1960年代後半期に独グラモフォンで録音されたマーラーチクルスの一枚である。LP時代のクリムトの作品をあしらったジャケットをそのままにしているのが嬉しい。何せ、クリムトはあの時代のウイーンに生き、マーラーがウイーンを去る時「時は去った。」と嘆いたくらいの親友というよりも同志であった。
同時期のCBS録音のバーンスタイン盤と並ぶ、マーラーブームの先駆けとなった記念すべきものであるが、クーベリックは、同郷のよしみからか、作曲者への温かな想いを全般に漂わせている。のんびりした第2楽章なぞ、懐かしい風景が浮かんできそうである。
総じていえば、「手作りのマーラー」というべきもので、次世代の指揮者によるカッコよさや派手さはないけど、田舎の素朴な工芸品を味わうかのような「復活」である。