バッハの管弦楽組曲は重々しく、ガンガンオーケストラを鳴らすアーティストが多いが、ラ・ストラヴァガンツァ・ケルンは古楽器の集団らしく、楚々として静かに鳴っているのがよい。フラウト・トラヴェルソの有田正弘などオケにうずもれてしまいそうな弱音で、(主旋律が聞こえにくいというのも難点といえなくもないが)バッハの時代にはきっと音楽はがなり立てるものではなく、このように静かに演奏されていたのではないか? と好感を持つ。最初は物足りないが、聞き返すうちに心にしみる演奏。それはiPadに入れて付属の小さなスピーカーから再生するとひじょうによく判る。入力に余裕のある大スピーカーで鳴らすよりも、楽器のディテールが細部まで見事に聞こえてくるので驚いた。
誰だと思ってるんだ、バッハだぞ。管弦楽組曲だぞ! と胸を張らない。第2番ポロネーズなど、初めて襟を正さずに聴けた。大編成のを何枚か持っている方は古楽器の雅な本作をぜひコレクションに加えてほしい。