CD 輸入盤

交響曲第3番ニ短調WAB.103(ノヴァーク校訂1873年第1稿) ティントナー/ロイヤル・スコティッシュ管弦

ブルックナー (1824-1896)

基本情報

ジャンル
:
カタログNo
:
8553454
組み枚数
:
1
レーベル
:
:
International
フォーマット
:
CD

商品説明

ブルックナー交響曲第3番
ティントナー指揮RSNO

1998年8月デジタル録音。1999年10月2日、自宅バルコニー(11階)からの転落事故で惜しくも亡くなったティントナーによるブルックナー交響曲第3番の登場。今回も作曲者の原意を尊重するという、この指揮者ならではのユニークな方針が貫かれ、いろいろな意味で興味深い、“第1稿” が用いられているのが大きなポイントとなっています。
 まず驚かされるのはその悠然としたテンポ感覚で、いくら第1稿が長めとは言え、全曲演奏時間が77分というのは、まさにチェリビダッケも真っ青といったところです。
 もちろん、遅ければ良いというものではないわけで、ここでティントナーが素晴らしいのも、その遅さの中に、音楽のディテールが非常に美しく、しかもはっきりと刻印されているからであり、そのことについては、第1楽章冒頭部分を聴いていただくだけでも十分にご納得いただけるものと思われます。以下、楽章別に簡単にふれておきます。

第1楽章
 第2稿、第3稿に較べて100小節近く長い第1稿の第1楽章には、この曲の渾名《ワーグナー》の由来となるワーグナー作品からの明確な引用が含まれているのが特徴。18分59秒からのワルキューレの眠りの動機が一番目立つもので、この音楽のあとに冒頭部分が再現される箇所にはなんとも言えない魅力があります。
 この楽章でのティントナーの演奏は非常にゆったりとしたもので、冒頭のサウンドが次第に重層的になってゆくあたりなど、第2ヴァイオリン右側という楽器配置の効能もあって、立体的に広がる雄大な山脈を思わせる音楽が、ブルックナー好きをうならせること請け合いです。
 第2主題部もヴァイオリン両翼配置の効果は絶大で、広い空間にそれぞれの音素材が漂うような雰囲気はまさに絶妙。巨大な質量で迫る第1主題部と続く第3主題部のあいだにあって、美しい谷間を形成しているかのようです。
 第3主題部は複合的な役割を担う部分ですが、ティントナーのアプローチはあくまで雄大志向。 疾走感の演出などまったく念頭にないようで、展開部冒頭の沈潜へとスムーズにつながっています。
 その展開部は、第1稿では素材はともかく、ブロック的な様相が強く示されているのが特徴で、スタティックなティントナーのアプローチが、そうした構造の魅力を実によく伝えています。
 第1主題強奏部分でのスケールの大きさなど圧倒されますし、また、前述したワルキューレの引用なども、こうした巨大なブロックの塊の中にあると実に神秘的に響き渡り、素晴らしい効果につながっていると感じられます。

第2楽章
 第1楽章同様、第1稿では、ワーグナーからの引用が削除されずに残っているため、はじめて聴くとけっこう驚かされる部分があります。
 具体的には、15分19秒からの第1主題変奏ブロックに《タンホイザー》序曲の巡礼主題のイメージが投影されているという部分と、コーダ19分14秒からの部分に、第1楽章と同じワルキューレの動機が用いられている部分の2箇所ということになります。
 ティントナーの演奏は、第1楽章同様、ゆったりしたテンポが採られたもので、冒頭、第1主題から荘厳な聖歌さながらの進行が実に魅力的です。そこでの落ち着きはらった表情の美しさは、この第3交響曲が後年の第9交響曲と数多くの素材上の共通点を持つことをよく判らせてくれる説得力に満ちており、あらためて作品の真価を知らしめてくれるのが何よりも嬉しいところです。
 第2稿第3稿との大きな違いでもある構成上の相違点、つまり、ベートーヴェンの第9にならったと思われる並列的な変奏スタイルもブルックナー好きにはたまらないところで、第1主題の美しい変奏が約3分も多く聴けるのはやはり快感です。

第3楽章
 第1稿スケルツォ楽章の大きな特徴である主部主題の構成単位の不規則性は、後の版では規則的なものに改められ、流れが良くなるぶん、野卑なまでの荒々しさという要素が減退していたのはよく知られているところです。
 ティントナーの演奏は、そうした傾向を無用に強調するものではなく、第2ヴァイオリン右側の広い音場を生かした立体的な音響の中に、例のトランペットがすこぶる力強く響き渡るというもので、これでこそトリオののどかなレントラーも一層際立つといえるのではないでしょうか。
 第1楽章と第2楽章の重さがここで一気に気分転換されるわけで、その意味でもティントナーの快活なテンポは大成功です。

第4楽章
第1稿とほかの稿との差異が特に目立つ楽章。ソナタ形式の構造概念に比較的忠実な第1稿は、3つのヴァージョンの中で最も規模が大きく、主題の再現や回想などもきちんとおこなわれ、なおかつ休止が頻繁なために、独特の闘争的な雰囲気が漂うのが特徴。
 未整理な混乱という見方もありますが、ベートーヴェンの第9よろしく、素材回顧を入念におこないながら、古典的な様式セオリーに取り組む姿は、やはり魅力的というべきでしょう。
 ティントナーの演奏も、悠然と構えていた前半2楽章とは打って変わり、旺盛な活力をみなぎらせて圧倒的なコーダへと突き進む姿が、多くのブルックナー・ファンの共感を呼ぶこと請け合いです。
 もちろん、叙情面への配慮もおこたりなく、ピツィカートの伴奏音型と、滑らかに処理された美旋律が立体的に絡み合う第2主題部は、特に第1稿での規模が非常に大きなこともあって聴きごたえがあります。

収録曲   

クラシック曲目

  • Anton Bruckner (1824 - 1896)
    Symphony no 3 in D minor, WAB 103
    演奏者 :

    指揮者 :
    Tintner, Georg
    楽団  :
    Royal Scottish National Orchestra
    • 時代 : Romantic
    • 形式 : Symphony
    • 作曲/編集場所 : , Vienna, Austria
    • 言語 :
    • 時間 : :
    • 録音場所 : , [Studio]

総合評価

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4.5

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録音、演奏ともに薄いという感じである。強...

投稿日:2022/08/17 (水)

録音、演奏ともに薄いという感じである。強いて聴かなくてもよいと思う。ベーム・ウィーンなどのほうが数等素晴らしい。

robin さん | 兵庫県 | 不明

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第1稿演奏の決定盤でしょう。録音も美しい...

投稿日:2014/02/12 (水)

第1稿演奏の決定盤でしょう。録音も美しいです。

カズニン さん | 東京都 | 不明

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ブルックナーの交響曲の初期稿による演奏が...

投稿日:2012/01/12 (木)

ブルックナーの交響曲の初期稿による演奏が流行になっている昨今だが、この演奏は非常に優れた出来映えである。 複数のスコアが残されたブルックナーの交響曲の中で、第3は特に複雑で問題を孕んでいるが、それは、ブルックナーが、ベートーヴェンやブラームスなら未だスケッチ段階であるところを総譜に「仕上げて」しまったことに由来する。作家や学者の中にも、小説や論文をいきなり清書形態で書き始め、それに訂正、追加、削除を施しつつ、ある線まで行ったら、もう一度原稿にして(第2稿)、また同じことを繰り返しながら決定稿に近づけて行く、というやり方をする人がいるが、ブルックナーも同じタイプだったのだろう。だから彼は、作品が「完成」した後も手を加え続けたわけで、弟子たちや周囲の誰彼の助言、初演の失敗、演奏拒否等がなくても改訂を繰り返したのではないか。 ティントナーの演奏は、CDを手に取った時、第1楽章だけで30分を要すると記されていてびっくりした。しかし、聴いてみると、ゆったりしたテンポで、後に削除されることになるいろいろなモチーフを丹念に辿りつつ進んで行くが、全く冗長にならない。拡張されたソナタ形式の構造も明瞭に感知できる。テンポ感が実に優れていて、あちこちに寄り道しても、本来のルートを決して外さないから、聴き手を惑わすことがないのだろう。大変な実力者である。仮にティントナーが19世紀後半にタイムスリップして、ブルックナーの交響曲の初演を担当していたら、「形式の欠如」などという批判は招かなかったのではないかと思うくらいだ。 ヨーロッパに留学し、現地での演奏活動も経験した知人が、「CD録音の機会がなくて、日本では全く無名でも、向こうには実力のある演奏家が大勢いる」と言っていたが、ティントナーはその最右翼だったわけだ。メジャー・レーベルに見過ごされていたのは彼の不運だったかもしれないが、仮にメジャー・レーベルに録音するチャンスを与えられても、ブルックナー交響曲全集は無理だったろう。だとすると、「不運にも」マイナー・レーベルにしか録音出来なかったことが、我々にとっては大変な幸運をもたらしてくれたことになるわけで、残された遺産が今後も聴き継がれていくことを願ってやまない。

Erdinger さん | 神奈川県 | 不明

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人物・団体紹介

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ブルックナー (1824-1896)

1824年:オーストリアのアンスフェルデンでヨーゼフ・アントン・ブルックナー誕生。 1845年:聖フローリアン修道院の助教師に就任。 1856年:リンツ聖堂及び教区教会のオルガン奏者に就任。 1866年:交響曲第1番完成。 1868年:音楽大学の教授に就任。 1869年:交響曲第0番完成。 1872年:交響曲第2番完成。 1873年

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