実はガーディナーの指揮で心底感動できる演奏は今まで無かった…かなり買ったが、ほとんど叩き売ってモーツァルト《レクイエム》だけ持ってます。
私はバーバラ・ボニーが好き…で、彼女が天使ガブリエルを歌うマリナー盤《天地創造》に感動して彼女がハンネを歌う《四季》を捜してたら、まあー…このガーディナー盤だったんですね。ちょっと悩みましたが買ってよかった。
このディスクにおいては、ガーディナーは無理矢理な盛り上げも、セカセカと忙しいことも、うるさい感じも全く無い…つまり、余計なことは一切しておらず終始一貫して誠実で「これ見よがし」な如何にもピリオド演奏的なギミックが無い。彼には珍しく、非常に落ち着いた良い演奏…この曲の牧歌的で素朴な美しさを余す所無く引き出しています。
なので…ソリストも合唱も伸び伸びと歌い上げ、まるで初夏の日差しを浴びながら田植えする早乙女のようなボニーを引き立てている。
こう書くとソプラノアリアが多いのかと勘違いされるかも知れないし、他の録音ではソプラノは目立たない…確かに出番は少ないし、テキストも、それまでの合唱、アリアに相槌を打つような何気ない歌詞なのだが…ボニーは、それら人間たちの日々の語らいを神に伝える天使のように清らかで、それは間違いなく神の賛美と感謝なのです。
バーバラ・ボニーはモーツァルト歌手として不世出のソプラノでしたが、ハイドンは更に素晴らしいし、彼女のストレートな歌い方に合ってます。ハイドン歌曲全集を録音しないまま引退したのが悔やまれます。