Beethovenの第5交響曲、そしてBrahmsのヴァイオリン協奏曲と言う名曲2曲を収録したCDである。
Beethovenの第5交響曲ハ短調は、1808年に完成された。同じ年に作曲されたのは第6交響曲「田園」だが、内容も違うし、できあがった水準も違うように感じる。前者が、クラシック音楽ファンでなくとも知っている、あの有名な主題で始まって、徹頭徹尾この主題で創作されている音楽なのに対して、色とりどりの旋律で作られている音楽であることに戸惑いさえ感じてしまう。最終的には聴き手の主観の問題にはなるのだろうけれども………。
Brahmsのヴァイオリン協奏曲ニ長調は、Beethovenの第五から70年後に完成されている。Brahmsも積年の苦悩の対象であった第一交響曲を作り上げ、45歳となってから、まるで呪縛を祓ったかのように次々と傑作を完成していくのだが、この協奏曲もその一環である。Beethovenに比べても、冒頭から漲る緊張感と言い、展開部の堂々たる様子と言い、みごとなできばえではないだろうか。このヴァイオリン協奏曲に匹敵する水準のヴァイオリン協奏曲が幾つあるだろうか、と感じるほどである。
ラトル、チョン、ウィーン・フィルハーモニカ―、力の入った演奏である。