シューマンやマーラーなど、なにかと話題に上ったシノーポリだが、正直彼の録音のディスクは 感動できたためしがない。そんな中でただだ2曲だけ、格別に並外れて魅力的な演奏があり、それがたまたま?一枚のディスクに収められていると言った位置づけのCDがコレである。 (私の再生装置に限ってのこととも思えるが)この2曲と、シューマンの第2交響曲(ウィーンpo)の3曲だけは、音色にちょっと不思議な魅力がある(ように感じる)。濁りが無くヴィヴィッドで、(よい意味で)無味無臭。なんとなく未聴者に自慢したくなるような演奏、音質で、個性が強いとは言えないくせに、唯一無比で似ている演奏を思いつかない。
とにかく個人的には、「イタリア」はアバド盤(1967年)に次ぐ演奏である。ただし、「音の風景画家」という側面から鑑賞した場合の魅力はアバド盤に及ばないが、純音楽的に聴くと、アバド盤が「あたりまえ過ぎ」に思え、シノーポリ盤に軍配が挙がる。「未完成」に関して言えば、批評家の宇野氏がクレンペラーの演奏を「情熱の氷付け」と評したが、こと「未完成」に関しては、その言葉がそのままバッチリ当てはまる。幻想性の無い未完成なんて、とても名演とは言えないように思えるが、こういう常識?を超えた名演というものも確かに存在することを証明したような演奏だ。