「春の祭典」は、1つ1つの楽器の演奏に細かい表情があり、そこが凡百のハルサイとは決定的に違う。モントリオール交響楽団はただ洗練されていて、色彩感があるだけではない、何か非常に多彩な表現力と底力を感じさせる演奏だ。ただし重低音の迫力は少し不足している。
旧盤は高音だけがやたらに目立つ録音だったが、DECCAマジックなのか、その点は改善されて聴きやすくなっている。
ただ、第一部、第二部それぞれの終盤のスピードが、旧盤よりも少し早くなっているような気がしないでもない。旧盤が手元にないので、演奏時間の比較ができないのだが。
N響とのハルサイのリハーサルでは、これらの部分で、デュトワが何度も「急ぐな」と演奏者に注意していた。自分はこれらの箇所は早い演奏の方が好みだけれど。
自分の経験では(他のCDの話しで恐縮だが)、デュトワのドビュッシー「牧神の午後への前奏曲」は明らかにDECCAマジックによって音楽が大きく改善されている。この曲は、旧盤と現行盤で、演奏が全然違う。SHM-CDだから、ルビジウムクロックだからとか、そういうレベルの変化ではなく、明記なしの改変です、これは。まあ、良くなる改変だからいいのだが(本当にいいのか?)。
ストラヴィンスキー「春の祭典」も、DECCAマジックによって、旧盤よりも録音も演奏も、相当改善されているような気がするのだが。まあ悪くなるよりはいいのだが、でもこれってマジックだよな。