ガブリエル・フォーレ (Gabriel Faure,1845-1924)作曲の組曲『マスクとベルガマスク』作品112 (Masques et Bergamasques)について、解説とおすすめの名盤レビューをしていきます。スコアも紹介します。
解説
フォーレのマスクとベルガマスクについて解説します。
『マスクとベルガマスク』は、一幕の舞踊付きディヴェルティスマンです。ポール・ヴェルレーヌ『艶なる宴』を原作とした作品です。
1918年秋にモナコのアルベール一世から舞台音楽の委嘱を受けました。1919年4月10日にモナコのモンテカルロにて初演が行われ、成功しました。翌年にはパリのオペラ・コミック座で上演され、長い間その劇場のレパートリーに入っていました。
オリジナルの舞踏音楽は8曲から成り立っています。その中からフォーレは4曲選び、管弦楽組曲としました。
第1曲:序曲
第2曲:メヌエット
第3曲:ガヴォット
第4曲:パストラーレ
新古典主義のように、バロック時代のフランス風組曲になっています。「序曲」はフランス風序曲ではないのですね。「メヌエット」は少ししゃれていますが、基本的にフランス風のメヌエットです。「ガヴォット」もバロック時代のガヴォットに近いですが、完全な4拍子に聴こえるので、少し違う気がします。「パストラーレ」はコレッリのクリスマス協奏曲のパストラーレに近いように聴こえます。ただ、宗教色はあまりないです。
時代的にも新古典主義の流れの中で出てきた作品と思います。ただフォーレなりにバロック風に作曲してみた、という感じで、親しみやすいですが、バロック音楽についての理解は浅いような気がします。
おすすめの名盤レビュー
それでは、フォーレ作曲『マスクとベルガマスク』の名盤をレビューしていきましょう。
クリヴィヌ=リヨン国立管弦楽団
クリヴィヌとリヨン国立管弦楽団の録音です。1988年録音ですが、とても良い音質です。透明感があり、繊細なアンサンブルでクリヴィヌの演奏の中でも最も素晴らしいものの一つと思います。
第1曲「序曲」は速めのテンポで、しなやかで艶やかさもあります。弦の音色がとても素晴らしいです。リヨン国立管弦楽団だけあって実力十分で、クリヴィヌの目指す演奏がかなり高いレヴェルで出来ています。第2曲「メヌエット」は舞曲らしい速めのテンポ取りでリズムもしっかりしていてメヌエットらしいです。
第3曲「ガヴォット」も舞曲らしいリズムで、メリハリのある演奏です。フォーレのメロディが良く楽しめます。中間部は弦の響きの美しさ、管楽器の色彩感など素朴な中にも美しさのある演奏です。第4曲「パストラーレ」は少し速め位でしょうか。なめらかな管楽器の音色が印象的です。線の細い響きの中に、管楽器が繊細に絡みます。
この曲は、それほど沢山聴いたわけでは無いし、1回アマオケで演奏しましたけど、何か目が覚めるような、目から沢山の鱗(うろこ)が落ちるような超名演です。
アンセルメ=スイスロマンド管弦楽団の演奏は、この曲の定番です。録音は古めですが、十分聴けます。曲順が異なるようですね。
「序曲」から軽快で色彩的な演奏で楽しめます。「パストラーレ」は少し速めのテンポで色彩感があり、精妙な表現です。バロック時代のパストラーレと異なり宗教色はあまり濃くない感じです。フォーレらしい響きを自然に出しています。「メヌエット」はフランス風な気品も感じられます。「ガヴォット」はリズミカルで聴きやすいです。
リズム感の良さはアンセルメがバレエ指揮者であったことを再認識させられます。
山田和樹=スイス・ロマンド管弦楽団
山田和樹=スイスロマンド管弦楽団の演奏です。昔、アンセルメが録音した名盤があるので、そのオマージュでしょうか。
「序曲」はしなやかさと軽快さがあり、色彩的な演奏で楽しめます。細かくスコアを読みこんで聴かせ所を上手く表現しています。「メヌエット」は、気品がある丁寧な演奏です。上品すぎて、もう少し鳴らしてもいいように思いますけれど、編成を小さめにしてあるのかも知れません。「ガヴォット」もリズミカルですが上品ですね。中間部は丁寧ですが、もう少しリズム感が欲しいですね。「パストラーレ」は、透明感があり、美しさのある演奏です。ただアンセルメと違いフォーレらしい響きは聴こえない感じです。
全体的にバロックの演奏方法についてはまだまだな感じです。山田和樹の丁寧さが裏目に出たのかも知れません。アンセルメの凄さを再認識した感じです。まあこのディスクのメインはこの曲では無いので…「アルルの女」は名演です。
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楽譜・スコア
フォーレ作曲のマスクとベルガマスクの楽譜・スコアを挙げていきます。