このディスクには有名な、モーツァルトとウェーバーのクラリネット協奏曲が収められている。
非常に意味深な重みのある演奏だ。
まずモーツァルト。ライスターはクーベリック指揮ベルリン・フィルとも競演しているが、そちらが爽やかで楽しみに満ちた演奏だとすると、この群響との演奏は正反対である。バッハのようなモーツァルト、とでも言おうか。あまりにも厳かで、畏れ多い感じだ。オーソドックスな演奏というよりは異色な演奏と言わざるを得ない。最晩年のモーツァルトの悟りきった独りの境地が顕れた演奏と言うことなのかもしれない。
それに比べると、ウェーバーの協奏曲は遥かに普遍的な演奏だ。この曲もライスターはクーベリック指揮ベルリン・フィルと録音しているが、そちらのほうはいささか明る過ぎて軽い印象を受けるが、こちらは豊田耕児指揮群響の響きとあいまって、非常に深みと味わいのある音楽を聴くことができる。ウェーバーの協奏曲はこの群響とのライスター盤が決定盤、と言っても過言ではないだろう。