パールマンが26歳の頃の録音。
1970年代のステレオ録音の中には、音の荒いものもあったが、このレコードはそういった荒めの録音のひとつ。
パガニーニのヴァイオリン協奏曲第1番の第1楽章冒頭の一撃から音割れしている。
パールマンの独奏は、パガニーニのヴァイオリン協奏曲の技術的難所を正攻法で攻略した、堂々たる演奏。
語り口は少々ねっとりしているが、その粘り気を声楽家の歌声とダブらせることが出来れば、なかなか楽しめる演奏である。テノール歌手だったり、コロラトゥーラ・ソプラノ歌手だったりと、その歌心の移ろいが非常に面白い。
技術的にも無理のないテンポで演奏しているため、スリルはないけれど完成度が高い。
しかし、サラサーテのような、オペラティックな演技力を必要とする音楽では、技術的な安定さが裏目に出て、いまいち余所余所しい演奏になってしまっている。
ローレンス・フォスターの伴奏は、メリハリはよくついているが、パールマンの独奏とのコミュニケーションがいささか事務的な感じがしないでもない。