ゲルギエフは『悲愴』を三度にわたり録音しており、これは一度めのものである。その後の録音はどうもクセが強く、私はなじめない。二度めはウィーン・フィルを振ってレコード・アカデミー賞を貰ったが、あれそんなにいいかね。『展覧会の絵』やプロコフィエフもそうだが、ゲルギエフって妙なところで賞を貰っている気がする。

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バセム

心よりいず、心なき耳には入らず

2015年10月5日に日本でレビュー済み

ちょっと、小沢とカラヤンのもので、第一楽章の冒頭を聴く。それらしく聞こえるけれども、心は、ない。楽譜でｍｐで入ってくるヴィオラのEが、pppで、知らぬ間に入ってくるやり方、ほかの多くの指揮者もこんなふうにしてるのかもしれないが、強弱記号に異様に細かい指示を書いたチャイコフスキーのこの楽譜を、そんなふうにしていいのだろうか。
いや、楽譜通りでも、心のこもらないものは、だめだろう。
ゲルギエフは、もしかしたら、愛する友人が自殺した経験でもあるのだろうか。
シノポリのマーラーの２番を聴くと、戦死した親友に慟哭するのがきこえるように、この演奏は、滅多に聴けない本気の演奏で、フリッチャイと並んで最高峰だろう。ほかのいろんな演奏のなかに、これらに匹敵するものが、ざらにはあるまいと思う。
チャイコフスキーはこの曲を構想しながら度々泣いたと言っているではないか。
ゲルギエフは、南オセチアの小学校襲撃事件の犠牲者の弔いにこの曲を取り上げたではないか。
楽譜を見ながら、まったく本気になって聴いた。
細かいアゴーギグも、自然に心から発するままに行われ、オーケストラはこの指揮者と一体になっている。
ウィーンフィルの、あまりに綺麗すぎる、さも安全なところで感覚の楽しみを提供してくれる演奏ならば、やれ楽器のバランスがどうの、アンサンブルがどうのとか、指先で通ぶってつまむようなレビューもいいだろうが、こんな演奏にそんなレビューを書くのは、冒涜だと思う。

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アマゾンJP　カスタマー

旧来のロシア・スタイルの「悲愴」

2010年7月4日に日本でレビュー済み

ロシア人指揮者の中でチャイコフスキーを得意とするのは言うまでもなくフェドセーエフであるが、ゲルギエフのチャイコフスキーもなかなか面白い。近年録音されたショスタコーヴィチの交響曲第５番などは、同じ指揮者と楽団の組み合わせとは思えないくらい整然と整えられてしまっていて、良い言葉で言えば「洗練された」演奏、悪く言えば「ロシアスタイルを失ってしまった」演奏である。しかし、このチャイコフスキーは、旧来のロシア・オケの演奏スタイルを踏襲した強烈な印象のある演奏だ。バリバリの金管楽器の強奏などは、金管楽器奏者には聴いていて、この人達はどのくらいの肺活量なのか？と思わせるほど凄い。ただ、何かひとつ足りない気がするのは、チャイコフスキー特有の流麗なメロディを十分に歌わせ切っていないこと。このオケの、強烈なロシア特有の強奏はチャイコフスキーの絶望感を表現するには非常に適していると思うが、この曲は絶望感だけのモチーフで書かれているわけではない。「絶望・不安」と「幸せなときの回想」が繰り返し出現して、その対比を十分に表現する必要がある。しかし、この演奏には「幸せなときの回想」の部分で、繊細さを欠いている。繊細さを欠いているという欠点は、カップリングの「ロメオとジュリエット」にも当てはまる。私の個人的な意見では、このCDの演奏では、チャイコフスキーのデリケートな音楽を堪能することはできない。ロシア旧来の演奏スタイルを楽しみたい方にはお奨めだが、チャイコフスキーのメロディックな「歌」というか「音楽」、「思想的な主張」に浸りたいのであれば、フェドセーエフ指揮チャイコフスキー記念モスクワ放送交響楽団の演奏の方がお勧め。ただし、その一方で、チャイコフスキーが好きな人なら、こういう演奏もある、ロシアのオケによるチャイコフスキーの演奏のひとつとして聴いて損はないという気もしますが・・・。

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ミジュニー

ムランビンスキーの演奏と共に、「悲愴」の感動的演奏。

2015年8月17日に日本でレビュー済み

このCDは、１９９５年７月、フィンランドで録音されたものです。キーロフ管弦楽団と最も充実した関係を築いていた時代のゲルギエフのセッション録音で、話題の真空管（チューブ）アンプを使って録音されたものです。音楽パッケージとしての品質は非常に高いものだと思われます。ストラヴィンスキーの火の鳥、春の祭典やくるみ割り人形等の歴史的名盤となる様なCDが２０００年前後にかけて録音されました。このCDも大変優れた録音に支えられ、ゲルギエフのロシア音楽への深い洞察と愛着が素晴らしい音楽を作り出しました。
ライブ録音のウィーンフィルの演奏が注目されがちですが、繰り返し聞く音楽パッケージとしてのCDの魅力は、こちらの方が上だと思われます。
「悲愴」は、数多くの名演が有り、甲乙をつけるのは難しいものです。そうした中で、この曲の歴史的名盤である同じロシアの演奏家ムランビンスキーの圧倒的な演奏とは、その演奏スタイルは異なります。速めのテンポで終楽章まで一気呵成に演奏するムランビンスキーとは違い、こちらは（ゲルギエフとしては）いま少し客観的な演奏になっています。私には、最近のゲルギエフが咸興的、即興的演奏に傾きすぎる（結果として音楽的感動がその場だけで消えてしまうように感じられ）為、物足りなさを覚えることが多く有ります。しかし、９０年代のゲルギエフの演奏は、内に燃え上がる情熱を上手くコントロールしながら、それでいて熱いものを感じさせる演奏になっているところが素晴らしいのです。特にスケルツォから終楽章に掛けての演奏では、ムランビンスキー以上の説得力を感じます。そして何よりも、素晴らしい録音（ウィーンフィルとの録音より遥に優れています）が、この演奏をより魅力的にしています。

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織工

最近聴いた出色の「悲愴」

2011年11月23日に日本でレビュー済み

ゲルギエフの音楽は、どの曲をとっても「明解」な解釈と「明確」な音づくりのアプローチがあるように思う。

まず、明確な音づくりに関してはこの６番（マリインスキー劇場管弦楽団）がその典型。弱音部は情感をもってゆっくりと奏で、強音部は速度を増してメカニックに疾走する。全体にリズミックで切れ味がよいが、前者ではフレージングをやや長めにとり、後者ではザックリと短く鋭く刻む。

そのコントラストにははじめは驚くが、一般に凡長に繰り返されると逆に興ざめとなる場合もある。しかし、彼の演奏でそれがマンネリ化せず鼻につかないのは、手兵たるこのオーケストラの各パートの使い方が絶妙だからだ。

全体として低弦のぶ厚い音響（実に心地よい響きだ）を強調しつつ金管（音がクリアで巧い）が効果的にこれに被さる。その場合、意外にも金管をやたらと大きく前面に出すのではなく、よく切れるカッターのように亀裂的に用いる。弦楽器と木管楽器のハーモニーも文句なく美しい。そこが真骨頂といえるだろう。

顔が＜濃厚＞系（失礼！）なので、音楽もそうかと言うと、実は別の感想を抱く。明解な頭脳的解釈とでも言うべきか、全体構成がくっきりとしており、リスナーの期待を裏切らない。シャイーなどに共通する感度の良さが身上。そのうえで、音のテクスチャーがよくわかり、局面局面での語りかけてくる音楽のボキャブラリーが豊か。だからリスナーに安心感をあたえ、かつ飽きさせない。

はっきり言えば、原曲が多少退屈で、中だるみがあったとしても、それをカヴァーするようなテクニックをもっている（ロシア管弦楽集などで遺憾なく発揮）。カラヤンがそうであったように。

チャイコフスキーの６番は、彼が自信をもって高く評価しこよなく好きなのだろう。その相乗効果ゆえか、こんなに良い曲だったのかと久しぶりに聴いて心動いた。６番ではジュリーニ以来の驚きである。推薦します。

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田舎爺

満点なのに嬉しくないって、可笑しいけれど。

2015年9月10日に日本でレビュー済み

かなり人気の高い指揮者なので、目に付いたＣＤラックから取り出して聴いてみた。初聴時、巧みな指揮者であり、彼のこのオーケストラも高性能のメカニックを誇れるオーケストラだという印象を受けたのを思い出して。

録音は良い。緻密、精密、寸分隙のないオケバランスで進み、あのアクの強い面構えから想像する音とはつながらない、凡そロシアのオーケストラということを忘れさせる運びである。意識された弱奏部はムラヴィンスキークラスであり、展開部も見事にコントロールされ整然と盛り上げる。ジュリアードカルテットを連想させる所業だと感じた。曲想にもとづくレガート部はさながらカラヤンレガートとも云える。いや、余りに完璧すぎて破天荒なフレーズは探しても見当たらない。これを面白くないと言ったら「お前は耳が悪いぞ！」と言われかねない演奏だ。

でも音楽とは不思議なもので、ミスも乱れもない十全な演奏だから万人に感銘をもたらすかと言えば、そう云うものでも無いようである。
阿鼻叫喚のスケルツォを聴けば恥かしげもなくアドレナリンがドバーーッと飛び出す浅薄な筆者なのだが、これがそうでもないから奇妙なものだ。
原因が透明すぎてコクが無いオケの音色ではないだろうかと自問したが、あながちそれのみと言う訳でもなさそうだ。欠陥だらけのＥ．クライバーの同曲の方が面白く酔えるから不思議なものである。
ウイーンフィルでも出ているようだが、この演奏を聴いて触手を伸ばそうという気になれない。
ゲルギエフファン様には不快なレビューとなりますが、指揮者の腕とかオーケストラの性能とかに間違ってもケチは付けられない演奏であることには違いないと感じた次第であります。

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篁（たかむら）翠（みどり）

まさにジャケットの写真のような「悲愴」

2013年9月12日に日本でレビュー済み

初めて聴いた時、本当に良い意味で笑ってしまいました。
ゲルギエフの息遣いまで聴こえてきそうです。
激しく情熱的なサウンドはもちろん、
静かな情熱的サウンドってこんな音になるになるんだと、圧倒されました。
人それぞれ好みがあるかと思いますが　私はこの「悲愴」、大好きです。

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Carlson Foo

Five Stars

2017年2月25日にアメリカ合衆国でレビュー済み

Amazonで購入

Good sound quality, please take note this is Japanese press SHM-CD.

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チャイコフスキー:交響曲第6番「悲愴」、幻想序曲「ロメオとジュリエット」

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