パブロ・デ・サラサーテ (Pablo Martin Sarasate,1844-1908)作曲の『ツィゴイネルワイゼン』 Op.20 (Zigeunerweisen)について、解説とおすすめの名盤レビューをしていきます。
このページでは、ツィゴイネルワイゼンを中心に、ヴァイオリンの名曲集などをレビューしていきます。ヴィルトゥオーゾと呼ばれるヴァイオリニストはアンコール・ピースなどで、数えきれない位、演奏してきたはずの曲です。すごくレヴェルの高いCDが並ぶと思います。
解説
サラサーテのツィゴイネルワイゼンについて解説します。
ツィゴイネルワイゼンは1878年に作曲されました。ツィゴイネルワイゼンの意味は「ロマ(ジプシー)の旋律」という意味です。
全曲で8分の曲ですが、全体は協奏曲のように3つの部分で構成されています。実際にロマの旋律が使われているほか、当時の大衆音楽の旋律も使用されています。
・モデラート~レント
・ウン・ポコ・ピウ・レント
ハンガリー民謡をそのまま使っています。「ジプシーの月」というタイトルでポピュラーでもヒットしました。
・アレグロ・モルト・ヴィヴァーチェ
おすすめの名盤レビュー
それでは、サラサーテ作曲ツィゴイネルワイゼンの名盤をレビューしていきましょう。
アンネ=ゾフィー・ムター
ムターは最近演奏スタイルを変えて、円熟してきていますが、このCDの演奏は昔の情熱的で力強い油絵のような演奏です。シャープで力強い演奏で、最初のフレーズで圧倒されて引き込まれてしまいます。ミュートを付けると高級なオリーブオイルのような滑らかな響きに変わります。
レヴァイン=ウィーン・フィルはオペラのような濃厚な表現で、サポートしています。録音も良くムターのヴァイオリンの音色をしっかり捉えています。アレグロに入ると、かなり速いテンポで正確な超絶技巧で、凄いテクニックです。
諏訪内晶子はイヴァン・フィッシャーとブダペスト祝祭管弦楽団の伴奏で、ハンガリーの首都ブダペストで録音しました。録音会場が良く透明感があり響きも良いです。
最初イヴァン・フィッシャーの伴奏はモダンでテンポが速めです。諏訪内晶子は自然に入ってきます。レントになってからも繊細な表現で、超絶技巧は完璧に弾いていますが、目立たせてはいないです。レントは小さめの音量でしなやかに情緒的に歌っています。イヴァン・フィッシャーがスタイリッシュな伴奏を付けていて、諏訪内晶子の音楽づくりにぴったりです。アレグロは速いテンポでスリリングです。凄いテクニックが聴けます。
1999年の録音ですが、段々と表現力に磨きを掛ける諏訪内晶子の音楽が分かりますね。
まだ若い時のギル・シャハムの演奏です。ヴィエニャフスキのヴァイオリン協奏曲とのカップリングです。ギル・シャハムが19歳の時の録音です。伴奏はフォスター=ロンドン交響楽団です。力強く情熱的なヴァイオリンで、スタンダードといってもいい演奏スタイルです。
シャハムのヴァイオリンの音色はとても艶やかで、ポルタメントは控えめです。ただ、レントの部分は少しストレートすぎな所もあります。こういうストレートさは10代にしか出来ない演奏というものでしょうね。テクニック的には完璧です。アレグロは超高速です。凄い速さですが、余裕をもって弾きこなしています。こんなスリリングな演奏は滅多にないです。そのまま圧倒的な演奏で弾き切ります。
三浦文彰
三浦文彰は2009年ドイツ・ハノーファー国際ヴァイオリン・コンクールに史上最年少で優勝した新進気鋭のヴァイオリニストです。三浦文彰の2016年のコンサートをライヴ収録したCDです。伴奏はピアノで田村響が務めています。
まだ若いヴァイオリニストです。昔のヴィルトゥオーゾのようにポルタメントも迷いなく使い、力強さのある音色でガンガン弾いていきます。ジャケットを見て想像していた演奏より、ずっと上手く安定したテクニックで、表現にも迷いがありません。ライヴとありますけど、まあ修正はしてあるのかも知れませんが、セッション録音でないのにこれだけ余裕の演奏が出来るのは凄いですね。
カップリングも楽しめる曲ばかりで、ドヴォルザーク『4つのロマンティックな小品』などいいですね。
グリュミオーはピアノ伴奏ですが、ツィゴイネルワイゼンの録音を残しています。ピアノ伴奏だと迫力が少ないですが、それだけ良くヴァイオリンが聴こえます。昔の1962年の録音ですが、音質は良いです。
今でも十分通用する超絶技巧ももちろんですが、まさにハンガリーの音楽らしい味のある演奏で、少し陰のある艶やかな音色やポルタメントのつけ方など、昔のヴィルトゥオーゾのヴァイオリニストというオーラがありますね。これだけヴィルトゥオーゾ風の演奏をしても嫌みがなく情緒があるのが、グリュミオーの良い所です。
レコードで聴くととても合いそうな演奏です。レントは沢山の表現のヴォキャブラリーがあって、なるほど、凄いなと感心します。アレグロに入るとテンポアップして超絶技巧を堪能できますが、単にテンポが速いだけではなく、ハンガリー風の演奏で味があります。
今のヴァイオリニストはテクニックはもっと優れているかも知れませんが、表現という点で楽譜通り弾く風潮なので、ポルタメントも最小限ですし、表現のヴォキャブラリーを増やすのが大変ですね。
ハイフェッツはヴィルトゥーゾ系ヴァイオリニストの代表です。『ツィゴイネルワイゼン』のような曲は、テクニック面はもちろん、表現もいかにもヴィルトゥーゾという感じの華麗な演奏です。こういう演奏は好き嫌いが分かれそうですが、多分、ロマン派のパガニーニ、サラサーテなどのヴァイオリニストはこんな感じで、さらにアドリブを入れたりしてロマンティックに演奏していたんじゃないかと思います。
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楽譜・スコア
サラサーテ作曲のツィゴイネルワイゼンの楽譜・スコアを挙げていきます。
ミニチュア・スコア
ヴァイオリン、ピアノ伴奏
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