ジュゼッペ・ヴェルディ (Giuseppe Verdi, 1813~1901) の歌劇『シチリア島の夕べの祈り』について解説と主に運命の力序曲の名盤のレビューを行っていきます。
解説
1855年にパリで開催された第1回万国博覧会のために作曲され、1854年に発表されました。1855年にオペラ座で初演されて大成功を収めました。
物語は1822年にフランス軍がシチリア島を占領した時、フランス軍の圧政に反抗して、シチリア人がテロを盛んにおこなったという、史実に基づいたものです。
「シチリア島の大暴動」と言われています。
前王家の遺児エレナ公女とシチリアで王家の回復を願うアルリーゴは恋仲となります。しかし、アルリーゴが現総督の息子であることがわかります。暴徒によって総督が殺害されるとき、それを庇おうとしてアルリーゴも殺されてしまいます。エレナはアルリーゴの後を追って死にます。
序曲は本体『ジョヴァンナ・ダルコ』(ジャンヌ・ダルク)のために書かれましたが、このオペラにも相応しいので、転用したものです。
序曲のみ演奏されることが多く、とても有名な曲となっています。この序曲は、どう聴いてもシチリア島のイメージしか思い浮かばないので、不思議ですね。
おすすめの名盤レビュー
ヴェルディの『シチリア島の夕べの祈り』序曲について、おすすめの名盤をレビューしていきます。
アバド=ベルリン・フィル
★アバドのヴェルディの中でも最高の演奏。感動的名盤!
指揮:クラウディオ・アバド、ベルリン・フィルハーモニー
ヴェルディ:序曲・前奏曲集
4.1/5.0レビュー数:7個
アバドはベルリン・フィルにイタリアン・カンタービレの演奏方法を植え付けていて、最初から南イタリアの雰囲気満点です。
最初のクレッシェンドがとてもスリリングです。
もともとレガートで歌うのは得意なベルリン・フィルですが、軽快さも身に着けていて、アバドが凄いのか、ベルリンフィルが凄いのかわかりませんが、完全にイタリアの演奏です。明るいシチリア島をどうしても思い描いてしまいます。この曲が転用なんて考えられませんね。
最後も思い切りアッチェランドして凄い盛り上がりです。
この曲は、『イタリアン・ナイト』でも素晴らしかったし、『ヨーロッパコンサート2002』のアンコールでは本当に感動的な演奏でした。
- 名盤
- ライヴ
- 爆演
おすすめ度:
ヨーロッパコンサート2002 (アンコールで「シチリア島の夕べの祈り」序曲)
ヨーロッパコンサート2002 ドヴォルザーク《新世界より》他 [DVD]
レビュー数:6個
- 名盤
- ライヴ
- 爆演
おすすめ度:
指揮:クラウディオ・アバド、ベルリン・フィルハーモニー ヴァルドビューネ1996
ムーティ=ミラノ・スカラ座フィル
★イタリア最高峰のオケのカンタービレと激しいアッチェランド!
- 名盤
- 定番
おすすめ度:
指揮:ムーティ、ミラノ・スカラ座フィルハーモニー
ヴェルディ:序曲・前奏曲集
レビュー数:1個
残り1点
Verdi: Overtures & Preludes
レビュー数:1個
ムーティはいまやオペラ指揮者の巨匠です。
ミラノ・スカラ座はイタリアのオケですが、北イタリアです。でも、イタリア的なカンタービレはもともと持っています。少し厚みがあるのがミラノ・スカラ座の演奏ですね。
そこにこの曲では、ムーティがかなりスリリングに追い込みをかけています。かなり凄い演奏です。これも本場の演奏として聴くべき価値のある名演です。
ただテンポが速いとベルリン・フィルのほうがやはりテクニックがあるようです。アバド=ベルリン・フィルがこの曲に関しては、さらに感動的なので、その次にしようかと思います。
カラヤン=ベルリン・フィル
★ドイツの指揮者、オケとは思えないイタリアン・カンタービレ!
カラヤン=ベルリン・フィルはイタリアとは関係のない組み合わせですが、カラヤンはたまにオペラも振りますし、ロマン派的な表現力は凄いものがあります。
イタリア人ではないのに、カラヤンはさすがヴェルディのもっともヴェルディらしい作品をスリリングに演奏していて迫力があります。ベルリン・フィルも重厚さはありますが、イタリア的なカンタービレを演奏しています。
ヴァイオリンのカンタービレも非常に美しいですし、カラヤン独特のレガートが良い意味で効果的です。並みのイタリア人演奏家では敵わない名演だと思います。
シャイー=ミラノ・スカラ座管弦楽団
★良い演奏だが、ライバルのレヴェルは高い。でも僅差!
おすすめ度:
指揮:シャイー、ミラノ・スカラ座管弦楽団
ヴィヴァ・ヴェルディ~序曲・前奏曲集
5.0/5.0レビュー数:1個
Viva Verdi – Overtures & Preludes
4.4/5.0レビュー数:15個
シャイーはアバドの下で修業をしていました。そのせいもあってか、どうしても演奏スタイルがアバドに似ています。テンポ取りやカンタービレの掛け方など、似ている所は多いですね。
しかし、シャイーも巨匠と言われる年齢になってきて、独自の個性のある演奏をするようになってきたと思います。ただ、ロッシーニはアバドに似ていたり、逆に変な個性を発揮したりしていました。
ヴェルディの『シチリア島の夕べの祈り』序曲も、大枠アバドににています。ただオケがミラノ・スカラ座なので、結果としては大きな違いです。もっともこの曲はアバドの演奏が良すぎるので、ムーティと比べてみたいと思います。
うーん、ムーティの筋肉質なところはシャイーにはあまり無いような気がします。ミラノ・スカラ座の弦の厚みなどもムーティのほうが特徴があったような。
シャイーもいい演奏で安定しているので、いい勝負ですが、最後は個人的好みでムーティに軍配を上げようと思います。
シノポリ=ウィーン・フィル
★この曲に関しては、ちょっと気合いが入り過ぎたか?
イタリア的な演奏が多かったですが、シノポリもイタリア人です。そしてオペラ指揮者として多くの名演を残しています。
この曲の場合、シノポリは最初、速いテンポで追い込みをかけていますが、ちょっと速すぎだったようで、ウィーン・フィルの自主規制みたいな感じでテンポダウンしていたりします。
欠かせないカンタービレはやはりウィーンフィルもとても上手いです。この曲に関してはテンポがちょっと不安定ですね。『運命の力』はあんなに良かったのに、と思います。
最後の追い込みは、ウィーンフィルもシノポリのテンポについていきますが、やっぱり速すぎだと思います。難しいですね。
ルイージ=フィルハーモニア・チューリッヒ
★ルイージは良いが、オケのカンタービレが今一つ
イタリア人ファビオ・ルイージが指揮する演奏です。
この曲はカンタービレから始まるので、これがちゃんと演奏できるなら、ヴェルディが得意なコンビといってもいいと思います。
指揮者のルイージはイタリア風にスリリングなテンポ設定をしていますが、オケのほうはあまりイタリア風ではないですね。一部上手くいっているところもありますけど。オケのほうは丁寧に演奏している感じです。
楽譜
ヴェルディの『シチリア島の夕べの祈り』の楽譜・スコアを紹介します。