自分の所持する盤が91年リリースの国内盤(POCG-1083)なので、同じ91年盤のImport盤でレビューしたい
拘るのは、盤によって音色が異なるからだ
アマゾンの仕様によって、同じ演奏の異なるリリース盤に、同時掲載される事もあるが、ご了承願いたい
この『展覧会の絵』は、ムソルグスキーの原作ピアノ版にしても、ラヴェル編曲の管弦楽版にしても、共に大傑作であり、一時期に集中して色々な演奏で聴き込んでしまう程の魅力があると思う
自分も中学の時に、富田勲の同曲のアレンジに甚く感動して以来、ことあるごとに違った演奏を求めている
その中でも、普遍的な意味での自分の中の定番として、ピアノ版ではアシュケナージ(FOOL-23109)、管弦楽版ではカラヤンの65〜66年録音盤(POCG-2079)を一応の判断基準として来た
その後、色々な演奏を聴いて来て、ほぼ定型化したこの演奏に新しい息吹を吹き込んだものとして、アナトール・ウゴルスキのピアノ盤(POCG-1610)や、インバルの管弦楽バージョン(33CO-1799)が挙げられるのだが、このシノーポリ盤も、初めてこの曲に接する時のように新鮮で、自分の中でイメージを再構築させてもらった盤である
冒頭のプロムナードのモティーフの提示部から、シノーポリでは多少刺激的に来るのかと思いきや、スムーズで柔らかい表現で意表を突かれた
全体にテンポを落とし、1つ1つのフレーズの精妙な楽器音と、音の『間』を大切にする事により、標題の具体的な描写が成されている。。。
対旋律を際立たせて新鮮な音響効果を生み出す工夫も功を奏し、部分的な色彩感と全体の構築性のバランスが非常に良いのである
これ見よがしに鳴らすのではなく、大小、強弱を大切にした振幅の大きさで聴かせて、非常にスケールが大きい
全体に響きが自然で、奥行きのある音場感が心地よく、特にこの曲では音そのものによる効果を狙う指揮者が多い中、ブラスを始めとする楽器音を鳴らし過ぎない、『音』ではなく『音楽』を意識しており、それを全体に透徹させている
それでいて流石に押さえる所は押さえて、標題音楽としてのニュアンスの豊かさがあるので、ライナーノートを片手に(Import盤では他のメディアから参照の事)各パートの意味する所を確かめながら聴く楽しさが、蘇って来るのである
特に『キエフの大門』で顕著なのであるが、このスケールの大きなフィナーレを始めからがなり立てず、静かにクレッシェンドしていく様を絶妙にコントロールしながら、壮大なコーダに導いている
実は、この展覧会の絵のコーダ(最終音)は、殊更にドカンと来るものではなく、静かに置くようにふわりと終わるのが特徴で、独特の余韻を残すのがまた良いのだが、それもきちんと再現されている
カップリングの交響詩『はげ山の一夜』『高雅にして感傷的なワルツ』は、曲の並びがちょうど展覧会の絵の原作と編曲者になっており、興味深いのだが、この2曲では逆にシノーポリのイタリア人的な気質が生かされて、非常に表情が豊かで暖かいのである
作曲者の性格と指揮者の情感がシンクロすることにより、アルバム全体で3つの性格がハッキリ分離していて、とても楽しく聴きごたえのある盤になっていると思う
静謐なイメージを持つイラストの、ジャケットも秀逸。。。
ともすれば類型化してしまいがちなこの曲の演奏の、新たな聴き比べの楽しさを提供してくれる推薦盤である
()内は自分の所持する盤。。各盤とも新しいリリースがあると思うので、ご参照の程。。。
ムソルグスキー:組曲《展覧会の絵》、他
仕様 | 価格 | 新品 | 中古品 |
CD, インポート, 1991/4/5
"もう一度試してください。" | インポート |
—
| ¥4,396 | ¥290 |
CD, 1996/4/25
"もう一度試してください。" | 1枚組 |
—
| — | ¥1,259 |
CD, CD, 2018/1/24
"もう一度試してください。" | CD |
—
| — | — |
曲目リスト
1 | 組曲≪展覧会の絵≫ プロムナード |
2 | 組曲≪展覧会の絵≫ I.こびと |
3 | 組曲≪展覧会の絵≫ プロムナード |
4 | 組曲≪展覧会の絵≫ II.古城 |
5 | 組曲≪展覧会の絵≫ プロムナード |
6 | 組曲≪展覧会の絵≫ III.テュイルリーの庭 |
7 | 組曲≪展覧会の絵≫ IV.ビドロ |
8 | 組曲≪展覧会の絵≫ プロムナード |
9 | 組曲≪展覧会の絵≫ V.殻をつけたひなの踊り |
10 | 組曲≪展覧会の絵≫ VI.サミュエル・ゴールデンベルクとシュミュイレ |
11 | 組曲≪展覧会の絵≫ VII.リモージュ(市場) |
12 | 組曲≪展覧会の絵≫ VIII.カタコンブ(ローマ時代の墓) |
13 | 組曲≪展覧会の絵≫ 死者とともに |
14 | 組曲≪展覧会の絵≫ IX.バーバ・ヤーガの小屋 |
15 | 組曲≪展覧会の絵≫ X.キエフの大きな門 |
16 | 交響詩≪はげ山の一夜≫ |
17 | 高雅にして感傷的なワルツ I.Modere |
18 | 高雅にして感傷的なワルツ II.Assez lent |
19 | 高雅にして感傷的なワルツ III.Modere |
20 | 高雅にして感傷的なワルツ IV.Assez anime |
21 | 高雅にして感傷的なワルツ V.Presque lent |
22 | 高雅にして感傷的なワルツ VI.Assez vif |
23 | 高雅にして感傷的なワルツ VII.Moins vif |
24 | 高雅にして感傷的なワルツ VIII.Epilogue. Lent |
商品の説明
メディア掲載レビューほか
ムソルグスキーのピアノ曲をラヴェルが卓越した管弦楽技法を駆使して色彩的な作品に編曲した≪展覧会の絵≫は、現在では原曲以上にポピュラーになっている。聖ヨハネ祭の夜に集う悪魔や妖怪たちの饗宴を描いた≪はげ山の一夜≫と、ラヴェルがシューベルトのワルツを範として書いた≪高雅にして感傷的なワルツ≫をカップリング、シノーポリが名門ニューヨーク・フィルハーモニックから多彩にして華麗な響きを引き出している。 (C)RS
登録情報
- 梱包サイズ : 14.2 x 12.4 x 1 cm; 80 g
- メーカー : ユニバーサル ミュージック
- EAN : 4988031249789
- 時間 : 1 時間 7 分
- レーベル : ユニバーサル ミュージック
- ASIN : B075GWYMT3
- ディスク枚数 : 1
- Amazon 売れ筋ランキング: - 404,712位ミュージック (ミュージックの売れ筋ランキングを見る)
- - 23,259位交響曲・管弦楽曲・協奏曲
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4 星
シノーポリらしい音の多重性を楽しめる演奏
ボレロで名演を残したシノーポリは、あたかもその「姉妹曲」としてこの展覧会の絵を取り上げたのではないかと思わせる。楽器の奥深い表現力の可能性を知ることができるテキスト(ラヴェルの管弦楽編曲の妙)として、シノーポリらしい音の多重性を楽しめ、全体としては重厚な演奏となっている(低弦の威力を強調)。一方、(シノーポリと外見上似ているとも言われた)ムソルグスキーの荒ぶる魂よりも、ここでは音が千変万化するラヴェル・テイストを強く感じる。ただし、テンポは遅め、かつ大きく動かさずを基本方針としているようで、それが本曲のもつスリリングな展開の魅力をいささか減殺しているようにも思う。同じラヴェル・テイストであれば、デュトワ盤 ムソルグスキー:組曲《展覧会の絵》、リムスキー=コルサコフ:《ロシアの復活祭》序曲、他 の方がよりエスプリもユーモアも効いており飽きさせないと感じる。→ Art of Giuseppe Sinopoli も参照
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2016年2月26日に日本でレビュー済み
2021年1月3日に日本でレビュー済み
ボレロで名演を残したシノーポリは、あたかもその「姉妹曲」としてこの展覧会の絵を取り上げたのではないかと思わせる。楽器の奥深い表現力の可能性を知ることができるテキスト(ラヴェルの管弦楽編曲の妙)として、シノーポリらしい音の多重性を楽しめ、全体としては重厚な演奏となっている(低弦の威力を強調)。
一方、(シノーポリと外見上似ているとも言われた)ムソルグスキーの荒ぶる魂よりも、ここでは音が千変万化するラヴェル・テイストを強く感じる。ただし、テンポは遅め、かつ大きく動かさずを基本方針としているようで、それが本曲のもつスリリングな展開の魅力をいささか減殺しているようにも思う。同じラヴェル・テイストであれば、デュトワ盤 ムソルグスキー:組曲《展覧会の絵》、リムスキー=コルサコフ:《ロシアの復活祭》序曲、他 の方がよりエスプリもユーモアも効いており飽きさせないと感じる。
→ Art of Giuseppe Sinopoli も参照
一方、(シノーポリと外見上似ているとも言われた)ムソルグスキーの荒ぶる魂よりも、ここでは音が千変万化するラヴェル・テイストを強く感じる。ただし、テンポは遅め、かつ大きく動かさずを基本方針としているようで、それが本曲のもつスリリングな展開の魅力をいささか減殺しているようにも思う。同じラヴェル・テイストであれば、デュトワ盤 ムソルグスキー:組曲《展覧会の絵》、リムスキー=コルサコフ:《ロシアの復活祭》序曲、他 の方がよりエスプリもユーモアも効いており飽きさせないと感じる。
→ Art of Giuseppe Sinopoli も参照

ボレロで名演を残したシノーポリは、あたかもその「姉妹曲」としてこの展覧会の絵を取り上げたのではないかと思わせる。楽器の奥深い表現力の可能性を知ることができるテキスト(ラヴェルの管弦楽編曲の妙)として、シノーポリらしい音の多重性を楽しめ、全体としては重厚な演奏となっている(低弦の威力を強調)。
一方、(シノーポリと外見上似ているとも言われた)ムソルグスキーの荒ぶる魂よりも、ここでは音が千変万化するラヴェル・テイストを強く感じる。ただし、テンポは遅め、かつ大きく動かさずを基本方針としているようで、それが本曲のもつスリリングな展開の魅力をいささか減殺しているようにも思う。同じラヴェル・テイストであれば、デュトワ盤 [[ASIN:B01FFVTD7O ムソルグスキー:組曲《展覧会の絵》、リムスキー=コルサコフ:《ロシアの復活祭》序曲、他]] の方がよりエスプリもユーモアも効いており飽きさせないと感じる。
→ [[ASIN:B0079J27DS Art of Giuseppe Sinopoli]] も参照
一方、(シノーポリと外見上似ているとも言われた)ムソルグスキーの荒ぶる魂よりも、ここでは音が千変万化するラヴェル・テイストを強く感じる。ただし、テンポは遅め、かつ大きく動かさずを基本方針としているようで、それが本曲のもつスリリングな展開の魅力をいささか減殺しているようにも思う。同じラヴェル・テイストであれば、デュトワ盤 [[ASIN:B01FFVTD7O ムソルグスキー:組曲《展覧会の絵》、リムスキー=コルサコフ:《ロシアの復活祭》序曲、他]] の方がよりエスプリもユーモアも効いており飽きさせないと感じる。
→ [[ASIN:B0079J27DS Art of Giuseppe Sinopoli]] も参照
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他の国からのトップレビュー

St. Germain en Laye
5つ星のうち5.0
A Slower, More Stately and Contemplative "Pictures" - Wonderful!
2018年9月15日にアメリカ合衆国でレビュー済みAmazonで購入
I've always enjoyed this piece, going back to the days when I was in the band in high school and we played "The Great Gate of Kiev". Lately I've been buying different versions, trying to find the one I like best, and I don't think that's going to be possible, as there are so many superb ones. My last acquisition was this one by the New York Philharmonic, conducted by Sinopoli, and I see it's generated a wide variety of strong opinions at both the high and low ends of the spectrum.
I love it. I find the playing impeccable, the interpretation expressive, and the slower tempo allows me to hear and appreciate elements that I can't discern in the faster versions, such as the one by Bernstein. I don't think Sinopoli's slower tempo sacrifices anything; rather it expresses something different. This version clocks in at over 36 minutes, which is about three minutes slower than Reiner's. I was afraid it would drag, but it never does.
The Penguin Guide from 2009 has this to say in part:
"Sinopoli's electrifying New York recording of Mussorgsky's 'Pictures at an Exhibition' again displays the New York Philharmonic as one of the world's great orchestras, performing with an epic virtuosity and panache . . . ."
I include the quote as a counterweight to another reviewer who criticizes the orchestra as being driven by ego and failing to play as a team. I personally wouldn't know how to put myself inside the heads of 75 or so musicians to reach such a conclusion.
Even if you have a number of recordings of "Pictures", I would urge you to add this one to your collection. It is different, and I'm very grateful I bought it.
This review is not at all objective, but reflects my taste and listening experience.
I love it. I find the playing impeccable, the interpretation expressive, and the slower tempo allows me to hear and appreciate elements that I can't discern in the faster versions, such as the one by Bernstein. I don't think Sinopoli's slower tempo sacrifices anything; rather it expresses something different. This version clocks in at over 36 minutes, which is about three minutes slower than Reiner's. I was afraid it would drag, but it never does.
The Penguin Guide from 2009 has this to say in part:
"Sinopoli's electrifying New York recording of Mussorgsky's 'Pictures at an Exhibition' again displays the New York Philharmonic as one of the world's great orchestras, performing with an epic virtuosity and panache . . . ."
I include the quote as a counterweight to another reviewer who criticizes the orchestra as being driven by ego and failing to play as a team. I personally wouldn't know how to put myself inside the heads of 75 or so musicians to reach such a conclusion.
Even if you have a number of recordings of "Pictures", I would urge you to add this one to your collection. It is different, and I'm very grateful I bought it.
This review is not at all objective, but reflects my taste and listening experience.

pianoreview
5つ星のうち4.0
For the sound, yes - the performance, no
2015年12月18日にアメリカ合衆国でレビュー済みAmazonで購入
Not such a great performance - Sinopoli is not Solti or Reiner or one of the conductors to light the stage on fire. However, DG at that time was the recordi label to capture incredible orchestra sound. Thus, if you want something to thrill your ears via your stereo, add this to yoru lirbary.

Indiana Opera Buff
5つ星のうち5.0
LUSCIOUS SOUND--THE BEST OF THE FOUR
2020年10月25日にアメリカ合衆国でレビュー済みAmazonで購入
The first "Pictures" that I purchased was with Eugene Ormandy and the Philadelphia Orchestra. The sound wasn't horrible, but it wasn't good either, so I bought the highly praised recording with Fritz Reiner and the Chicago Symphony. Ouch! The sound is horrible. It made my quality stereo system sound like a transistor radio. So I then purchased the recording with Valery Gergiev and the Wiener Philharmoniker. That is a live recording, and it has the hallmarks of most live recordings. The sound is a bit dry and it has a silvery edge. I will admit that the performance is good, but I could not get passed the sound, so I ordered this DG recording with Sinopoli. The sound! It is warm and luscious. My living room sounds like a great concert hall. On track #7 I was in ecstasy. Yes, he takes the tempi a little slower than most conductors, but that didn't bother me. I am not that enthralled about Ravel's "Valses nobles et sentimentales" so I created a CD for my own use with Windows Media Player combining only "Pictures at an Exhibition", Night on Bald Mountain" and Herbert von Karajan's 1965 recording of Ravel's "Bolero". The volume levels are almost identical, and what a great CD it is!

Music Pen
5つ星のうち5.0
None finer
2014年2月4日にアメリカ合衆国でレビュー済みAmazonで購入
This is a wonderful, gorgeous recording of the Mussorgsky-Ravel. And underlines the loss to the musical world of Sinopoli. He has left us here a recording to treasure, a wonderful memento of a life cut terribly short.