『メタモルフォーゼン』は1980年9月、『死と浄化』は1982年1月、ベルリン、フィルハーモニーでの収録。『メタモルフォーゼン』はリヒャルト・シュトラウス最晩
年の作品で、ナチス第三帝国の崩壊によって荒廃していく祖国ドイツの有様を悲痛なメロディで描いた音詩である。一方『死と浄化』はシュトラウス青年期
の作品であり、若い頃病気がちで死を意識していたシュトラウスの心境が綴られた暗鬱な内容の交響詩である。どちらも明るく華やかな作品とは言えないが、
カラヤンは両曲ともに情感の深い、感動的な演奏で聴く者に迫ってくる。特に『メタモルフォーゼン』は曲の内容が内容だけにカラヤンも意識せざるを得ない
ところがあり、熱気と高揚感に満ちた表現で応じている。シュトラウスもカラヤンもナチスには協力しつつも苦しめられた経験を持っており、それだけに曲想に
共感するところが多いのか、カラヤンには珍しく気合のこもった、魂の叫びとも言うべき仕上がり。一方、『死と浄化』では流麗でありながらソリッドでシャープ
な表現を披露している。音質良好。