ポール・デュカス (Paul Dukas,1865-1935)作曲の交響曲 ハ長調 (Symphony C-dur)について、解説とおすすめの名盤レビューをしていきます。
解説
デュカスの交響曲ハ長調について解説します。
デュカスと言えば、交響詩『魔法使いの弟子』のような名作だけれど、親しみやすい印象が強いかも知れません。魔法使いの弟子も良く聴くと名曲ですけれど。クラシック好きで交響曲ハ長調を聴いたことが無ければ、聴くと衝撃を受けると思います。それだけ完成度の高い傑作です。構成や主題はシンプルですが、それだけに一音一音にこだわって作曲されている様に思います。もしかすると少し難解さがあるのかも知れませんけれど、フランスの作曲家の交響曲の中で一二を争う名作と言えます。この曲を聴くとデュカスへの認識が変わるかも知れませんよ。
作曲の経緯
1895年に作曲に着手し、1896年に完成しました。デュカスはまだ30歳ですが、ベートーヴェンが『運命』を書いたのが30代後半なので、やはりまだ若いと言えそうです。
初演は1897年1月3日、パリ・オペラ座にてポール・ヴィダルの指揮により行われました。この時は好意的な評価は得られなかったようです。しかし、1902年のコンセール・ラムルーによる再演で高い評価を得ることができ、継続的に演奏されるようになりました。もっとも今でも演奏機会は特別に多いとは言えませんが、日本ではジャン・フルネが得意としていたため、東京都交響楽団などが演奏しています。
曲の構成
フランスの交響曲では一般的な3楽章形式となっています。
フランスの作曲家としては、古典的な作曲技法で、シンプルなモチーフを使っています。デュカスはベートーヴェンに敬意をもっており、シンプルかつ堅固な構成を持っています。もちろんデュカスなので、オーケストレーションに優れ、随所に淡い色彩感が聴かれますし、和声も近代的です。それにしても30歳とは思えない充実した交響曲で、デュカスの才能には驚かされます。
フルート×3(ピッコロ1持替), オーボエ×2, クラリネット×2, ファゴット×2
ホルン×4, トランペット×2, ピッコロ・トランペット, トロンボーン×3, チューバ
ティンパニ
弦五部
おすすめの名盤レビュー
それでは、デュカス作曲交響曲ハ長調の名盤をレビューしていきましょう。
フルネ=オランダ放送フィルハーモニー
ジャン・フルネとオランダ放送フィルの録音です。音質も良く、適度に残響があり、オランダ放送フィルから深みと色彩感のある響きを引き出しています。この組み合わせは名演が多いですが、その中でも特別な演奏と思います。
第1楽章から味わいのある音楽づくりで、単にフランス音楽としてではなく、デュカスの名作の凄さを引き出しています。オランダ放送フィルからこれだけスケールの大きな格調の高い響きを引き出せるのはフルネだけ、と思います。寡作なデュカスだけあって、一つ一つの音の重みが違います。デュカスの他の作品と違って、色彩感よりもシャープさがあり、第2主題は味わいがありますが、同時に格調があります。これを聴くとデュカスの交響曲がフランク程の名声を得ていないのが不思議な位です。
第2楽章は清涼感のある響きで、奥の深さがあります。響きは色彩的であり、かつ高潔です。言葉で表現するのは難しいですが、ワインで言えば赤ワインより白ワインですね。曲が進むにつれ、控えめながら徐々に深みが増していきます。感動的な音楽を書く作曲家は沢山いますが、ここまで厳しさがある曲もなかなかありません。外見はさわやかですが、凄い深みです。
第3楽章は軽快で親しみやすさのある音楽ですが、この演奏は本当に格調が高く、デュカスの交響曲の良さを真っすぐ射貫いていきます。アンサンブルがとても緻密なのも良いですね。テンポが遅くなるとやはり格調の高さが凄いです。全曲で40分なので、それなりに長い曲ですが、この演奏で聴くと40分間デュカスの凄さを堪能できます。
この演奏は、デュカスの交響曲を聴きたい人には必ず聴いてほしいレヴェルが高く、曲の本質にストレートに迫ったまさに名盤です。
タンゴー=アイルランド国立交響楽団
タンゴーとアイルランド国立交響楽団です。初めて聞いた組み合わせ、という人も居るかもしれませんが、近年、フランス音楽の素晴らしい作品を掘り起こして高音質で録音しています。アイルランドはイギリスの東側の島国ですが、マイクロソフトの拠点があったり、素晴らしい演奏家の多い地域です。アイルランド国立交響楽団は透明感に溢れる響きで、デュカスのオーケストレーションを楽しませてくれます。
第1楽章はフルネが深みのある音楽を目指しているのに対し、中庸のアプローチで、テンポ設定にきちんと従って、デュカスの楽譜をしっかり音化しています。形式感のしっかりした楽章は、充実した聴きごたえです。
第2楽章などは、もう少しまろやかさや音の混ざりがあってもいいと思います。ただ、譜面をしっかり演奏しているディスクは少ないので、希少価値がありますね。
第3楽章は力強くも透明感があり、美しい音色のレヴェルの高い金管が楽しめます。フルネの名盤とは違う方向からアプローチした名盤といえます。
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楽譜・スコア
デュカス作曲の交響曲ハ長調の楽譜・スコアを挙げていきます。
ミニチュア・スコアは無いようです。