ジローラモ・フレスコバルディ (Girolamo Frescobaldi,1583-1643)作曲のフォリアによるアリア (Aria di Folia)について、解説とおすすめの名盤レビューをしていきます。
一般的に知られているものではありませんが、フレスコバルディ好きには有名な曲です。和声進行の独特さが素晴らしく、これ以上ない位、シチリアーナの雰囲気を出し切っています。フレスコバルディはこういった世俗曲が多く、多少対位法は出てくるものの、アマチュアでも十分に弾ける曲です。リュートやギターなどに編曲されたりもしていますが、非常に良く合います。
解説
フレスコバルディの『フォリアによるパルティータ』について解説します。
聴けば良さが分かる4分程度の曲で、正直、聴いた通りです。解説の必要はない気もしますが、一応書いてみます。
この曲はフレスコバルディのコレンテ集に収録されています。コレンテはイタリア語で、フランス語のクーラントなら、ヘンデルの『水上の音楽』などに出てくるので、知っている人も多いと思います。3拍子系の舞曲ですが、譜面を見たり聴いたりした感じでは、この曲はシチリアーナだと思います。また、低音の主題を繰り返し、変奏していく、シャコンヌ(イタリア語ではチャッコーナ)でもあります。
フレスコバルディより前の時代のチャッコーナは、メルラやモンテヴェルディの作品が有名です。メルラのチャッコーナはCDがあればどこかで紹介したいと思いますが、YouTubeでご覧の通りです。イタリア風の即興の多い典型的で楽しめるチャッコーナです。
イタリア語では「l’Aria di Folia」です。しかし、フォリアの主題は出てきませんし、フォリアの和声進行もフォリアとは少し違う気がします。直訳すると「フォリアのアリア」、意訳すると「フォリアが歌ったアリア」または「フォリアのためのアリア」という意味合いなのかな、と思います。なお、フレスコバルディも他に「フォリアの主題による変奏曲」を作曲しています。フォリアというのは、”狂った人”という意味で、今でいえばピエロの一種でしょうか。(チェンバロの先生に聞いてみたけれど、お茶を濁されました、笑)
フレスコバルディらしいユニークで味わい深い和声進行で、こういうのは同じイタリア人のモンテヴェルディやメルラ、弟子のドイツ人フローベルガーからは聴くことが出来ない音楽です。しかし、筆者の上の解説が正しければ、フォリアの心情をこれ以上ない位、上手く表現していると思います。
おすすめの名盤レビュー
それでは、フレスコバルディ作曲の『フォリアによるパルティータ』の名盤をレビューしていきましょう。
YouTubeにいくつか上がっていますが、CDやアマゾンミュージックには他にもいくつか録音があり、YouTubeよりクオリティが高いですし、他のコレンテや libro primoなど、似た名曲も一緒になっています。
色々聞いてみた中で、このジャン=マルク・エイムスの演奏が一番スタンダードで表現が良く、味わい深い演奏でした。テンポは速めですが、この速めのテンポの中で、感情表現をするととても効果的です。それにシャコンヌの繰り返しの感覚も出ますし、シチリアーナの味わいも自然に出てきます。やはり、まじめな演奏も良いのですが、フレスコバルディは自由に弾くのが一番いいです。それが一番良く実践できているのがこの演奏です。
フレスコバルディ・ボックス
このボックスに入っている演奏の良しあしは、かなり好みが分かれそうです。小型のチェンバロで弾いていると思われ、雰囲気を出そうとしていますが、弱音器を使っているため、少しわざとらしい感じがします。悪い演奏ではありませんが、もう少し味わい深さがあってもいいかな、と思います。
チェンバロの大御所レオンハルトによる演奏です。フレスコバルディを特別視することはなく、インテンポで演奏しています。テンポはとても相応しいと思います。ただ、味わい深い所で少しルバートするとか、そういう表現もそれほどありません。その代わり弱音器を使ったりとわざとらしい表現もなく、スタンダードというに相応しいです。曲が持っている味わい深さは、自然に出ていますが、あまり感情的に共感して弾いているというより、少し奥ゆかしい表現だと思います。イタリアの音楽なので、もっと熱く演奏してもいいのでは?という気もしますけれど、レオンハルトはオランダ人ですね。
セルジオ・ヴァルトロの演奏です。とてもテンポが遅く、シャコンヌのリズム感は失いがちですが、あえて思い切りテンポを落として、この曲を10分かけて味わい尽くす、という演奏です。好みは分かれそうですが、こういう演奏も貴重ですね。
CD,MP3をさらに探す
楽譜・スコア
フレスコバルディ作曲の『フォリアによるパルティータ』の楽譜は、銀座ヤマハ、アカデミアミュージック、カマクラムジカあたりで相談してみてください。IMSLPにもあります。