね。でも、音程は非常に良いので、和音もきれいですし、アンサンブルの見通しが良いので、いままであまり聴こえなかった内旋や伴奏のパートが良く聴こえます

民族楽器のツィンバロンはこのテンポだと大変なんじゃないかと思いますが、「間奏曲」もきちんと弾けています。

この曲への固定観念から解放されたというか、目から鱗がおちるセンスの良さに脱帽です。最後に音質も大変良いです。「戦争とナポレオンの敗北」は、冗談音楽らしいテンポ取りで、楽しく聴けます。トロンボーンもいい味を出しています。「間奏曲」は、

全曲版のお薦めCD、名盤の紹介

全曲版はCDで2種類リリースされています。また、YouTubeにオペラの動画が上がっています。

オペラ「ハーリ・ヤーノシュ」

YouTubeには舞台がそのままアップロードされています。全部で2時間30分くらいです。ジングシュピュールとはいえ、4幕物なので、大規模で本格的なオペラの長さですね。あのストーリーでそんなに長い作品になるのかなぁと、思いつつ再生してみると、ちょっとオーケストラの音がひどいですね。どこで録音したのでしょう…でも、映像が見られるのは非常に貴重なので、良いと思います。何語か分かりませんが、字幕はありません。

始まってみると実に立派な舞台です。7分ごろに組曲の第1曲が入っていますね。「歌」の旋律が出てきます。ほとんどはセリフで会話のやり取りで、オーケストラが演奏するの機会は少ないですね。民族楽器が民謡を奏でているところでセリフのやり取りがある場面が続きます。

0:42ごろに第4曲「間奏曲」が演奏されています。0:57ごろに第2曲「ウィーンの音楽時計」が入っています。

1:19ごろから、第3曲「戦争とナポレオンの敗北」が出てきます。その後、ナポレオン王妃と妻エルザがヤーノシュをめぐって痴話げんかを繰り広げています。あらすじを知っていれば意外と楽しめますね。

1:58ごろから、第5曲「皇帝たちの入場」が演奏されます。ハーリ・ヤーノシュが入ってきますが、あまりの田舎者臭さにあきれて貴族たちは出て行ってしまいます。

最後は2:15位から「歌」を合唱で歌って幕となります。そして、それは若いころのハーリとエルザの2重唱となり、この個所はとても感動的ですね。これを短く編曲して第3曲「歌」にしたようです。単にホラ話をこっけいに描いた、というのとは違うのですよね。

こういう質の良い映像が、きれいな音と字幕付きでリリースされるといいですね。

ケルテス=ロンドン交響楽団

Orchestral Works (Coll)
  • 名盤

おすすめ度:

Orchestral Works (Coll)
5つ星のうち4.7レビュー数:18個の評価
在庫情報: 残り1点

コダーイ:管弦楽曲集:MP3ダウンロード
5つ星のうち4.7レビュー数:18個の評価

ハンガリー人の指揮者ケルテスによる全曲版です。輸入盤ですので、対訳などは期待できないですし、外国語のセリフが続きます。

ただ各トラックの最初に英語でナレーションが入っています。ぱっと英語が聞き取れれば、これで十分かも知れません。セリフは英語ではないです。ケルテス=ロンドン交響楽団なので、かなりレベルが高い名演です。録音も良いですね。

やはり第4幕のフィナーレ付近は良い音楽ですね。映像があればもっと良いのですけれど。英語のナレーションは親切なのですが、感動的なフィナーレやその前の数曲では、ちょっと邪魔かも知れません。

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スコア・楽譜

ハーリ・ヤーノシュのスコア・楽譜を紹介します。

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