『四季』　ヤーコプス＆フライブルク・バロック管、ＲＩＡＳ室内合唱団、Ｍ．ペーターゼン、ギューラ、Ｄ．ヘンシェル（２ＣＤ）

ヤーコプスのハイドン『四季』
ディジパック仕様で再発売！

HMC901829（廃盤）、HMC801829（廃盤）、HMX2901829（廃盤）で発売されていたオラトリオ『四季』のディジパック再発売盤。『秋』の収穫を祝う合唱のたのしげな表情、終曲の３重唱＋３重合唱の壮麗な世界も、ヤーコプス率いるフライブルク・バロック・オーケストラとＲＩＡＳ室内合唱団の面々が見事に歌いあげています。

近代的ハイドン研究の創始者であるカール・フェルディナント・ポールの「ハイドンの全創作の頂点はまさに『天地創造』と『四季』である」という言葉は、現在も研究者のあいだでは当然のことのように認識されています。
　比喩的に分類すると『天地創造』は厳粛なオペラ・セリア、『四季』は生き生きとしたオペラ・ブッファといったところで、実際に、『四季』はハイドンの時代には衣装を着けてオペラハウスで上演されたこともあったといいますから、その楽しさはまさにオラトリオ離れしたものといえるのではないでしょうか。
　しかしながらいわゆるモダン楽器による演奏では、カラヤン[152分]、クラウス[145分]、ドラティ[141分]、ゲンネンヴァイン[141分]、デイヴィス[138分]、ケーゲル[138分]、リリング[137分]、クーベリック[136分]、フリッチャイ[135分]、マリナー[134分]、ショルティ[133分]、ベーム[132分]、レヴゼン[132分]、ボイエルレ、ビーチャム等、多くは荘重なムードを湛えたいかにもオラトリオ的なものとなっており、その意味で作品の真価が現れにくく、もうひとつの傑作『天地創造』の影に隠れやすいポジションにあったことは大方の認めるところでもあります。
　『四季』が、本来の生き生きとした表情を獲得したのは、アーノンクールやクイケン[138分]、ガーディナー[137分]、ノリントン、シュルト=イェンセン、ボルトンら、ピリオド・アプローチ派の演奏によってであって、こうしてこの作品は『天地創造』とは対照的な性格を持つ作品としての受容が可能になったように思います。
　このヤーコプス盤は、もちろん彼らピリオド派の流れを汲むものですが、その大胆さと楽しさはそれまで以上といえ、イキの良さで大人気の“フライブルク・バロック・オーケストラ”と、ラトル＆ＢＰＯとも過激な『四季』を歌った“RIAS室内合唱団”を率いて実に思い切りの良い音楽を聴かせてくれています。
　畑仕事の場面での『驚愕』交響曲のユーモラスな引用から、鉄砲が炸裂する狩の場面、推進力に富むフーガ、賑やかに盛り上がるワイン祭りの場面にいたるまで、どこをとっても退屈さとは無縁の旺盛な活力が感じられ、オーストリアの自然の中で逞しく前向きに生きる農民の姿を通して、ハイドンが神に自然に感謝するさまがダイレクトに伝わってきます。
　ソリストも優れています。要の小作人シモン役には、男っぷりもかっこいいディートリヒ・ヘンシェル。若い農夫のルーカス役には、当代最高の美声テノールと目されるヴェルナー・ギューラ、シモンの娘、ハンネ役には、バロックからルルまで幅広く大活躍のソプラノ、マルリス・ペーターゼンという絶妙なキャスティング。
　大ベストセラーになった『フィガロの結婚』同様、時代考証を演奏の生命力と見事に統合した素晴らしいアルバムです。

【収録情報】
・ハイドン：オラトリオ『四季』

　マルリス・ペーターゼン（S；ハンネ）
　ヴェルナー・ギューラ（T；ルーカス）
　ディートリヒ・ヘンシェル（Br；シモン）
　RIAS室内合唱団
　フライブルク・バロック・オーケストラ
　ルネ・ヤーコプス（指揮）

　録音時期：2003年8月
　録音場所：インスブルック
　録音方式：ステレオ（デジタル）